万引き犯の人を取り押さえるのを手伝った想い出
この間、街を歩いていたら、コンビニ店員の人(名札を見たら副店長って書いてありました)と万引き犯の人(五十歳前後のおじさんでした)が争っていました。
僕が「どうしたのですか」と訊ねたところ、コンビニ店員の人は「泥棒、泥棒!」と言ったので、僕は「そうか」と思い、万引き犯の人を取り押さえるのを手伝いました。辺りには人がたくさんいましたが、みんなチラ見するだけで何もしないので、駆けつけたのは僕が一番でした。なので、「俺はこいつらよりも上だ!」みたいな感じで優越感がすごかったです。
と、コンビニ店員の人と万引き犯の人が一緒に地面に倒れました。なので、僕は万引き犯の人の背中に乗って右腕を極めました。理想としては刑事ドラマ等でよく見る、腕をねじるやつをやりたかったのですが、ドラマのようには上手くいかないのでちょっとがっかりでした。でも、取り押さえるのには成功したので結果オーライです。
万引き犯の人には人生がかかっていますので、それはもうすごい力で抵抗していましたが、僕は頑張って押さえました。
楽しかったです。「俺が押さえつけることによって、こいつの人生は終わるんだ!」みたいな感じの愉悦感があり、心の底から歓喜と笑いが込み上げてきましたが、僕はなんとか笑わないように気をつけました。
もう無理だろう、という状況になっても万引き犯の人は往生際が悪く、「もう逃げない、もう逃げないから、とりあえず立たせてくれ!」みたいなことをすごい言ってました。
それに対してコンビニ店員の人は「そんなわけねえだろうが、ふざけんじゃねえぞ、こらぁ!」みたいに本気でキレてて、かっこよかったです。
そんな感じで、万引き犯の人やコンビニ店員の人はとてもすごい必死でしたが、僕は人生がかかっていないのでそこまで必死にはなれず、なんだかちょっと気まずかったです。
そうこうしているうちに、コンビニの別の店員の人(名札を見たら店長って書いてありました)が駆けつけてきて、「警察呼んだ、警察呼んだから」って言いました。この人はなんだか“仏”みたいな、すごいいい笑顔をしていたので、駆けつけてきたときの安心感が半端なかったです。僕は「ああ、このコンビニ今度行こう」と思いました。
やがて警察の人がきたので僕は何も言わずにそっと立ち去りました。ここだけの話ですが、僕はあまり良い人間ではなく、どちらかというと悪人寄りなので警察が嫌いなのです。
そうしたら、笑いながら写メを撮ったり、電話で友人とかに何かを報告している人とかがたくさんいて、とてもとても気持ち悪かったです。気持ち悪すぎて胃が痛くなりました。
すごいですよ、ああいう状況に置かれたときの人間って。すごいチラ見するんですよ。何回も何回も。それでいて何故かガン見はしないんです。「お前は鳥ですか?」っていうくらいチラ見するんです。「ヘビメタですか?」っていうくらいの勢いで首を振るんです。すごい気持ち悪い動きですよあれは。そのまま首が抜けて死ねばいいのに。死んでください。
ああいう状況のときに何もできない人間というのは、ある意味、“お役立ち度”が僕以下っていうことですよ。それで、僕はクズなんですよ。まごうかたなきクズです。最底辺です。
だから、クズ以下とかそんなん生きてる価値ねえから!!! お前ら全員死ね、バーカ!!!!
おしまい