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そうして旅人は自由に生きる~魔と法を巡る物語~  作者: 宿木ミル


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第14話【チョコレートの街】

 街の法は時に幻想的な空間を作り出す。

 普段その街に暮らしている人からすると普通の日々でも、旅人からすると斬新な景色になるというのはよくある話だ。

 旅人の私は、まだまだ世界のことを全然知らない。





「季節によって賑わう場所ってある気がする」


 しっかりと整備された街道をぼんやりと歩きながら考える。

 地図をあまり気にしないで歩く日々だけれども、最近はどうにも商人の移動を見かける。

 袋詰めした荷物を荷車で運んでいる人はどこかせわしなく、汗を流しながら走っていった。


「……こうも多いと興味が湧いちゃうのも仕方なしってことで」


 わからないことをわからないままにというのは性に合わない。不都合とかがなければ、積極的に聞いてみたくなるものだ。

 そう考え、私はゆったりと歩いている商人を見かけたので、話しかけてみた。


「すみません、最近どうにも商人がここの道を通っていってる気がするんだけど、なにか理由があったりする?」


 私の問いかけに対して、若い男の商人は律儀に私の顔の方を向いて話してくれた。


「別の世界から来た風習ってやつで、チョコレート市場が賑わってるんですよ」

「別の世界からの風習?」


 首を傾げて聞いてみる。

 別の世界……異世界からやってきた文化というのは少なくない。年の節目にプレゼント交換を行うだとか、そういう風習も街によっては有名になっている。

 では、今、この瞬間に賑わいを見せている風習はなんだろうか。


「バレンタインデーってやつですよ。なんか、こう……想いを込めたチョコレートをプレゼントする日なんだとか」

「プレゼントを贈る日って結構多いんだね」

「言われてみればそうですね。風の噂ではホワイトデーっていうのもあるそうですよ? こっちはクッキーを渡すとか」

「記念日が多いと商人さんも儲かりそうかも?」

「ははっ、そういうことです。だから僕たちは躍起になって行動を起こしてるんです」

「なるほどね」


 私は商売にはそこまで詳しくないから深くはわからないけれども、それでも流行というのは掴んだ方が得だというのはなんとなくわかる。

 文化に対して好印象を持っている街だったら、商人を快く受け入れてくれることだって多くなりそうだ。

 私が話しかけている商人さんも、荷車の中にはいっぱいの荷物が積まれている。

 それなのに表情が明るいのは、商人として流れを掴めているからかもしれない。


「商人が向かってる街はわかる?」

「当然です、みんなチョコレートの街に向かっています」

「チョコレートの街……いかにもって感じかも」


 そんな特化した街ならば、きっと特需というのも生まれるに違いない。

 年越しに向いている街にふらっと私が移動したみたいに、チョコレートの街に特別な瞬間を求めて行く人はなかなかにいそうだ。

 それこそ、バレンタインデーという日を文化として取り入れているのなら、賑わいだっていつも以上のものになるだろう。


「バレンタインデーそのものは一日ではありますが、チョコレートの街はこの時期、フェスティバルみたいな形式で盛り上げてるんですよ」

「バレンタインフェス、みたいな感じに?」

「そんな感じですね! 旅をしている方なら、是非行ってみるのをおすすめします!」


 そう言い終えたあと、そろそろ仕事に戻るといって商人は走って去っていった。

 私はありがとうと彼に伝えたのち、この後の行動指針を決めることにした。


「よし、今日行く街は決まりかな」


 行く場所はチョコレートの街。

 地図や看板を確認し、私はしっかりと行く先を決めて移動していった。







 しばらくの時間を歩いた先、私はチョコレートの街まで到達した。

 商人が行き来する空間、その景色は独特なものになっていた。


「凄い、見てるだけで甘さが伝わってきそう……!」


 そう、見渡す限り街のありとあらゆるものがチョコレートになっていたのだ。

 街の策はブラックチョコレート。

 建物はホワイトチョコとミルクチョコで色分けされている。

