嫁を自慢しあうスレッド
嫁はしばらく出ませんし、スレッド形式でもありません。
おれはもう寿命だ。
娘と息子を一人ずつ育て上げた。
孫もいる。
妻だけがいない。
参考映像:オーバーザトップ
もう一度妻に会いたい。
語り合いたい。
抱きしめたい。
叶わないが。
病院のベッドの上。
家族は全員そろっている。
昨日から夢心地だ。
このまま穏やかに死んでいくのだろう。
意識が遠のく。
目を開ける。
血の匂いがする。
吐血したか?
体に力が入らない。
死にかけだな。
体に「気」を通す。
とりあえず脳に血液を送れ。
「気」で心臓を叩く。
生に未練がなくても、失いそうになると足掻く。
生き物の性だな。
どのみち明日をも知れぬ命なのだが。
右足が痛いな?
顔に白布が掛けられている。
一回死んだのか?
参考文献:狂乱令嬢ニア・リストン
身じろぎしてみる。
なんとか動く。
邪魔な白布を取り去って、さて。
お爺ちゃんだ!
祖父の夢は初めて見る。
祖父は目を見開いて、
「孫が!孫が生き返った!先生!先生!来てください!」
ドアが開いて医師と看護師らしき連中が入ってくる。
看護師は脈を取り、医師は目玉に懐中電灯をあてる。
「信じられないが蘇生しています。心停止が5分以上経過したのに・・・」
おい、藪医者。
心停止5分くらいで諦めちゃいかんじゃろ。
祖父は私を抱き上げてかいぐりかいぐりしてくる。
お爺ちゃんの匂いだ!
夢で匂いを感じるのも初めてか?
祖父はもう一度ぎゅっとすると私をベッドに降ろして、
「もう、お休み。」
目が覚めた。
状況は同じ。
ふーん。
手を見る。
小さい手だ。
しかし、
「光ってる?」
薄ぼんやりと白く。
さて、手術があるらしい。
右ひざが砕けて大きめの裂傷。
ついでに頭を打ったと。
裂傷は処置済み。
まず、ひざの骨を接ぐ。
右ひざに「気」を集める。
骨の継ぎ目に集中して。
一週間ほどでつながるだろう。若いし。
医者は右足を切断すると言ったらしい。
もちろん祖父は猛反対。
当たり前だ、藪医者。
たとえ棒きれでも有ると無いじゃ大違いだ。
退院。
3か月間寝たきりだったので、怪我の影響もあって歩くのが難しい。
でも、頑張って歩く。
あぁ、もう認めた。夢じゃない。
誰かが2回目の人生をプレゼントしてくれたらしい。
孫の見ていたアニメでは転生する時に神っぽい奴が出てきたが、そういうイベントはまだ無い。
入院期間が入学式を跨いだのは記憶の通り。
さて、2回目の小学生だが、特に感慨はない。
みなし同級生たちがやたらに可愛いくらいか。
体が光ってる件。
これは「気」だな。
試しに引っ込めてみる。
よしよし。
次に思い切り膨らます。
体の3倍くらいが限界か。
修行が捗るな、これは。
参考文献:HUNTER×HUNTER
祖父が亡くなった。
肺がんだった。
おれの退院からちょうど一年後だった。
そうなるとおれの身の振り方が問題になってくる。
ずっと女中さんの世話になっているからな。
というわけで、祖父の娘3人が集まった。
「どのおばちゃんのところがいいかな~?」
そう言うのは勝気な顔をした美人さんだ。
西洋風ともいう。
実母である。
実父は顔も名前もしらない。
興味がなかった。
シングルマザーになって、姉におれをあずけて働いていた。
再婚して、子供が二人。
わりと若くして亡くなった。
交通事故だった。
当然そんなことは知らないはずなのでだんまりだ。
申し訳ないが、ここは無い。
メンタルが弱いうえに金にズボラ。
おれの分の遺産を使い込んでルビーやらコートやら買いこんでいた。
おれは祖父の養子になっているので分与権が発生している。
「お姉ちゃんのところがいい。」
2歳くらいまで世話になっていたところだ。
5歳上のやたら頭がいい男の子と、やたら顔のいい7歳上の女の子がいて、郊外の一軒家に住んでいる。
犬が一匹。
お前は2歳のころのことを覚えてるのか、って言われても。
驚いた。
目の前に前世ではいなかった年下の従妹がいる。
