表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/40

変わり者

 この病院には独居室と云う部屋がある。

孤独が好きな、通称『変わり者』と呼ばれる患者が入る部屋である。

私は生来、閉じこもるタイプである。

一見すると誰が見てもその様には見られた事は無い。

私の風貌(素顔)は大学の教授の様に見えるらしい。

ただ、その素顔はなかなか人には見せた事は無い。

それは常にマスクを着用しているからである。

何故このように成ったかと言うと、長年の閉じこもりと栄養の偏りのせいか前歯が全て抜けてしまったのである。

だから私はいつもマスクと云う仮面を被って生活をしている。

実は私は大の人間嫌いで、某国立大学を卒業して以降、五十歳に成るまで将棋塾で個人講師をしていた。

その頃は家に帰るとお見合いの話しばかりだった。

だから今はこの病院に入って解放された感がある。

要するに、そう云う世の中の面倒くさい事は大嫌いなのである。

この病院は当時、私の身の回りの世話をしてくれた友人から勧められた。

その友人と云うのは非常に話し下手で、人前に出ると赤面してドモってしまう。

彼は昔、大学の同じ将棋ゼミでの仲間った。

その友人も最近、躁鬱病に成りこの病院に入院している。

今は私の隣の部屋で療養している。

談話室でたまに会うと「角」と「銀」の動きに悩んでいるようだ。

陰陽が激しく、私には付いてゆけない。

今朝も「銀が泣いている」と笑いながら廊下を走って行った。

実を言うと、私はいままで自分を変わり者だと思った事は一度も無い。

しかし、私は今居るこの独居室が一番安心できる。

昼間でも暗く、音も聞こえ無い。

この部屋は本人が希望する以外は入居できないのである。

今日で二十日、私は人と話していない。

最近、私には言葉は必要ないと思っている。

たまにドアの格子窓から廊下を覗くと、変わり者達が喋りながら歩いて行く。

私は・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