お前の“価値”を選べ
目が覚めた時。
右腕が、 なかった。
「――は?」
少年は床へ倒れ込んだ。
冷たい金属床。
白い部屋。
病院みたいな匂い。
だが。
右肩から先が消えている。
血は出ていなかった。
代わりに、 黒いコードみたいなものが脈打っている。
「なんだよ、これ……!」
その時。
天井が開いた。
ガコン。
巨大モニター。
ノイズ。
ザザッ――
映像が映る。
真っ白な仮面。
口だけ笑っていた。
『おはようございます』
機械音声。
男でも女でもない。
『“欠片裁判”へようこそ』
部屋が揺れる。
壁が開いた。
通路。
そこには、 十数人の男女が立っていた。
全員、 身体のどこかが欠けている。
腕。
目。
耳。
指。
口。
誰もが怯えていた。
「なんなのここ!?」
「返してよ!! 私の目!!」
「ふざけんな!!」
怒号。
悲鳴。
泣き声。
仮面だけが笑う。
『安心してください』
『皆さんの欠損は、ゲームクリア後に返却されます』
沈黙。
『ただし』
モニターに文字が浮かぶ。
【欠片裁判ルール】
・プレイヤー13名
・各プレイヤーは“身体の欠片”を所有
・毎夜、誰か一人の欠片を奪える
・欠片を失うほど能力が低下
・完全欠損したプレイヤーは“廃棄”される
「……廃棄?」
その瞬間。
奥の男が叫ぶ。
「こんなの付き合うか!!」
男は出口へ走る。
次の瞬間。
天井からワイヤーが落ちた。
ズバン!!
男の身体が、 真っ二つになった。
血。
内臓。
悲鳴。
白い部屋が赤く染まる。
誰も動けない。
仮面が笑う。
『ルール違反です』
その時。
少年の左目に、 突然文字が浮かんだ。
【能力付与確認】
【あなたの欠片:《記憶》】
「……は?」
ノイズが走る。
次の瞬間。
知らない記憶が流れ込んだ。
誰かの人生。
誰かの死。
誰かの絶望。
「っ……!」
頭が割れそうになる。
すると。
向かい側にいた少女が、 こちらを見ていた。
白髪。
片目だけ赤い。
だが。
口がない。
縫われていた。
少女の左目に、 文字が浮かぶ。
【欠片:《感情》】
少女が、 静かにスマホ画面を見せる。
そこには。
【最初の夜が始まります】
【今夜、“誰か一人”の欠片を奪ってください】
と表示されていた。
その瞬間。
部屋の照明が落ちた。
完全な暗闇。
そして。
どこかで、 肉を引き裂く音がした。




