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そうして旅人は自由に生きる~魔と法を巡る物語~  作者: 宿木ミル


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第5話【契約獣人の街】

 契約というのは信頼関係があるからこそ成立するもの。

 相手の素性がわからない場合は、契約するというのにも勇気がいるだろう。

 では、最初の契約を行う存在はどのように行動するべきなのだろうか。考えてみるとなかなか難しい命題だと思った。




「……随分雰囲気が独特な街かも」


 今日の宿を取る為に入った街。

 茶色のレンガの家が並ぶ、落ち着いた印象を感じる空間でもある。

 街の中心部には、どこからでも見える時計台があり、存在感を発揮している。

 街全体としてはにやや厳かな雰囲気。でも、その景色はなんだか変わっていると感じた。


「俺と契約してくれ! スポンサーになってくれるなら特製ドリンクの優待券を一ヶ月分提供する!」


 ガタイのいい狼男が大きな声をあげて街の人々に声を掛けていたり……


「連携取引だ。お前の会社と俺の会社、お互いに利益を出し合うことによってさらに成長できると思わないか?」


 カフェでは機密事項でもないのか、商談を厳かに行っている虎の獣人がいる。

 見渡してみると普通の人のような様相の存在はいなかった。

 街にいる人々はみんな獣人だ。


「うーん、目立っちゃうか」


 出自がちょっと変わっているとはいえ、私の姿は人間の少女そのもの。少し大人びてはいるかもしれないけれど、旅人として話しやすい雰囲気はある方だとは自覚している。

 もし、街に滞在することを要求されたりしたらちょっと断るのが大変そうだ。

 そう思いながら移動する。

 目的地は宿屋だ。

 夕食時に街に入れたのは幸運だ。野宿も嫌いじゃないけれど、なんだかんだであったかいお布団で眠れる時間というのも大切なのだから。


「そこのキミ、ちょっといいかな」

「私?」


 街を歩いていると、賢そうな狐の青年に声を掛けられた。

 誠実そうなシュッと顔立ちからそこまで悪い印象は感じられない。


「あぁ。旅人だろう?」

「そうだね。外からふらっと旅してる旅人」

「そうか……なら、ちょっとした契約をしてみないか?」


 単刀直入に話を切り出してきた。

 自分の話を通す為に、しっかりと要件を最初に言う。そういうのは嫌いじゃない。


「内容次第かな。長期の契約は旅に響きそうだからできないよ?」

「構わないさ。ボクがしたいのは街の紹介と、ボク個人が頼みたい相談だからね」

「契約内容はふたつってことだね」

「あぁ、契約書にするとこんな感じさ」


 手際よく狐の青年が契約書を取り出す。

 その中の内容について、しっかりと目を通す。


『私は契約者に対して二時間ほど街の紹介を行う。契約者は取り決めに従い、悩みを抱えている私に対してアドバイスを与える』


 ……もっと契約書というのは硬い印象かと思ったけれど、ここの場合そうでもないのかもしれない。

 取引内容も簡潔で、街の紹介をしてもらう代わりに狐の青年の相談に乗るということになる感じだ。

 ここに記載されている『私』というのは狐の青年のことになる。わざわざ書いてあるあたり、なにかアドバイスが欲しいということなのかもしれない。


「契約は成立するかい?」

「悪くないね。成立ということにしようか」

「では、サインを」


 契約書の下の方にサインを書く場所があったので、丁寧に名前を書く。

 これで成立したということだろう。


「よし、これで今月の分のノルマは達成できたかな」

「ノルマ?」

「よく見てくれ」


 狐の青年が契約書が掲げると、その一枚の紙から光が発せられた。

 その光はやがて空まで飛んでいき、街の中央にある時計台まで送られていった。


「この街の仕組みさ」

「街の法ってこと?」

「あぁ。ちょっと長いが『この街の住民は必ず契約相手を見つけること。契約したときに発生したエネルギーが街を支える。契約が取れないものの人権は限りなく少ないものとする』ってやつ」