 草木すらチョコレートだ。ひとつひとつの葉がクッキーチョコのようになっていて、ビターチョコの木が街にいっぱいある。

 ……もしかしたら、川の水がココアとかそういうのもあるのかもしれない。


「食生活とかどうなってるのかな……」


 街を歩いている中で、生活をひとつひとつ見つめていく。


「やっぱこの店のチョココロネは最高だ!」

「いーや、チョコクロワッサンの方がいいね!」

「むむむ、わかる。が、しかし! 舌触りがいいのさ!」

「サクサクチョコの食感の良さだってある」


 パン屋さんではチョココロネとチョコクロワッサンの魅力を語り合う青年の姿があった。

 いくつかパン屋さんに並んでいるものを外から確認してみても、ほとんどがチョコ関連のパンになっている。

 プレーンのパンの方が高いという不思議な事態も発生している。


「まさか、飲み物も?」


 外にちょうど水飲み場があったので、そこの蛇口を捻って確認する。

 ……流石に、普通の水が出てきた。やっぱり甘いだけだと大変なのかなと思いながら水を飲んでいた時、ふたつほど蛇口が隣についていることに気が付いた。


「ビターココア用に、ミルクココア用……!?」


 やっぱり、それ専用の水源というのがこの街にはあるのかもしれない。

 素直な水の蛇口は一回の使用に旅人用と書かれていたり制限がかかっているのに対して、ココアの蛇口は制限なし。

 そういうのを考えると、チョコレートが生活の基本になっている街なのかもしれない。


「なんていうか、インパクトが凄いかも」


 街の住民の服装もかなりチョコレートの色っぽい。

 赤いリボンを付けている人もいるけれど、基本的に暗めだったり明るめだったりする茶色のチョコレートらしい色合いを意識しているのを多く見かける。

 街ごとに衣装の法則が違うのはよくある話だけれども、服装もきっちりチョコらしいのは街の特色を感じずにはいられない。


「街の人はこの生活に慣れているとは思うけれども、外から来た人は大変そうかも」


 ふと見つめると、チョコレート風の衣装ではない旅の荷物を持った旅人たちがゆったりと休憩していた。


「ふぅ、楽しいのは間違いないが胃もたれしちまうな……」

「あんまり飛ばしすぎないにしようね! ぜったい後悔するから!」

「だな」


 男女のカップルさんだろうか。

 どっちかというと女の子の方がはしゃいでいるような感じがする。

 動向について探っていると、どうやら旅人たちは私以外はペアになっている人が多いみたいだ。

 街の衣装とは異なる衣装を着ている人たちは、楽しそうに街を散策している。


「カップル割引だって! 食べよっ!」

「いいね、賛成だ!」


 美味しそうなものを見て、目を輝かせてる人。


「チョコの木の下で記念撮影しよ?」

「思い出に残そうね!」


 撮影機を利用して、友人同士で思い出作りに励んでいる人……


「街の人にインタビューです! この街のこと、どう考えてますか!」


 新聞とかにするのだろうか、色々尋ねてる人もいた。


 街の景色がチョコレートを中心に動き続けている。

 こういう賑わいの中でひとり、のんびり過ごすのも風情があっていいのかもしれない。

 そう思いながら、公園のベンチでゆったりしている時だった。


「あれ、なんでアンタがここに!?」


 キラキラした、フリルいっぱいの衣装を着た少女が話しかけてきた。

 そう、私は彼女のことを知っている。


「ステラの方こそ、どうしてここに?」


 ステラ・クォーレ。私とは違う、正真正銘の魔法少女だ。

 彼女が元気に活動している時は、おおよそ可愛らしいふわっとした衣装になっていることが多い。

 私の姿を見かけたステラは、ひょいっと私の隣に座り、説明してきた。


「お仕事!」

「魔法少女がお仕事ねぇ」


 なんだか現実的な響きだ。魔法っぽくないとは言わないけれど。

 そう思っていたら彼女は顔を赤くしながらすぐに反論してきた。


「……アルバイト! アルバイトってことにして!」

「うん、そっちのほうがステラらしいかも」


 久しぶりに彼女の声を聞くと、なんだか元気になれる。

 フレッシュな感じがすーっと心地いい。


「とにかく! 人が困っている時に手を差し伸べるのが魔法少女! ということで、今日はしっかり動いてるわけ!」

「商人の手伝いをしたりしてることが多い?」

「商人の? うーん。そっちは管轄外かも」

