怖がられない昭和幽霊ですが、海外悪魔とSNSで意気投合しました〜心霊スポット巡り編〜
昭和生まれの幽霊、ユー子はトンネルの前に立っていた。
これまで住みついていた廃墟は取り壊され、追い出されてしまったのだ。
仕方ない。
住民税を払っているわけでもないし。
若者が落としていったスマホを霊力で起動し、使いこなす。
最近は、心霊スポットを巡りながら、肝試しに来る若者を待つのが日課になっていた。
元々このトンネルにいる幽霊たちも、わりと温かく迎え入れてくれている。
―――――
【yuu ko】
トンネルで待ってるよ〜。
みんな来てね〜
―――――
自撮りをして投稿する。
ぼんやりと薄く写った自分の姿。
輪郭がにじんで、どこか現実感がない。
……これは、怖い……はず。
SNSにアップしたが、反応はない。
誰にも見向きもされない。
そう思っていたら、
【demon since666】からハートがついた。
レムだ!
見てくれた!嬉しい!
ユー子はその場でぴょんぴょん跳ねた。
それを、周囲の幽霊たちが不思議そうに見つめている。
その時だった。
トンネルの奥から、車のヘッドライトが差し込んだ。
「うわっ、まぶしっ」
思わず顔をしかめる。
「ハイビームにすんなや……」
ユー子は車を睨みつける。
眩しさもあって、思いっきり眼を飛ばす。
黒髪ロングの髪は、膝まで伸びている。
白いワンピースは、生前のお気に入り。
レースの袖が、少しだけ可愛い。
スマホで知った情報によると、最近は昭和レトロが流行っているらしい。
ならば――
まさに昭和レトロな格好の私は、最先端。
ユー子は小さく胸を張った。
「……完璧」
車から降りてきたのは、二組の若いカップルだった。
きゃっきゃ言いながら、ひっつきながら向かって来る。
他の幽霊たちは、「リア充め!」と目を血走らせている。
ユー子も、肝試しに来た若者を静かに待ち構えた。
「え〜怖い〜早く帰ろうよ〜」
「大丈夫だって。ここのトンネルは初心者向けで怖くないって噂だし、俺が守るからさ〜」
若者たちは、スマホを片手に入口までやってきた。
他の幽霊たちは、枝を折って音を立てたり、唸り声を上げたりする。
それでも若者たちは、さらに引っ付くだけだ。
ユー子は、「お前も何かやれっ!」という他の幽霊たちの圧を受けながら、若者たちの背後に回り、肩をちょいちょいと指先で叩く。
――反応はない。
えっ。無視された?
もう一度、しっかりと叩いてみる。
それでも反応はない。
はっ! 私、幽霊だった。
こいつら、全然見えてないじゃないか。
ユー子は若者たちの前に回ると、自身のスマホの光を顎の下から当て、にょきっと顔を出した。
「「「うぎゃー!!」」」
「ちょっと〜なによ〜! 何があったのー? 置いていかないでよぉ〜」
若者たちは、叫び声を上げながら帰っていった。
「……勝った!!」
ユー子は、ガッツポーズを決める。
周りの幽霊たちは、「何かが違う……」と首を傾げながら、ユー子を見つめていた。
「何で見えない奴に限って、ここに来るんですかね?」
「そりゃ〜、見える奴は来ないさ……。こんだけ幽霊が集まってて、面白いと思うんだけどな〜」
ユー子が周りの幽霊たちに声をかけると、血まみれのおじさんが、若者が落としていったタバコをふかしながら答えてくれた。
叫びながら逃げていく若者の車を見つめながら、
ユー子は、少しだけ自信がついた気がした。
――――
【yuu ko】
トンネルで驚かせることに成功!
ここにいる人たち、みんな優しかった!
次はどこに行こうかなっ
――――
ピースをした青白い手の写真とともに、SNSにアップする。
やっぱり、反応はない……。
なんか、SNSやめたくなってきた……。
一回アップしただけで、数百のハートやコメントがつく人もいるのに……。
――――
【demon since666】
やったじゃないか。
移動しながら驚かせているんだな。
行動的な奴は、我が輩は好きだ。
――――
獣のような太い指には、鋭い爪が生えている。
それがピースをしているのだから、どこかチグハグだ。
レムが添付した写真を見ながら、ユー子は、ふふっと笑いながら返信をしようとしたその時、新たなコメントがついた。
――――
【令和の陰陽師もどき】
わっ。今どき、幽霊もSNS使うのかよ。
やばっ。これ、コメント書いたからって呪われないよね。
ここのトンネル、いっぱいいるのに、よく行ったね。
ベビースモーカーの血まみれのおじさん、まだいるのかな?
――――
ユー子は、飛び上がる。
だれ、だれなの? この人!
やらせとかじゃなくて、幽霊ってわかってる?
しかも、おじさんを知ってる?
まさか、本物の霊能者?
幽霊よりレアじゃん!
――――
【yuu ko】
ネットを通じて呪えませんよ〜。
そもそも、取り憑くことはできても呪えないんで……。
――――
【令和の陰陽師もどき】
へ〜……。呪うなら祓わなきゃな〜って思ってたけど、イタズラ程度なら見逃してやるよ。やり過ぎないようにな〜。
――――
祓う?……消滅させられる?
こわっ。
ユー子は、ぶるると身体を震わせる。
そして、次の場所へと移っていく。
どこか、暖かいところにでも行こうかな……。
都会に行ってみよっ。
昭和レトロが流行ってるなら、最先端のファッションだよね。
るんるんとスキップしながら、ユー子は高速で足を動かし、闇夜に消えていった。