「契約することそのものに意味があるんだ」

「そうなる。だからボクたちは契約することにいつも必死なのさ」


 苦笑して、狐の青年が私の前を歩いていく。


「ボクはツネって言うんだ。よろしく」

「私はリベラ。こっちこそよろしく」


 こうして私は挨拶を交わし、街のことを色々教えてもらいながら宿に向かうことになった。


「人権が限りなく少なくなるってどういうこと?」

「散々な扱いをされるようになるってことさ。しっかりとした食事もとれなくなる」

「そんなに?」

「あぁ、この間の一ヶ月はパンの耳しか食べられなかった」

「……それはしんどいね」


 栄養も偏って体調不良にも陥りそうだ。

 そこまでしんどい生活になるのなら、契約を取るのも必死になるわけだ。


「ツネはいつもギリギリ?」

「そうだね……僕はどうにもこの街の住民との契約がうまくできなくて、ひぃひぃ言ってる」

「そこまで下手そうじゃないのに」

「うーん、ボクにできることが少ないからかもしれないね」


 街の施設に指を指しながら説明する。

 裕福そうな獣人が行き来している社交場のようなホールだ。


「上手に契約できる人は、大胆不敵に交渉をするんだ。大金持ちが集まるような場所に赴いたりしてね」

「失敗した時のリスクも高そうだね」

「だから、二重三重に契約を交わすんだ。保険についての契約、失敗時の取り決めを作る。そういったところで契約を重ねて街に貢献する」

「なるほど、賢い」

「そう、賢いんだ。法には書いてないけど、契約をいくつもこなしている獣人には街から助成金も貰えるって話だし、よくできてる」


 丁寧な説明の裏腹、ツネの表情は沈んで見えた。

 ホールを見つめる目も遠くを眺めるような、どこか黄昏ている様子に思える。


「でもボクはそういう風に器用に立ち回るのができない。だからいつもギリギリの生活なのさ」

「重ねて契約するとこんがらがりそうっていうのはなんとなくわかるかな。シンプルな方が好みだし」


 契約のスタイルというのは人それぞれだし、保険もついでに契約したりするのは合理的ではあるだろう。

 しかし、一回でそれらを全部執り行うのは契約する側もされる側もかなりの気力を使いそうな気がする。

 少なくとも、私の場合は疲れて少しの間動けなくなる可能性がある。


「僕もどちらかというとそっち側の考えだ。でも、知識がないと契約はうまくいかないんじゃないかと思えてね」

「知識?」

「経済を回す力っていうのかな……相手に対して得だと感じさせる能力みたいなのがボクにはどうにもないように思えるのさ」

「うまい話を作るっていうのも大変だから、まぁそこはしょうがないと思うけど……」

「そう言ってくれるだけでも少し気が休まるよ。さぁ、着いてきて。色々紹介してあげるよ」


 会話を繰り返しながらも、ツネの街の観光は続いていく。

 のんびりとした様子で話す彼の姿は、せっかちに契約を急ぐ人々とはまた異なる魅力を感じられた。

 街の景色は多種多様だった。


「あれは契約に失敗して言い争いになってるパターンかな。ボクはなるべくああはなりたくない」

「やっぱりそうなることもあるんだ」


 言い争いになって、契約書に指を指しながら抗議している獣人の姿があったり……


「結婚だって大切な契約さ。だから、この街では結婚式は盛大にやる」

