魔道書
色々設定などはありますが、順を追って書いていきたいと思います。
ほら、一気にだと読みづらいと(言い訳
それは、店というより露店だ。
道のわきに紫色の布を敷いてその上に商品を並べ、ほかの店と同じく客を呼びかけている。
露店といってもだいぶ本格的で、様々なものが売っていた。
と、一番はじの方に粗末に並べられていた魔道書に、アレクの目が止まった。
「……アレかな?」
アレクが少し口角を釣り上げ、嬉しそうに呟くと、露店の主人がアレクを客と認めて声をかけてきた。
「いらっしゃい兄ちゃん。何か気に入ったものはあったかい?」
胡座をかきながら話しやすそうに笑う主人は、四十代ほどの角刈りが特徴的な感じのいいおじさんだ。
アレクも気を楽にし、魔道書を指さして尋ねる。
レイスは定位置の、アレクの右斜め後ろに収まった。
「その魔道書はいくらですか?」
「おっ、兄ちゃんも物好きだな。これは火系魔法の応用で偶然できた、珍しいがしょうもない魔法が載っているものでね。八百Gだ」
「八百G⁉」
アレクがその破格に驚きの声をあげる。
「え、本当に八百Gですか⁉」
再度確認するが、おじさんは笑って肯定で返すばかり。
すると、おじさんはその魔道書を手に取り、アレクの前に差し出す。
「ためしに読んでみるかい?」
「是非!」
アレクはそのまま突っ込む勢いで魔道書を受け取り、そのぶ厚い本のページをハラハラしながらめくった。
「……ハァハァ」
「アレク様、けっこう危ない人になっています」
レイスの声は、アレクの耳に届かなかった。
なぜならば、アレクの全神経が魔道書を読むことに集中しているからだ。
八百Gと聞いて、中身が薄いのかと予想したがそんなことはなく。
内容もしっかりしており、魔方陣の組み方や呪文はもちろん、その魔法が発動した過程、秘話などがびっしりと書かれている。
八百Gなんて信じられないほど良い魔道書だ。
ゴクリ……生唾を飲み込む。
「この魔道書……売れていないんですか?」
「ああ、全然。ほかの商品なら売れてるんだが、こいつには見向きもしねぇよ」
おじさんは頭を掻きながら豪快に笑う。
欲しい。これが欲しい。とても欲しい。喉から手が出るほど欲しい。
「……これ、予約できますか?」
すると、無意識にそう口走っていた。
いや、いくらなんでも無理があるだろう。
おじさんにとっては、こんな少年の頼みを受けるメリットはない。
慌ててアレクは取り消そうとするが、おじさんはニヤリと、笑って、
「ははは! いいぜ、何日でも待ってやるよ。だから絶対に買いにこいよ!」
「……あ、ありがとうございます!」
アレクは頭を下げて礼をし、魔道書を返す。
「今日中には戻りますので、その時はよろしくお願いします!」
「おう、そんときは別の商品も見て行ってくれよ!」
「はい、たくさん稼いできます!」
もう一度頭を下げ、その場をあとにした。
「……さてレイス、稼ごうか」
「はい、嬉しそうですね、アレク様。しかし、商売交渉の観点からみれば、まんまと思う壺にハマったともいえーー」
「いいんだレイス。とりあえず3000Gは稼ぐつもりでいくよ」
「かしこまりました、アレク様。引き締まった顔も、男らしくて素敵です」
ただいま前の十時。
今日もアレク様の一日も、楽しくなりそうですね。
活力に満ちたアレクの顔を見て、レイスはそう思うのであった。