時間が巻き戻ったのか、別世界に転移したのか気になっていたが、これですっきりした。
娘、息子や孫が無かったことにされるのは耐え難い。
子供のころに飼っていたバカ犬も。
ともあれ初登校だ。
従兄とおれ、2人で20分ほど歩いて小学校に行く。従姉は中学生だ。従妹は幼稚園。
ある日、下校中におかしなものを見つけた。
それは光っていて、ぶよぶよした見た目。
前世知識で言うとゲームのスライム。
参考映像:DRAGON QUEST
光は…私と同じような光だ。
しゃがみこんでつついてみる。見た目を裏切らない感触。
「どうしたの~?むし~?」
従妹が同じようにしゃがみこむ。
従妹には見えないようだ。
それをきっかけにしたように、それは指に吸い込まれるようにして消え去った。
「にいちゃ、ぴかってひかった!」
それは見えたのか。
従妹の頭をなでなでして帰路につく。
小学生とは存外暇だな。
前世では一日中バカみたいに走り回っていたが。
2周目ともなるとそうそうバカは晒せない。
叔母は怪我の影響かと心配する。
ちなみに叔母は純和風である。
ちょいポチャでのんびりしている。
けっして別嬪さんではないが、愛嬌があふれだしている。
叔母を選んだ叔父は慧眼を誇っていいと思う。
もうあれでいいや。
庭で合気道の稽古をしよう。
祖父に習っていたのは叔母も知っている。
かなり激しく動く流派だから30坪ほどの庭を目いっぱい、縦横無尽に移動する。
おっと、芝生を傷めないように。
バカ犬が追い付こうと飛びついてくる。
稽古相手にちょうどいい。
こんなやつでも身体能力は人よりもかなり上だ。
他人が見たら大型犬が幼児を襲っているようにも見えるか?
やさしく捌きながら引き離す。
30分ほどでバカ犬の体力が切れる。
よしよしとなでながら稽古終了。
中学生になったからクラブ活動を選ばなければならない。
前世では帰宅部だったが。
もう決めている。
柔道部。
前世では何十年も合気道の修行をしていたので応用がきく。
無事、柔道部に入部した。
最初に正直に言っておく。
3歳から合気道をやってます。
「演武のようなものがあったら見せてもらえるかな?」
はい、喜んで。
3歳から合気道の修行をしているのは本当。
ただし前世から。
祖父に奥義まで伝授された。
断じて5歳児に仕込むものではない。
まあ、お爺ちゃんが喜んだこと。
「ちょっと学生のレベルじゃないな。」
「柔道でもいきなり全国大会を狙えるよ。」
「思っていた合気道とは違うな。もっと動かないものだと。」
その全国大会。
市大会で団体は一回戦負け。
軽量級個人戦で優勝。
県大会で軽量級個人戦優勝。
全国大会で軽量級個人戦優勝。
という、あっさりした結果に終わってしまった。
ライバルが現れるとか思ってないですよ?
中学生あいてだし。
「予想はしていたが、まさか1年目からとはな。」
先生、彼らには小ズルさが絶望的に足りません。
「わかるけど、言い方には気を付けような。あと、よそでは言わないように。」
妻に会いに行こう。
財布には小遣いが丸々残っている。
ちょっと遠いが妻の実家に行ってみよう。
電車に乗って、乗り換える。
県境をまたいで妻の実家がある街に到着。
公衆電話を探す。
赤いやつだ。
懐かしいな、おい。
ちなみに3分10円。
まず妻の実家に電話。
不在とのこと。
妻の実家まで歩く。
妻は今、大学生のはず。
姉さん女房である。
文系だったから帰りはそんなに遅くならないだろう。
妻の実家にタッチして、駅まで逆戻り。
駅で待つことしばし。
妻だ。
記憶より若い。
妻と出会ったのが25歳だったから今から13年後。
まったく偶然に出会った。
涙があふれる。
通りすがりの人が心配げな顔をしているが、放置で大丈夫です。
声はかけない。
妻はナンパじみた真似は嫌いだった。
帰宅して夕食。
バカ犬の散歩。
起床、バカ犬の散歩。
朝食。
バカ犬を振り切って登校。
最近は庭の塀を飛び越えて追ってきやがる。
高さが2mほどあるんだが…
おまえ、保健所の怖いおじさんに捕まるよ?