「同じ屋根の下、一緒に暮らすっていうのは人生で大切な選択だからね」


 結婚式で仲睦ましく微笑んでいる夫婦がいたり。


「あれは画家に自画像を描いてもらう為に色々契約を結んでるね」

「細かい……! そこまで指定するんだ」


 目の輪郭とか、そういったものを細かく調整して契約書にしているものを画家に提出している獣人がいたりと、街の様相は本当に多くのものがあった。



 しばらくの観光を終えて、少し薄暗くなったころ。

 私とツネの話は身近な夕食の話題へと変わっていった。


「パンの耳って言っても馬鹿にはならない。しっかりとした契約で製法されたパンは耳だって美味しいからね」

「シュガーラスクとかも良さそう」

「そうだね。それも結構食べてた。ただ、砂糖をいっぱいのやつも好きだけど、ボクのオススメはコーンポタージュにカリカリのやつを沈めることだね。ノルマに届いてない時でもある程度のスープは購入できるから、寒い日はそれで英気を養っていたよ」

「コンポタ……最近食べてないけど、それもよさそう」


 クリーミィな甘さにサクサクのパン。組み合わせとしては鉄板と言えるだろう。

 実体験を伴ってオススメされると、俄然興味が湧くというものだ。


「宿屋の亭主にも安価で美味だってオススメされたりするよ」

「宿を使うこともあったりするんだ」

「ボクの契約は街案内が多いからね。旅人との遭遇の為によく使ってるのさ」

「納得。じゃあ、今日のサイドメニューはコンポタにしてみようかな。主食でオススメなのってある?」

「そうだね……ボクがお世話になってる宿屋は契約先でパスタを積極的に仕入れてるから、それらを使った料理が比較的安価になってるんだ」

「いいね、パスタ。満足感もありそう」


 パスタにコンポタ。優雅な夕食セットみたいになってきた。

 少し歩いた先、ある建物をツネが指を指す。


「あそこだよ。いつもお世話になってる宿屋」

「なかなか広くていいね」


 二階建ての様式ながら、なかなか広い宿になっている。

 レンガで全体構造は仕上がっていて、堅実さを覚える。

 宿の外で座りながら悠々と話している人の中には獣人ではない人の姿もある。

 真剣に話をしている獣人と旅人もちらほら見受けられる。

 それらの光景から、全体的に賑わっている宿屋だと感じた。


「チェックインする時はひとり用の部屋を旅人料金でお願いできるよ」

「しっかりしてる」

「これも旅人組合的なのと契約してるから安くなってるって話だね」

「契約によって色々成り立ってるっていうのがよく実感できるよ」

「それがこの街の特色だからね」


 会計で話を済ませて、宿を使うということへの簡単な契約を結ぶ。

 サインをして、先に料金としてお金を支払い、宿のサービスを受けられるようにするという仕組みだ。

 他の街の宿屋でもよくやるやり取りだけれども、この街の場合、厳かな契約書が絡むから面白く思える。


「さて、食事を取るなら食堂に向かうといい。大食堂になっていてなかなか広いよ」


 ツネに連れられて、大食堂に向かう。

 彼の言う通り、広い空間には多くのテーブルや椅子が置かれている。

 そこで食事を取っている獣人もいれば、のんびりお酒を嗜んでいる旅人、交渉話に盛り上がっている人と獣人もいた。

 