「意外……じゃあどういうのやってるの?」


 荷物運びも結構仕事としてはやれることは多そうだけれども違うみたいだ。

 気になって彼女の行っていることを確認する。


「あたしがやってるのはバレンタインデーにやってくる旅人に対するサポートかな。普通の水や簡単な食事とかを用意して渡してるの」

「……やっぱり、チョコレートが主食だったりするから?」

「よくわかってるわね。チョコレートの街でチョコレートに嫌気が刺さないように意識して行動してる」

「街の住民じゃないと辛そうだもんね。いっぱいのチョコレート」

「そう。で、バレンタインって想いを伝える日だし、キャンペーンだって気合が入ってる。ここに来た人に後悔はさせたくないから動いてるってわけ」

「なるほどね」


 そこまで話を聞いて、気になって来た。

 私でも手伝いができるのだろうか。


「……予め言っておくけど、ひとりだと手一杯だった部分もあったのよね。バレンタインキャンペーンの運営委員会も最近できたみたいだし」

「あれ? 私が手伝うこと前提で話してる?」

「だって、やる気はあるんでしょ? アンタの目を見てればなんとなくだけどわかるし」

「持つべきは魔法少女友達だね、うんうん」

「……まぁ、アンタが魔法少女かどうかは置いておくとして、行動力は信頼してるってわけ。運営委員会にはあたしから声かけるけど、協力しない?」

「喜んで」

「よし。あっ、給料も出るみたいだから安心してね」

「アルバイトの?」

「そ、アルバイト」


 ステラが話を区切ると、魔法の道具をちょいちょいっと動かして何やら文字を打っていた。

 少しの時間が立ったのち、彼女は私の方を振り向き、微笑んだ。


「問題ないみたい。じゃあ、色々手伝ってもらうわよ、リベラ」

「どういうことをすればいいか聞いても?」

「そりゃ当然」


 指を鳴らして、彼女が大型のトランクを召喚する。

 トランクの下は魔法のベールがかかっていて、気軽に動かすことができそうだ。

 さらに指が鳴ると、トランクはパカっと開き、中身が露わになる。

 その中にはいくつかの道具と様々な食べ物が入っていた。


「移動販売して、儲ける」

「……儲けるって魔法少女っぽくな」

「ああもう! 困ってる人を助ける! おっけー!?」

「いいよ、一緒に協力して頑張ろっか」


 からかうといい感じに反応をしてくれるものだから、ついつい変な言葉を言ってしまう。少し控え目にしてもいいかもしれないな。

 そんなこんなで、私はステラと協力して行動を起こしていくことにした。


「今回ポイントになるのはデートのお助けをすることよ」

「デートのお助けって?」

「まず、リベラはバレンタインデーってどういう日か知ってる?」

「あんまり詳しくないね。教えてほしいかも」

「文化的なきっかけとかは知らないから私からは説明しないけど、女の子が勇気を出して男の子にチョコレートを渡すことが多い日なの」

「女性から男性に? 告白とかもできそう」

「そうね。実際バレンタインデーを告白のきっかけの日にする人も多いらしいわ」


 なるほど、男女のカップルが多く目立っていたのはそういう事情があったからか。

 リベラが詳しいのは少し意外だけれども、なにかしら理由はあるのだろうか。


「私が詳しいのはなんでって言いたそうな顔ね」

「顔でわかる?」

「まぁ、腐れ縁だし」


 トランクの中身を色々取り出しながらステラが続ける。


「正真正銘の魔法少女だから、詳しいのよ」

「異世界と関係してるの?」

「ふふん、そういうこと」


 どや顔でそう言葉にする彼女。

 異世界から来たかどうかそういうのを説明しているわけではないけれども、ステラの表情から自信を持って詳しいというのはわかった。


「さて、ここから先はアルバイトの話。リベラは食べ歩きでチョコレートを食べてる人がいたらどうやって行動する?」


 そう言いながら、ステラの視線が遠くのカップルの方に向かう。

 彼らが購入しているのはチョコレートのチュロス。いかにも気軽な食事を堪能している最中。

 こういう相手に行うべき行動は……


「飽きさせないことを前提に動くっていうなら、私はこうするかな」


 トランクの中から色々引っ張り出して、ひとつ、私が使いたいものを取り出す。

 それは、緑茶のティーパックだ。


「なるほど、いいアイデアね」