余裕で逃げ去りそうではあるが。
バカ犬とはいえ、その辺のやつより知能が高そうに思えるからな。
もし発覚して保健所の職員が家に強襲を仕掛けても、叔母がいつもの『ほほほ』で撃退する様子がまざまざと目に浮かぶ。
おはよう。
おはよう。
おはようございます。
授業は一度やったことだから当然ながら問題ない。
なんなら教師の代わりをしてやってもいい。
さて、これからどうするか。
これが現実だとすると、やることはひとつ。
妻を幸せにする。
何が必要か。
まず金。
金で大概のことは解決する。
とりあえずバイトを探す。
中学生のバイトは限られるな。
新聞かな。
新聞配達に出発。
バカ犬も付いてくる。
邪魔だからリードは無し。
早朝だしね。
体も鍛えられる。
妻を守るために体力は必要だ。
2年ほどで何十万円程度にはなるだろう。
高校生になったらもう少し割のいいところに鞍替えする。
新聞屋の店主は
遅れることもないし、
誤配も抜けもない。
おまけにやたら早い。
こんな中学1年生は初めてだ。
たぶん、お褒めいただいた?
叔母はおれがぜんぜん勉強しないのを訝しがっている。
超頭のいい従兄を育てているくせに。
彼は授業中に後ろの席のヤツと後を向いておしゃべりしていて、教師にあてられて普通に回答したという伝説を持つ。
教師からは,他のやつが真似をするからやめてくれと、頼まれたという。
と、叔母が楽しそうに話していた。
さて、全国大会の季節です。
特に出る気はなかったけど、顧問の先生が
「君を目標に厳しい練習に耐えている子がたくさんいるそうだ。彼らの期待に応えてはくれまいか?」
そう言われるとね?
全国大会の決勝戦。
レベルはかなり上がっている。
目標があるって素晴らしいな。
はじめ、の号令。
いきなりタックルにきた。
いいタックルだ。
ラグビーでもやっているのか?
おそらく寝技に持ち込みたいのだろう。
去年から立ち技しか見せてないし。
というか、まともに組んでもいない。
すり足で移動。
足の動きが速すぎて残像みたいになっていると言われた。
『パタリロって漫画かアニメを見ればよくわかると思う。』
少女漫画らしいが、カッコつけてる手前、ちょっと外聞が…
参考文献:パタリロ
『あとふたりいたらジェットストリームアタックが完成するのに…』
参考映像:機動戦士ガンダム 哀・戦士編
残念そうに言うが、そのジェットストリームなんたらがわからん。
よくわからんけど、一緒に稽古する?
自分ではわからんのだよ。目が良すぎて。
ビデオに撮ってもらうか?
後から襟を片手でひっつかんで裏投げ。
「いっぽん!」
2本目。
さらにタックル。
すこしフェイントがはいる。
順応がはやいな。
上から首をかかえて、ブリッジする。
勘違いしていた。
こいつはおれにぶち当たって吹き飛ばすつもりらしい。
「いっぽん!それまで!」
表彰台でヤツが話しかけてくる。
「柔道は長いの?」
柔道は去年からだけど、3歳から合気道をやってる。
「あれは合気道の動きだったのか!」
「この話はみんなに共有してもいいかい?」
全世界に広めてください。
「しばらく合気道の道場が忙しくなるな。」
君はラグビーを?
「あれだけでわかっちゃうんだねー。」
「ニュージーランドに留学したいと思っているよ。」
「中学のクラブじゃラグビーがないからね。」
「地元のクラブチームに入ってるよ。」
彼は笑って言った。
高校生になってからのバイトは製図工に決定。
一枚仕上げていくらだから効率がいい。
製図台があれば自宅でも可能。
前職がそうだったからね。
仕事ではほぼCADだったけど、学生時代はガチャンガチャンとドラフターを振り回していました。
これで年収百数十万程度にはなる。
時々、妻の様子を見に行く。
相変わらず美しい。
予定通りの企業に就職したらしい。
製図のバイトの傍ら、パテントの図面と文書を作成する。
前世でパテントを取得した、まだ世の中に無い製品。
あらためて取得したパテントの文書と試作品を覚えのある、というか前世の勤め先に送る。
義理を欠いてはいけません。
50年くらい早いけど、どうってことは無かろう。
階段を昇る機械なんですけどね。
試作品は出入りの大工さんにお願いしたけど、驚いたことに可動部まできっちり作りこんできた。
『ぼんは頭がいいな』
いや、あんた指先に切削工具とか仕込んでない?