「ここも人気な場所なんだ」

「旅人が多く訪れるからね、契約チャンスも多いってわけさ」

「食事を取りながら待ち構えてる獣人さんもいるってこと?」

「そうだね、いっぱいいると思う。食堂で食べるだけだったら宿に止まらなくても使えるからね」

「生活が懸かってるって大変だ」


 入り口付近にはちょっとした装置みたいなものがあった。

 そこには様々なメニューの名前が記載されている。

 こういう仕組みをどこかで見たことがある。


「食券購入機、みたいだね」

「まさしくそれだよ。機械が得意な街から契約で貰った機械に街のシステムを組み込んだ代物さ。先払いのお金のやりとりで契約エネルギーが手に入る便利なものになってる」

「まぁ、買い物も一種の契約だからね。契約の流れに取りいれられるのも納得できる」


 私はお金を取り出して、確認する。

 ……この国でも共通の通貨は使える。よかった。


「コンポタとパスタ……っと」


 食券購入機は旅人用と街の住人用に分かれていたので、私は旅人用から購入する。

 旅人用は値段ごとにボタンの位置が調整されているものの、隣にある住人用は細かく契約成立量みたいなものにそってボタンが区切られていて大変そうだ。

 コーンポタージュにはパンの耳を入れてもらえるようにトッピングの食券を購入。

 パスタは海鮮が食べたかったからペペロンチーノを選ぶ。

 こんなところでいいだろう。


「ボクも購入できた。いこうか」

「ツネは何を頼んだ?」

「トマトソースのパスタだよ。トマトも安価だったりするからね。なるべく節約したいってわけさ」

「なかなか大変だね」

「ちょっと選択肢が絞られた中で考えるっていうのも楽しいものだよ」


 食券を購入した私とツネは食堂を切り盛りしているコックさんに食券を渡して席に着いた。


「さて、そろそろ二時間が立って契約が終わっちゃうけど、どうしようか」


 そう言いながら時間を確認するツネ。

 なるほど、確かに時間は遭遇した時から二時間が経過しようとしている。

 多分、食事が届くころには契約が終わる頃合いだろう。


「追加契約でもするとか?」

「うーん、悪くはないと思うけど、なんかズルしてるってかんじなんだよね」

「ズル?」

「だって、こう……なんだろうね? お試し期間が終わったら本契約をやってみよう! みたいなのって、ボク的にはもやつくっていうか……」


 そう言いながら腕を組み、悩むツネ。

 本気で嫌っているわけではないのだろう。自分のやり方にあっているかどうかの部分で悩んでいる印象を受ける。

 私はそんな彼の姿を見て、ひとつの提案をしてみる。


「契約は押し付けるだけが全てじゃないし、相手と信頼関係が取れたって思うなら、別の形で契約してみるのもいいんじゃないかな」

「でも、いいのかな。相手に迷惑かけてそうで怖いんだよね」

「……それなら、こうしようか」


 私は自身の魔力を展開して掌に魔法辞典を出現させる。

 そして、詠唱する。


「我、リベラ・マギアロアの名を持って法の模倣を執り行う。『契約の意味を再認識を行う。契約される側の立場を理解せよ』」


 静かに唱え、そして私の目の前に一枚の契約書が魔力によって形成される。

 私はその中に、私が取り決めた契約を書いていく。


「そ、その力は?」

「ちょっとした魔法。ツネに試してみたいことがあってね」

「試す?」

「そろそろ書き終わるから待っててね……っと」


 契約書の内容をきっちり仕上げて、ツネに見せる。


「私が考えた契約内容はこう。『私は契約者ツネと一緒に夕食を行い、相談に乗る。そうして楽しい時間を過ごしたのち、笑顔で別れる』」

「なんていうか、契約にしてはちょっと形式が柔らかすぎるような……?」


 きょとんとした表情のツネ。

 それに対して、私は私なりのペースで契約を迫ってみる。


「ツネは、どう思う? この契約」

「どうって……いいなぁって思うけど、受けていいのかな」

「それを決めるのはツネ自身だよ。契約者たる私は、強制はしないよ」

「ボクが決める……」

「そう、逆に契約される側になってみるのも斬新じゃないかな」


 悩んだのちに、ツネは頷いた。


「契約してみたい。やっぱり、旅人とは笑顔で別れたいからね」

「よし、決まり!」


 契約書に名前が記載された瞬間、私の契約書も光を帯びてエネルギーを放出していた。

