稼ごう
書いている途中、何度も作品が消える携帯。
その度に絶望。
絶望した!
消える携帯に絶望し(ry
「レイス、このキノコは何Gになるかな?」
「それは毒ダケです。その名の通り、胞子も笠も全てが毒だけで成っている暗殺者ご愛用のキノコですね。そこそこ珍しいので高値で売れますが、まず普通に売ったら捕まります」
「その知識はまさか……」
「キリアのものですがなにか?」
「……はは、物騒だね。まあ、なにかに使えそうだからとっておこうか」
「あ、直に触ると手が腐りますよ」
「危なっ⁉ ……何もないね」
「そうですね」
太陽が真上に位置する頃。
アレクたちはコルタの町から約一キロほどにある、アルスの森に足を踏み入れていた。
目的は、Gになる物を探すこと。
依頼の中には、ある物を高く買い取っていたりするものがあるので、それなら適当にとってきて、金目のものがあればラッキー。という思いで訪れたのだが。
結果は一時間歩き回って毒ダケだけ。
確かに売れるものもあったのだが、どれも十Gやちょっと、パッとしないので無視してきたのだ。
アレクは体力的にではなく、精神的に疲れていた。
最初は空気も美味しいし、鳥の鳴き声も聞こえ、差す木漏れ日は幻想的だと感じていた。
しかし今となっては、変わらぬ景色、葉の腐った臭い、魔物の遠吠えと不快を抱くだけ。
それを見計らったレイスが、「少し休憩を挟んではいかがでしょうか」と提案したので、断る理由もないアレクは近くにあった倒木に腰をおろした。
レイスはその斜め前にいつものように立つ。
「……レイスも座りなよ」
「では、失礼します」
アレクが声をかけて少し横にズレると、レイスはそのスペースにゆっくりと座った。
だが、距離が近い。
それはもう、女の子特有のいい香りが髪から漂ってくるほど、レイスとの距離は近かった。
その香りに少し自分の鼓動が早くなるのを感じつつも、アレクはあくまで自然に話しかける。
「それにしても、本当に何もないね」
「はい。魔物を狩って魔石を回収していったとしても、大したGにはならないでしょう」
魔石とは、生物なら必ず身体にある言わば核だ。
壊されればその生き物は死に、人間には心臓と重なるような場所にある。
大きさも色もそれぞれだが、総じて魔力がこもっており、魔石によっては光を発したり水を出したりと、用途は様々で使える。
この特性は生前の生物によって変わる。
だが、ここらの魔物は弱いので、魔石も小さく魔力も少ない。
因みに、アレクにも魔石はあるが魔力がない。合掌。
「ん〜、ここに来たのが間違いだったかな?」
自嘲気味に言う。
「いえ、たまたま運悪く、先に来た者がめぼしい物を全部とっていってしまったのでしょう」
と、すかさずフォローを入れるレイス。
……こんなことじゃダメだよな。
レイスのおかげで気持ちが軽くなったアレクは、ゆっくりと腰を上げた。
まだ太陽は高い。
日が沈むまでには稼げるだろう。
「よし、最低でも八百Gは稼ぐぞ!」
「はい、わたくしも全力で支援させていただきます」
レイスもいつの間にか、定位置に戻っていた。