旋盤とか。
フライスとか。
格安で作っていただきました。
資金が潤沢になってきたので株を買う。
アメリカのIT企業の卵。
これで10年後には億万長者が確定した。
高校2年生の全国大会軽量級。
決勝でタックル君と当たった。
彼との対戦は準決勝、準々決勝を含めて計4回。
彼は3年生なのでラストチャンスだ。
いきなりタックルが来る。
最近は前後左右にフェイントを入れてくるのでかなり読みにくい。
人間としては上位数%に入る逸材だ。
参考文献:アスリートな動物図鑑:驚きの身体能力!
片袖を取り、身をすっと引いて隅落とし。
いわゆる空気投げです。
「いっぽん!」
2本目
タックル君のフェイントに次ぐフェイントで3分ほどの時間を消費した。
おそらく、ヤツの体力も。
だが、タックル君は息が荒いものの、まだまだ元気だ。
びしっ
そんな音と共に意外な速度と角度でタックル君が突っ込んできた。
そして、体が浮いた。
やっとつかまえた。
右足を代償に数%の速度を稼いでみせた。
ヤツが技の掛かりにキラッと光ることに気が付いたことが大きい。
わけがわからないが。
この魔法使いのような男を相手にするには、人の力を超えていかなければいけないと、数年前からフェイントのパターンと共に仕込んできた一発勝負だ。
ヤツの背中が畳を叩く。
長かった。
参考映像:機動戦士ガンダム
思わぬ弱点
「いっぽん!」
「うおおおおおお!」
気が付くと立ち上がって雄叫びをあげていた。
ヤツもキックアップするなり俺の右手をつかんで持ち上げた。
すると右足の痛みが、すっと薄れていった。
この男は本当に所作が美しい。
「君は本当に魔法使いなのかい?」
ヤツは薄っすらと笑っただけだった。
僕は悪い魔法使いじゃないよ?
参考映像:DRAGON QUEEST
「オリンピック強化選手のオファーを断り続けてるそうだけど、なぜだい?金メダル候補だろう?」
僕はやることがあるので。オリンピックは君が行けばいい。その資格があることを、たった今、僕に証明した。
君は留学かい?
「ああ、今日で目標達成ができたからね。」
「ニュージーランドからも君のことを見ているよ。」
妻の見守りが第一重要案件なんですよ。
さすがタックル君、察しがいい。
参考文献:1・2の三四郎、コータローまかりとおる
参考映像:柔道一直線
進学先は文系にした。
理系は実験やらなんやらでやたら忙しかったからな。
妻を見守るためにそんな無駄な時間を使うわけにはいかない。
合気道の道場に通う。
天才だと言われる。
全国大会の放送を全部見ているらしい。
合気道の宣伝になるらしい。
だからと言って、道場で流すのはどうかと思う。
すいません、前世で何十年も修業したんですよ。
若いと体の切れがいいし。
山で寸勁と指弾を試す。
前世で習得済み。
そこそこの大木に向かい、掌をあてる。
地を蹴り、関節にその力を伝える。
ずん、と木が揺れる。
ポケットの硬貨をジャラっと握りこむ。
中指で硬貨を弾いて飛ばす。
木に硬貨が半分くらい刺さる。
金槌で叩くくらいの威力だな。
参考文献:狼男だよ
大学は地元の国立大学の英文学科を選んだ。
インド哲学という学科も面白そうだけど、僕はスクエアに割り切る考え方しかできないから哲学、宗教は敷居が高い。
参考文献:インド哲学 七つの難問
妻が海外事業担当なので、同僚ポジ狙いだ。
今生では偶然に任せるつもりは全くない。
光っている人を見つけた。
自分以外では初めてだ。
ちなみに他の人は私が光っているとは思っていないようだ。
雑踏の中、距離20メートル。
目が合って。
二度見された。
あれ、消えた?
