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余 韻
誰が書いたのか『余韻』が残っている。
昭和二三年十月一日(水曜日)雨。
秋霖が紅葉の葉を濡らす。
戸籍係の受付に幼児を抱いた女が立って居る。
係りの職員が『戸籍謄本』の写しと『他一枚』を持って来る。
「お待たせしました。ちょっとご確認下さい」
『養子・上野 誠 から 林 誠』
もう一枚は、養護施設の記録簿である。
記録簿・・・。
上野 誠 (上野公園ベンチにて放置、保護する)。
男が待合室の長椅子を立つ。
男の職業は警察官である。。
そして、誠の新しい父親でもある。
「無事に終わったな・・・」。
女は俯いて、
「この子の事は一生秘密にしときましょうね」
で終わっている。
私は・・・