表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/15

ホラーを書く前に

 ……「ホラーでも書くか。」なんて軽いノリで口にしたものの、ホラーってどうやって書けばいいんだ?


 角朗は悩んでいた。あのとき、「ホラーでも書くか」と呟いただけなら良かったのだが、何人かの知人にホラーを書くと宣言してしまったのだ。みんなとても楽しみにしてくれていたため、今さら「やっぱり書けません」なんて言うわけにもいかない。そこで角朗は、仲の良い小説家の先輩に相談してみることにした。

 早速連絡をとると、すぐに返事が帰ってきた。よくよく考えてみると、角朗はベストセラーを出してから、一度も連絡をとっていなかった。まさか彼女は角朗からの連絡を待っていたのだろうか……?

 それはともかく。

 角朗は昔先輩とよく行っていた喫茶店を待ち合わせ場所とすると、今すぐ会うことに決めた。良いことなのか悪いことなのかはともかく、二人とも暇だった。本当に。


 数分後。

 無事に再会を果たした角朗は、早速本題を切り出した。

「さっき電話でも言ったけど、一寸悩みがあって……、相談に乗って欲しいんだ!」

「一体、どうしたの、かしら?」

 角朗の先輩でもあるその女性――加藤(かとう) 美千子(みちこ)――は優しく角朗に微笑み掛ける。それは、完璧な微笑みと言えるような美しい笑みだった。


「実は、ホラーをかくことにしたんです。でも、僕はホラーなんて書いたこと無い。小説家として経験豊富な先輩なら、ホラーを書くアドバイスが頂けるんじゃないかなぁって」

 美千子は、少し考えるような素振りを見せてから、こう答えた。

「そう、ホラー、を。私だって書いたこと無いのよ。でも、何となくのイメージだけど、身に迫ってくるような怖さを表現すれば良いんじゃない? かしら」

 そして、突然心配しているような表情になって、付け加えた。

「あっ、でも気を付けてね。余り変なことを書くと、ブジョクされたと感じて呪ってくることがあるらしいから。」


 角朗は、成る程!と思った。身に迫ってくるような怖さを表現しろとは、面白そうじゃあないか。あとに付け加えられた言葉は気になったのだが。

「ありがとうございます。とても参考になりました。これで安心して執筆出来そうです」


 角朗は、半分はそう思いながら言った。だが、"呪われるかもしれない"というところには不安を煽られていた。

 しかしどちらにせよホラーのイメージは美千子のヒントで得ることが出来た。美千子への相談は正解だったのではないだろうか。角朗は、そう自分を納得させていた。




 そして、角朗は元気よくホラーを書き始める。

 美千子の忠告を忘れたかのように。


 まさか本当に、自分が呪われてしまうなんて考えもせずに……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