「少佐殿、麻布で未確認の覚者と遭遇しました。
黒髪黒目、身長175cm、20歳前後、細見、白いシャツ、黒いズボン、黒縁メガネ、特徴のない、いわゆるいい男です。対応の指示を願います。」
「少佐だ。離脱したのか?」
「即時に離脱して現場からの距離500メートルです。」
「大まわりで帰還しろ。帰還次第モンタージュを作成する。以上。」
「了解しました。」
「少佐だ。麻布に未確認の覚者が現れた。一分隊で捜索しろ。確保の必要はない。特徴は・・・
参考映像:スパイ大作戦(テレビドラマ版)
東京にいきなり20歳前後の覚者だと?
通常、国外の覚者は誘拐を恐れて国境線から出てこない。
どうなっている?
人間が消えるわけないわけで。
視線誘導の向きがこっちだからあっちと。
そこの路地だな。追いかける前に光っているのを消して。
うん、消せるんですよ、これ。
ちょっとだけ維持するのが面倒なだけで。
伊達メガネを外して、シャツは脱いで黒ティー、黒パンツ。
シャツは捨てちゃおう。
いきなり発見した。盛大に光っているからね。
面白いことになりそうだ。
あ、地下鉄ですか。この時代はいちいち切符を買わないといけないのが面倒ですね。
どこに行くかわからないので都内の最大料金を買う。
改札のおじさんにパチン、ってしてもらう。
ヤツはパスを持っている、と。
真昼間にパスで改札を通る職業・・・
営業マンかな?
はい、乗り換えですね。
ぐるっと回ってきましたけど尾行を警戒しているんでしょうか。
大きめのビル一棟に、「光子力研究所」。
ふざけてるのか?
てか、怒られない?
マジンガーℤでも開発しているとか?
喫茶店で出待ちしましょうか。
参考文献:マジンガーZ
二時間ほど出待ちして、光ってない事務のお姉さんぽいのが一人。
光ってないおじさんと、光ってる、さっきとは別のお兄さんが車で出ていく。
「光子力研究所」に関しては興信所に依頼しましょう。
このあたりだと…うどんでも食べていきますかね。
最近、発見したんですよ。
さぬきうどんのおいしい店。
本場香川で10年以上修行したそうです。
柔道の重量級で活躍した人で、生地を踏む必要がない。
都内で店を出すには必須のスキルですね。
僕のことを知っていました。
サインを求められて若干、困惑。
参考文献:美味しんぼ
参考音声:続・麵通団のUDON RADIO うどラジ!
「少佐だ。該当者一名を確認。捜索部隊の二名が張り付いている。捜索部隊にモンタージュを配布してくれ。」
「捜索部隊から報告。目標はこの建物の前にいるそうです。」
「中尉がつけられたか。防犯カメラの映像を出せ。」
「基地前の喫茶店に入りました。」
シャツを脱いで眼鏡を外したか。
しかしその目立つなりで中尉に気づかれずに尾行しただと?
そこまでのぼんくらではないはずだが。
「店を出ました。」
「よし、身元を洗え。」
二人付いてきますね。
撒いちゃいましょうか。
正体不明のやつらに家を知られるのも嫌ですからね。
「撒かれただと?はたちそこそこの若造にお前らが?」
どうなっている?
「身のこなしが達人のそれです。」
「何十年も修業したような。」
「気配を消して天井を走ったとしか思えません。」
晩御飯はなにかなぁ。
興信所から報告。
何をやってるところなのか、さっぱりわかりません、か。
資金関係って追えます?
大丈夫と。
じゃあお願いします。
山に来ました。
いやぁこっちに来てからものすごく体の調子がいいんですよ。
忍者漫画の主人公かってくらいに地を走り、木々を渡り、
谷を越えですよ。
これはもう、オリンピックで盛大に全種目優勝できるんじゃないですかね。
今日もどーんと行きますか。
「東京のすべての駅のカメラ映像を廻してもらえ。立ち回り先を洗う。」
「時間が掛かる?」
「急がせろ。大至急だ」
呑気なものだな。
東京が戦場になるかもしれんというのに。
たまたまひとり見つけたが、何人いるかもわからん。
目的もわからん。
隣国との関係は悪くないはずだが、独裁国家の考えることなどわかるはずもない。
警戒すべきは覚者の誘拐だ。
それが子供だと最悪の結果になる。
『よその国の覚者とお話がしたいな』
『覚者って物知りだからいろいろとお聞きしたいです』
ぞっとする。
我が国の予見された災害をあの国に知られるなど。
しゃべるつもりが無くても聞き出す方法はいくらでもある。
即刻、国外にたたき出す。
最悪、殺害してでも。
あの人は今日もいるかな?
