マルコ
あれは私が、ガザ地区を放浪している時の事だった。
カーン・ユニスに入った時、イスラエル軍の猛攻撃に遭った。
建物は崩れ、あちこちから助けを求める『声』がした。
放浪者達はバールやシャベルを持って、潰された家から『声』の主を探していた。
私も仲間達に加わり、『声』を求めて潰された家の石を片付けていた。
すると子供の手が見えた。
手は確かに動いている。
生きているぞ・・・。
私は大声で『手』の主に声を掛けた。
「今、助けてやるぞーッ!」
手の奥から
「マルコーッ」
と言う声がした。
この瓦礫の下に『生』がある。
すると誰かが、
「無人機が来るぞー」
と叫んだ。
私は『生』を放っといて一目散に穴の中に避難した。
暫くして穴から出て、あの『声』の場所に走った。
崩れた家はそのままだった。
犬が必死に『手』の周りを掘っている。
シャツを着た男の子が見えてきた。
犬はシャツを歯で噛み、必死に引っ張り出そうとしている。
私も急いで周りの瓦礫を退かしていた。
するとまた、
「無人機が来るぞー!」
と言う声が聞こえた。
私はまた急いで避難した。
もの凄い爆発音がした。
硝煙が落ち着いのであの場所に走った。
そこには片足を飛ばされたあの犬が必死に男の子を引っ張りだそうとしていたのである。
私も急いで瓦礫を退かし、ようやく男の子をそこから出た。
男の子は亡くなっていた。
片足の犬は男の子の顔を舐めていた。
私は・・・