 私のやり方でもどうやら街には貢献できているみたいだ。


「ツネはきっと、ツネのやり方で自分らしく契約を進めていけばいいんじゃないかなって私は思うんだ」

「ボクのやり方で……?」

「うん。お金のやり取りが絡む契約を重点的に行う獣人もいると思うけど、ツネは人と寄り添うやり方が得意に見えたから」

「だから、今日のやり方も間違いじゃなかったと?」

「きっと、そうだと思うよ。少なくとも私がこうやってアドバイスできるのもツネのお陰だから」


 契約のやり方はひとつじゃない。

 そして、契約の結ばれ方だって多種多様だ。

 だから、必要以上に難しく考える必要もないのだ。


「じゃあ、今日みたいに二時間が過ぎたのちに契約をまたしたいってなった時はどうすればいいかな」

「その答えは単純だよ」


 ツネの目を見て、まっすぐ言葉にする。


「相手の気持ちに寄り添って、話をする」

「……それだけ?」

「単純だけど、難しいことだって思うけどね。だって契約者としての立場とされる側としての立場の両方を考えないといけないから」

「あっ、だから、ボクに対して契約を迫ったんだ」

「そういうこと」


 笑顔でそう返答する。

 自分だけの都合を押し付けても失敗してしまうことがある。だから、相手のことも考えていく。

 そういうことを伝えたかったのだ。

 私の言葉を聞いて、おどおどしている様子だったツネの表情が少し明るいものになった。

 ほんの少しでも、自信に繋がったのなら幸いだ。


「ありがとう、リベラ。未熟かもしれないけど、ボクはこれからもボクなりに頑張っていくよ」

「ふたつの立場を理解すれば、きっとうまく行くよ。ツネ。応援してるから」


 会話がひと段落した時、ちょうどパスタとコーンポタージュが届けられた。

 海鮮のすっきりした味わいが感じられるペペロンチーノにサクサクのパンがクルトンとして入れられているコンポタ。

 どれも美味しそうだ。


「じゃあ、これからは色んな話をしながら夕食でも取ろうか」

「うん、いただきます」

「いただきます」


 街で出会ったツネと食事を取る時間。

 普段とは違う、談笑しながら食べる瞬間は有意義で、いつもよりも笑顔になれている気がした。


 夕食を終えたのち、私はツネと宿屋に会ったカードなどの道具で楽しく遊んだ後、睡眠を取ることになった。

 契約という固い雰囲気の街にだって、優しかったり、柔らかい印象の出来事はいっぱいあった。

 そう、心から感じられた。






 出発の朝。

 私は街の外に出る前に、ツネに会っていた。

 街の入口、ツネが明るい様子で私に話しかける。


「リベラのお陰で、なんだかボクなりの生き方ができるようになったかもしれないよ。本当にありがとう」

「どういたしまして。でも、一日二日で全てが変わるっていうのはあり得ないから、のんびり変わっていこう」

「うん。ボクはボクのやり方でこれからも契約していくよ。失敗しても、落ち込んでも、頑張るさ」

「それならよし。じゃあ、私はそろそろ行くね」


 荷物を持って、準備万端。

 体調だってばっちりだ。

 私を見送るツネは、最後に問いかけてきた。


「リベラ、次はどこに行くつもり?」


 単純な疑問。

 それに対して、私は笑顔で答えた。


「風のゆくまま、自由に立ち寄りたいって思ったところに行くつもりだよ」


 大きな目的がないとしても、私は私らしく生きていく。

 きっとこれからも、マイペースに生きることは変わらない。

 そんな私の答えを聞いて、ツネも笑っていた。


「リベラ、契約の大切さ、忘れないようにね!」

「それはツネから学んだつもりだよ。だから、他の街でも気を付けてく」

「うん! 気を付けて!」


 手を振って笑顔で街から立ち去る。

 ツネは私の姿が見えなくなるその瞬間まで、ずっと手を振っていた。

 だから、私も手を振りながら笑顔で応じた。


「……さて」


 街道にはゆったりと歩く私の姿ひとつ。

 空は快晴。

 いい旅日和だ。


「次はどこにいこうか」


 少しずつ足を進めていく。

 新しい街に入った時、契約について考えたことが役に立ったら面白いな。

 ふと、前から歩いてきた商人の取引を見つめながらそう考えていた。

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