駅前のオープンカフェで本を読んでいるあの人。
毎週金曜日の帰り道。
すらっと長い足を組んで物憂げにページを繰る。
白くて長い指が素敵。
もうすぐ横を通る。
気付いて欲しいけど、気付いて欲しくない。
お知り合いになるにはどうすれば・・・
「失礼」
体がフワッと浮いた。
ドン!
眼下でトラックがカフェの壁に突き刺さっていた。
お姫様だっこされてる!
彼に!
彼に!!
「目立つからとりあえず降りますね」
フワッと飛んでストっと降りる。
目の前に2メートルくらいの高さのトラックがある。
え、あそこから飛んだの?
と言うか、あそこに飛び乗ったの?
だっこから降ろされた。
参考映像:スパイ大作戦(映画版)のどれか。たぶん。
もやもやする。
「痛いところとかありませんか?急に動いたから関節に異常があるかもしれません。」
ふるふる
首をふる。
この一生に一度の大事な時に、緊張しすぎて声が出ないなんて!
「もしもなにか異常がありましたらこちらに連絡をください。」
さらさらと電話番号と名前をメモに書いて私に渡す。
奇麗な字。
お名前と電話番号をゲット!
「じゃあ私はこれで。」
私はだまって頭を下げる。
『僕』っていうかと思ったのに。
「私」もかっこいいけどね!
「少佐殿、あの男すごいですよ!小柄な女性とはいえ、人間ひとり抱えて垂直飛び2メートルですよ!豹並の運動能力がありますよ!」
「落ち着け。なにがあった?」
「カフェに車が突っ込みまして。そこにいたヤツが歩行者の女を横抱きにしてジャンプ。映画みたいでしたよ。」
「車のナンバーは控えているか?」
「もちろんです。」
「運転手は?」
「警察に持っていかれました。」
ふん、そっちは警察にあたるか。
興信所から連絡。
どうやら政府系の組織らしい。
政府系にしてはふざけたネーミングだな。
もし、会うことがあったらマジンガーℤの件は必ず聞かないと。
というか、もう身ばれしているな。
組織の力を舐めちゃいけません。
ヤツの監視者を介してヤツから連絡がきた。
監視が鬱陶しいのでお話をしましょう、だと?
日替わりで出している監視に気づいて、そいつに伝言をわたすか?
ヤツの家は普通。
大手企業のサラリーマン社長を務める叔父と専業主婦の叔母。
従姉がひとり、従兄がひとり、従妹がひとり。
老犬が一頭。
大学は国内随一の国立大学の英文科の2回生。
成績優秀というより歴代随一だという。
合気道は免許皆伝。
「私の免許皆伝なんておこがましい限りなんですがね」
とは道場主。
中学、高校と柔道の全国大会で6連覇。
会社をひとつ経営している。
事務員がふたり。
高校生の時に取得したパテントの収入とアメリカのIT企業の株の運用。
とんでもない資産額になっている。
彼女がひとり。
一般企業の事務員。
このあいだ助けた子か。
手が早いな。
彼女の家も普通。
サラリーマンの父親と専業主婦の母親。
弟がひとり。
今日は金曜日なのでいつものカフェで出待ちしています。
声をかける口実が偶然、手に入った。
しかし今世も偶然だよりか。
会社勤めはしなくて済みそうだけど。
「先日はありがとうございました。動転してろくにお礼も言えなくて・・・」
「命の恩人なのに・・・」
いえいえ、そんな大げさな。
僕はあなたを守るって決めているいんですよ。
まぁ、お座りください。
お飲み物はいかがです?ここのおすすめのダージリンのミルクティーはそこそこいけますよ?
あなたのことはなんでも知っているんですよ。
それからお互い自己紹介
そして週末のデートの約束。
真っ赤になっちゃって可愛い。
今日は待ちに待ったデートの日です!
二日しか経ってないけどね!
彼が車で迎えに来てくれて、両親に
『お嬢さんをお預かりします。必ず無事に連れて帰ります。』
だって!
両親はどう見ても、あっけに取られていた。
『娘をよろしくお願いします』
車は高そうな外車で、後でお父さんに聞いたら、
『メルセデスのエステートだね。趣味がいい。』
さすが会社経営者!
デートコースは都内の公園を散策しながらおしゃべりをして、お昼はイタリアンのランチを頂きました。
ミートボールのトマト煮がおいしかったです!
