表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

フェアリーズ

星になった妖精

作者: ももね

 ハイドは夜空にひろがる満開の星々を、ひとり、ながめていた。

 ひとつひとつの星たちがきらきらと輝いている。でもね、輝いていたのは、星だけじゃなかったんだ。ハイドの目元をよくごらん。ひと雫の涙が、まるで星のようにきらきら輝いてるでしょ? 


「ルーシーおばあさんは、星におなりになったのよ。なんて綺麗なんでしょ……」


 あれは、たしか幾年もまえのことだった。 

 そういや、ルーシーおばあさんは、手編みがとてもお上手で、よく孫にあたるハイドには、洋服を作ってあげていたね。

 そして、いま、ハイドが着ている白い絹のワンピースも、ルーシーおばあさんが作ってくれたものなんだ。そしてルーシーおばあさんは、まるでお花のように繊細で、まるでお星さまのように明るかった。そんなルーシーおばあさんが、ハイドも妖精も鼠や虫だってみんな好きだった。

 じゃあなんで、ハイドはルーシーおばあさんのことで泣いてるのだろうっ、て思うでしょ? ルーシーおばあさんは、そうとうなお年寄りの妖精だった。つまり、ながらくこの世を知り尽くし、だれよりも辛いことを乗り越えてきた大先輩ってことさ。だからね、天の妖精が、こう言ったんだ。

「お疲れさま。もう、いいわよ」ってね。そして、連れていってあげたんだ。あの綺麗なお空のさきへ。お空のさきには、辛いことを乗り越えてきて、頑張ったひとにしか、けっして与えられることのないご褒美が与えられるんだ。

 それがなにかって? それは、このぼくにだってわからないさ。ただね、お空へいった妖精たちはみんな星のように輝くんだ。それはそれは美しく……。

 そんでハイドは、星になったルーシーおばあさんのことを思って、星空を眺めながら泣いているんだ。

 いっぽう、ほかの妖精たちは、ルーシーおばあさんのお葬式を終えたあと、みんな忙しかった。ふつうなら、お葬式だもの、つかれてみんな休んでいるんじゃないの? って思うよね。でも、彼らは、とっても忙しかったんだ。

 赤や黄色や緑なんかの、きれいなお花をつんでは、そのつんだ花を、ちっちゃな舞台のまわりに飾るんだ。

 女の子の妖精は、お花ばかりで作りこんだドレスに着替えていた。それはそれは、薔薇の花なんかよりずっときれいに着こなしていたよ。男の子の妖精は、きらきらの宝石でいっぱいの礼服に着替えていた。それはそれは、宝石なんかよりも、ずっと紳士らしく着こなしていたよ。

 そうして黒い模様から、いっきに、はなやかで彩り豊かになっていったんだ。

 何をしようとしているかって? それは、これからお話しよう。


「ハイド! あんね……」


 声が聞こえて、ハイドは涙を腕でぬぐいながら、ふりむいた。

 それは、友だちのエナンだった。


「どうかして?」


「あんね、このお手紙を読んでちょうだいな」


 そう言って、エナンはハイドに四角に折りたたんだお手紙を手渡した。

 そしたら、ハイドは、その場で読みはじめることにしたんだ――(気を紛らわしたかったのかもね)


「ハイドおじょうさんへ。このたび、ルーシーおばあさんにおいて、おくやみ申し上げます。けんど、私どもからお誘い申しあげますわ。いやだったらいいのよ。ただね、こういうときこそ、笑顔がいちばんと私たちは考えていますのよ。もし、気が向いたら、そのときは、原っぱの舞台にきてちょうだいな。きっと、すてきな星空になってよ。あなたを愛する妖精たちより」


 それは読んだとたんのことだった。ハイドは、エナンに抱きついてこう言ったんだ。


「ああ、なんてお優しいのかしら。わたし、行くわ」


 そうして、ふたりして舞台へとうちゃくした。

 みんな綺麗な服をきて待っていた。そんで、みんな笑顔だった。


「さあ! ハイド、楽しいダンスのはじまりだ!」


 ひとりの妖精が、そう言うやいなや、音楽とともに、みんな踊りだしたんだ。

 バイオリンや、ピアノ、フルートなんかの音を奏でる妖精たちも、ちゃんといたからね。

 見てごらんよ、ハイドがさっきまであんな泣いてたのは、嘘のようだ! 愛らしいえくぼを作って笑っているのだから。

 そう、ほんとうに辛いときって言うのは、大事なものやひとを、なくしたときだ。だけども、その辛さや痛みを、支えてくれるものも、また、ひとなんだ。

 それだけ、思いやりが、とても肝心なものだってこと、忘れちゃだめだよ。

 もしも、妖精たちの思いやりがなかったのなら、今のように、ハイドが笑顔になれることも、なかったかもしれないのだからね。

 ああ、感心、感心。妖精はやっぱり感心だ。お友だちが悩んでいたら、みんなが、助けてあげたのですもの。

 これは、ハイドにとって、おおきな救いだったろうね。  

 ああ、よかった、よかった!

 あっ、ほら見てごらんよ。いちばん星がまるで太陽のように輝きだした。ルーシーおばあさんも、これで安心したのだね!


 お し ま い

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