「これ使う時は相手からお金を取るの?」

「まさか。ただのティーパックと紙コップでお金を取るのは忍びないからしないわよ。もっとこってりしたサービスをするときにはお金は発生するけど」

「わかった。じゃあよろしくね、ステラ」

「りょーかい」


 彼女にお願いした瞬間、即時に対応してくれた。

 指を鳴らして、お湯が入ったティーポットが現れる。湯気が出てて温かそうだ。


「魔法の力でお湯を用意して」

「それを注いで簡単緑茶の出来上がり」


 軽く浮き沈みさせて綺麗な緑色になったのを確認し、ティーパックを取り出す。

 そして、カップルのふたりがチュロスを食べ終わったタイミングで私は行動を起こすことにした。


「ちょっと行ってくるね」

「応援してるわよ、リベラ」


 ゆっくりと近づき、カップルのふたりに宣伝していく。

 私の後ろには少し離れた位置にステラがいる。


「バレンタインキャンペーンですっ」


 にこっと微笑んで危なくないことを表現する。


「ば、バレンタインキャンペーン?」

「ほら、あれ! なんか色々サービスしてくれるってやつ!」

「あぁ、あれか! 俺たちの下にも来るもんなんだなぁ」


 話はどうやらやってきた旅人にも伝わっているみたいで、バレンタインキャンペーンと言葉にした瞬間に把握してくれていた。

 なかなかにこういうのはありがたい。

 笑顔をしっかり維持しながら私は話を続けていく。


「チョコレートをよりしっかり味わいたい方向けに、緑茶のサービスをしています!」

「苦みがあるやつか、なんだか良さそうだな」

「はい、甘いものには苦いお茶。定番の組み合わせです!」


 ……なかなかに店員スタイルみたいなものができているのではないだろうか。

 そう思いながら、接していく。


「お金は取るの?」

「こちら、無償でサービスしています」

「ほんと!? じゃあ、私と彼にひとつずつ!」

「わかりました、こちらをどうぞ」


 そっとこぼさないようにふたりに渡す。

 ふたりのカップルの表情も緩んでいく。


「お二人の旅が、素敵なものになりますように」

「す、素敵なんて、えへへ……」

「どうしたんだ、にやついて」

「な、なんでもない! 次行こ! 写真とかも取りたいから!」

「お、おうそうだな」

「キャンペーンの人、ありがとうございました!」

「はい、いってらっしゃい」


 手を振って見送る。

 ふたりの姿が見えなくなったタイミングで私は一息ついた。


「こんな感じかな」

「なかなかやるわね……人助けセンスは正真正銘の魔法少女級といっても過言ではないかもしれないわ」

「じゃあ、正式に名乗っても?」

「それはあたしが認めない。認めるつもりないから!」

「なかなか辛辣」

「ふん、あたしだって色々できることは見せてやるんだからっ」


 ステラと協力しあいながら、それぞれキャンペーンの手助けをしていく。


「サンドイッチ、食べてみませんか? ベーコンにレタス、トマトが挟まっていてしゃっきりしてますよー」


 微笑みながら宣伝するステラの姿は優しさを秘めていて……


「応援してますよ、うまく行くことっ」


 励ます時は少女らしい等身大のエールを送ったりする。


「おすすめの場所? ここから右に曲がった先の高台がオススメかな」


 そんな、真面目で、やるべきことに熱心な彼女の姿を見ていくことができた。

 ステラもしっかり彼女らしく生きているんだな、ということがわかって思わず頬が緩んだ。






 いくつもの依頼やキャンペーンを達成したのち、私とステラは改めて公園で座っていた。


「臨時のお手伝い、ありがとねリベラ。助かったわ」

「役に立ってたならなにより。ステラも凄かったね」

「ふん、当然よ。魔法少女なんだから」


 そうはっきり言葉にしているものの、少しだけにやけている彼女。

 素直じゃないところもあるけれど、しっかりと褒められて嬉しいみたいだ。


「やっぱりいいね。誰かの力になれるって」

「あんたは、法の力でいつもアレコレしてるんでしょ?」

「必要なときはね。使わない日もある」

「今日みたいな時とか?」

「そうだね、自力で何とかする時もある」


 ルールは捻じ曲げるものではない。寄り添うものだと思っている。

 だから、法を動かすタイミングはある程度考えているのだ。


「そういえば、この街の法って知ってるの?」

