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マグニファイ  作者: 浅木胡々
2/9

プロローグ

 オエアース暦3984年12月20日夜、サトアビリアス城――――

「ニーア! ニーア! しっかりしろ! 誰か……誰かいないのか!」

 サトアビリアス城内はいつになく慌ただしかった。城主である王の声が響く。

「……うっ」

「ニーア!」

 ニーア王妃の様子がおかしいのだ。家来達が慌てて飛んできて、早速国中から医者が集められる。

 ……

「ニーア王妃様、ドレンド王様、おめでとうございます。かわいいお姫様ですよ」

 部屋から出てきた看護師はそう言って汗をぬぐった。部屋からは小さな産声が聞こえてくる。国王ドレンドは安堵の息を吐き、その場にへたり込んだ。

「ああ、本当によかった……」


 この日、サトアビリアスに姫が生まれた。姫は古代語で「雪」と言う意味の「サイナリア」と名付けられる。大陸の中でも北に位置するサトアビリアスは一年の半分以上が冬で、サイナリア姫が生まれたこの日も、サトアビリアスには雪が舞っていた。その雪はオエアースで一番美しいとされ、「サイナリア(空より落ちる宝石)」と呼ばれる。

 サイナリア姫は、戦火が絶えぬこの世界で苦悩する王の心を癒してくれた。


 

 一方同じ頃、ユービリアス大陸南の小国、リーゼル――――

「ニラ、よくやった、よくやったぞ!」

 一軒の簡素な農家から産声が響く。ここでもまた、新たな命が生まれたのだった。生まれたのは男の子。リーゼルの貧しい農村、ピールヘイル村は村をあげてこの子の誕生を祝った。村全体が一つの大家族のようで、誰もがこの幸福な出来事を喜んでいる。

「いやあ、めでたい、めでたい」

「ホールスさん、おめでとうございます」

「それで、この子の名は?」

 祝いの言葉の中に名を問う声がかかると、それまで騒いでいた周りは一瞬にして静かになる。農夫ホールスは皆の注目を浴び、わずかに頬を紅くしながら答えた。

「エリオット……だ」

 言い終わると、ホールスはいっそう紅くなった。村人たちからどっと歓声があがる。

「エリオットに万歳! エリオットに万歳!」



 こうして同じ日、同じ時間、違う場所で二つの新しい命が誕生した。二人の赤ん坊は、これから起こることを知るはずもなく、静かに眠る。

 運命は静かに交差した。


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