放置症
「アナタ、またスーパーの駐輪場に自転車、忘れたでしょう。警備員から電話がかかって来たわよ。呆けて来たんじゃない」
私はブーゲンビリアの太い棘が心に刺さった様な気がした。
焦ってスマホで良い薬はないかと検索した。
「忘れてしまう人・・・」
すると症状によって三種類の薬が紹介されていた。
忘れっぽいのなら成分九種類配合の『ワスレ9』。
早期の痴呆症なら漢方の『茗荷丹』。
鶏症の症状が出てしまうなら『ワスレヘン』。
が良く効くらしい。
症状の違いを選択して行くと、三歩、歩くと忘れてしまう人は鶏症の範疇に入る。
五歩進んで忘れてしまう人は痴呆症。
十歩位、歩いてもしっかり家を覚えいる人はただの『忘れっぽいだけ』に分けるらしい。
したがって私は、忘れっぽいだけの「ワスレ9」を一パッケージ注文した。
暫く、飲んでいたが相変わらず自転車を忘れてしまう。
私は療養所の担当医に診てもらった。
担当医は流行りの『放置症』だと言った。
進行が進むと家までの道も忘れてしまい、戻って来れなくなる。それどころかゴミ屋敷に成るそうだ。
最近、痴呆症より怖い難病の認知症のAクラスに指定されたと言っていた。
私は・・・