ポリープ
私は大学病院の胃腸外科の医師である。
あの日は午前中と午後合わせて九人のオペを担当した。
気が狂うほど忙しいかった。
サポートの看護婦が、
「ドクター、少し変ですよ」
と言った。
私がこの療養所に入院しても『あの日の事』が頭を離れない。
酷暑の夏。
五人目の患者の内視鏡手術の最中である。
私は妙な事が脳裏を過ぎった。
それはあの日、息子にせがまれてプールに行った時の事である。
息子はウオタースライダーで遊びたいと言う。
息子の名前はヨシオと云う。
ヨシオが先に滑り降りた。
私は上から滑る息子の姿を見守っていた。
下には看護婦の妻がヨシオを待っている。
ところが、息子はいつになっても肛門から出て来ない。
下から妻が叫んだ。
「ドクターッ! ヨシオちゃんが出て来ませんよ」
私はスライダーの中を覗いた。
入り口に沢山の人が詰まっている。
私は常備の下剤をショルダーバックから取り出し、スライダーに垂らした。
最初は二、三人が勢いよく肛門から出て来た。
暫くすると、一気に数十人が出て来た。
? ヨシオはまだ出てない。
下で待って居る妻に叫んだ。
「下から覗いてみろ」
看護婦の妻がスライダーの中を覗いている。
「ドクター、居ます! 大きなポリープに引っかかってます」
「大きなポリープ?・・・癌かも知れないぞ・・・」
看護婦が私の耳元で囁いてた。
「ドクター、ドクター? 大丈夫ですか? 少しお休みした方が・・・」
「うん? 大丈夫だ。続けよう」
私は・・・