サピエンスを飼う
私はサピエンスと謂う生き物を飼うために、浅草の人間問屋から大き目の水槽を購入した。
サピエンスはそこの人間問屋の主人に勧められたものである。
この生き物は非常に獰猛で、たえず闘う相手を求めて集団で行動する習性だそうた。
雑食で現在においては地球の頂点に君臨しているらしい。
水槽には水は入れず、ただの鑑賞用である。
とりあえず、コーカソイド種(白)・ネグロイド種(黒)の二種類を男と女、合わせて十匹ずつの二十匹を購入して空水槽の中に入れた。
・・・なんとか増殖させて闘う所を観てみたい。
空水槽の中は最も地球に近い景観と環境を創り、新鮮な酸素を絶えず送り込んだ。
七日経って様子を観ると増えている。
増殖は成功した。
白人種と黒人種で餌を平和に食べている。
白人と黒人は合わない(喧嘩する)と問屋の主人から聞いたが、そういう様子は今の所は無い。
一つ月して様子を観た。
更に増えている。
今日、ポストを覗いたら人間問屋から『モンゴロイド種(黄)とオーストラロイド種(褐色)が入荷! キャンペーン中』のハガキが入っていた。
急いで二種類を男・女で計二十匹を購入。
空水槽に入れた。
水槽の中は非常に賑やかに成った。
それからまた七日、経過した。
増殖はますます成功している。
しかし増殖し過ぎたせいか、水槽の中で戦いが始まった。
「おッ、やっとるぞ。コレだ!」
観てると非常に面白い。
手や足を失ったサピエンスも居る。
私は病院の形の小さな箱を作って空水槽の中に入れた。
翌日、水槽の中の病院を観て見ると治って出て来たサピエンスがまた戦っている。
朝起きて急いで水槽を見ると、沢山のサピエンスが死んでいる。
しかしサピエンス達の増殖は止まらない。
増殖したサピエンス達は直ぐに訓練を受け、戦いに交わって行く。
あれから半年経った。
まだ西と東で戦っている。
食料を潤沢に与えているから、食料の争奪戦では無いようだ。
どうやらサピエンス達は、戦う事を生き甲斐にしている様である。
「このままでは死体を片付けるのが大変だ。そうだ! 新しい種類の水槽に入れ変えたらどう成るのだろう」
最近、人間問屋に高額な『文明』と謂う名前の水槽が売り出されている。
アレに変えたら、何か変化が起こるかもしれない。
私は早速、カードで水槽を購入した。
そしてサピエンス達を『文明水槽』に入れ替えた。
繁殖に関しては異常はないが、遺伝子が変わったせいか、今のところは平和を取り戻している。
しかし奇妙な事に『性』が偏り始めた。
ほとんどのサピエンスが『中性』に変化したのである。
大人しく、非常にお洒落な模様のサピエンスに変わったのである。
いつまで続く事だろう。
??? また、増殖を始めたぞ?
私は・・・