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アンパンが怖い

 とにかく、あの頃は苦しかった。

モノみな上がって切り詰めながらの生活だ。

なにか合理的な食生活が出来ないものかと悩んでいた。

この様な時に頼りに成るのは気の置けない友達である。

生活環境や経済的立場も私と同じであった。

その友達を呼んで一晩、安心の食生活に関して議論した。

そして私達はこの結論に到達した。

近くのパン工場で夜八時から翌朝八時までパン製造のバイトをする事だ。

これで食事の心配は完全に消えた。

廃棄のパンがどっさり目の前のコンテナに在る。

深夜のパン製造作業は私達のようなアルバイトばかりである。

ベルトコンベアーが作動し始めるとパン生地キジがコンベアーの上に乗せられ目の前に流れて来る。

それは際限なく流れて行く。

私達アルバイトは必死にパン生地を手で丸める。

息着く暇もない。

休憩は有るが、コンベアーは回り続けている。

深夜は眠気と、パン生地丸めと、コンベアーのスピードとの戦いである。

クルクルとパン生地を丸め、コンベアーの上に置き、またクルクルと丸め、クル、ポン、クル、ポン。

朝日が昇って契約の時間までクル、ポン、クル、ポン・・・。

不出来なパンは好きなだけ持ち帰って良い。

家に戻って、持ち帰ったパンを牛乳で流し込みながらの朝食を摂る。

しかし眠ろうとしても眠れない。

頭の中ではパン生地がコンベアーに乗って私を追いかけて来る。

手はクル、ポン、クル、ポン、クル、ポンと機械の様に手が動いて止まらないのである。

まるで、チャプリンのモダンタイムズの『あの人』の様である。

翌朝、友達に何時に行くかと電話した。

友達は何も喋らない。

 「どうした?」

と聞くと、

 「パンが怖い」

と言うのである。

スーパーに行って『アンパン』を見ると、あの時のトラウトが蘇る。

怖い・・・怖くて眠れない。

私は・・・

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