「チョコレートの街の法律? こんな感じよ。『我らはチョコレートと共にあり。かの祝福と加護が街を支える力となるだろう』っていう感じ」


 その街の法について考える。

 祝福と加護が街を支える力になる。つまり、街そのものが生活している人に特殊な体質を与えているのだろう。


「チョコレートが生活そのものになるって感じの法なんだ」

「そういうこと。ココアが飲み水になったり、主食がチョコレートになってる街なの」

「なかなかにファンタジー」

「そうね、ちょっとメルヘンチックかも」


 空を見上げながらステラが言葉にする。


「子供のころにみんなが夢見るかもしれない、チョコレートの世界。それがこの街なのかもね」

「実際は食べすぎちゃうと辛いってなっちゃうこともあるのがちょっと寂しいかも」

「でも、素敵な夢を残酷な現実に書き換えちゃうのは悲しいってあたしは思うの」

「だからキャンペーンでみんなが笑顔になるように手伝いをしてたんだ」

「バレンタインだから、特にね。この時期って旅人が集まりやすいみたいだし」


 夢が現実によって上書きされてしまう。

 それは時に辛いことになるかもしれない。だからこそ、夢を綺麗なままに、思い出にする為に頑張る。

 ……うん、なかなかに素敵なことだと思う。


「街の人だって、外の文化に触れて変わることを考えたりもしてる」

「バレンタインっていうイベントを知ったから?」

「そうね。知って、広まったから新しい形を模索してる」

「……新しい在り方を見つけるのは大変だけど、変化していくことは悪いことじゃないよ。少なくとも私はそう思ってる」

「実際、この街でアルバイトしてると新鮮な街の外のことを知って興味を持つ人だって多って感じるわ」

「色々変わっていくんだね」

「文化ってそういうものだからね」


 そこまで言って、ステラはふと思い立ったかのように立ち上がり、私の方に振り向いた。


「そうだ、せっかくだから渡しておくわ」


 懐からチョコレートを取り出して、彼女が言葉にする。


「はい、友チョコ」

「……告白に使うのがバレンタインのチョコじゃないの?」

「それ以外にも想いを伝えるのに便利なの。今日あたしが渡したチョコは交友関係が続きますようにって感じのチョコ」

「なるほど、願掛けにも使えるんだ」

「そういうこと。異世界文化も勉強したらいいんじゃない、リベラは」

「そっちの方にも視野を広げるのも楽しそうだね。……チョコレートはないけど、これをあげる」


 そういって私もステラにちょっとした小物を渡す。


「これは?」

「夜営してる時に作った旅のお守り的なやつ」

「的な……ってなかなかいい加減ね?」

「おまじないだからね」

「おまじないねぇ……」


 くすっと笑うステラ。


「ま、こういうのって気持ちが重要になるわけだし、なかなか悪くないんじゃない? 受け取っておくわ」


 その表情は優しい魔法少女らしい雰囲気になっていた。






「じゃあ、また今度。どっかで会ったらよろしく」

「はいはい、まぁ適当にその時は話でもしようかしら」


 チョコレートの街から抜け出して、新しい旅へと向かっていく。

 まだどこに行くかは考えていない。

 私のペースで自由に歩いていくのだ。


「ファンタジーに夢……」


 素敵な夢として生き続ける街になってほしいな。

 そう思いながら、チョコレートの街から去っていく。


「甘い、幻想になりませんように」


 そう願いながら、貰った友チョコを取り出す。

 星の形をした、素直な形のチョコレート。


「友達チョコレートの味は……」


 口に運び、のんびり味わっていく。


「まろやかで優しい味。手作りならやっぱりステラっぽいかな」


 ミルクチョコレートの優しさを感じる甘さが印象的な味だった。

 ツンケンしていることがあっても、その性根は優しい。

 そんな印象を感じる味だった。


「交友関係も、いい感じに続くといいな」


 そう思いながら、私はまっすぐひとりで進む。

 また新しい出会いや思い出を作る為に。


「さて、次はどこに行こうか」


 旅は自由に、素敵な時間を導いてくれる。

 これからの日々に幸がありますように。

 チョコレートの甘味に想いを馳せながら、私はぼんやりとそう考えていた。

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