午後は美術館で名画の鑑賞です。
彼の絵画の解説を聞いていたら、隣で聞いていたおじいさんが、
「素晴らしい!お若いのに実に含蓄が深い。私はこういうものですが、ぜひとも連絡先を教えていただきたい。」
名刺交換と相成りました。
「ほう!お若いのに会社経営ですか!弊社にスカウトしたいところですな!」
おじいさんは大企業のオーナーさんでした。
夕食はフレンチのコースです!
コース料理なんて食べたことがないので、お作法を尋ねてみたら、
『シルバーを外側から使うくらいですよ。あ、フォークナイフのことです。』
このちっちゃいスプーンは?
って思ったけどさすがに恥ずかしくて、聞けなかったの。
デザートのバニラアイスクリームに使いました。
今日は光子力研究所にお邪魔しております。
光ってるおじさんが少佐。
光ってるお兄さんが中尉。
こないだのお兄さんである。
あんたら軍人か。
マジンガーℤは関係なさそうだな。
運用している可能性はあるか。
あとで聞いてみよう。
「色々と失礼をした。」
と、おじさん。
「異例なことだったので過剰反応をしたかもしれん。」
「通常、覚者、光っている人間は生まれた時から光っているので全員の所在を把握している。」
「君の場合はいきなり成人の覚者が街中に現れたので他国の工作員の可能性があった。」
「すでに君の素性は判明しているので監視の必要はないのだが・・・」
「君の持つ力が異常、いや異例だったので観察させてもらっていた。」
覚者の発見はどんな風に?
「小学校1年生のクラスをまわる」
「人数が少ないから時間がかかってな。」
ああ、それで。
僕は入院していてさらに転校しましたから。
「我々は予知能力と優れた身体能力を持って生まれてくる。」
「おおよそ80年後までの大事件と災害はあらかじめわかっている。」
「身体能力は全員オリンピックメダリスト級だ。」
「なぜか怪我をしやすいので運動は推奨していないが。」
「しかし君はそれを遥かに上回る力を持っている。」
「君の持つ数件の特許は思いもよらない着眼点と目を見張るような解決策が提示されていたらしい。」
「企業の担当者は高校生がこれを考えたのかと驚いたそうだ。」
「君の持つ株式にしても、取得時には海のものとも山のものともわからないものばかりだ。」
「それが後に急成長を始める。」
「我々は君が高精度の予言を行ったと確信している。」
「身体能力に関しては最低限、豹の成獣並だと考えている。」
百年を超える修行の成果かな?
そういえば全力を出したことは無いなぁ。
全力を出すとたぶん骨が砕けると思う。
「気」で骨の強化、できるのかな?
「おれはまんまと尾行されたことに納得がいかない。」
今度はお兄さん。
「そんなビカビカ光ってるヤツを見逃すとは思えない。」
よっぽど悔しいらしい。
種明かしをしてあげましょう。
それはこういうわけです。
光を消してやる。
消すというか体内に引き込む感じだけどね。
「「…」」
練習したらできるんじゃないですかね?
「…後でコツを教えてくれ。」
もうひとつおまけ。
あの花瓶、貰ってもいいですか?
「構わんが?」
じゃあ
指先から「気」を込めた光の鞭を伸ばして、花瓶を一気に貫く。
ビシッ
花瓶が砕ける。
暗殺にぴったりですね。しませんけど。
これも達人クラスの武術家ならできるんじゃないかと。
「「…」」
「残念ながら我々の中には該当者はいない。」
「日本国内に君を入れて12人しかいないからな。」
一千万人にひとりか。
じゃあ全世界で500人くらいですか?
「そう認識しているが、実数は不明だ。」
「各国で極秘事項になっている。もちろん我が国でも。」
「我が国の災害予定など他国に知られたくなどないからな。」
マジンガーℤのことを聞く雰囲気じゃないな。
中尉さんは一月ほどの修行で光消しを習得しました。
彼らと話してわかったことがひとつある。
おそらく覚者は記憶喪失の転生者だ。
赤子の脳に情報が入りきらないんだろう。
自分のことは覚えていない。
しかし前世で印象に残ったことは覚えている。
80年先までというのは今いる覚者の寿命なんだろう。
身体能力に関してはおそらくリミッターが切れていると思われる。
いわゆる火事場の馬鹿力。
参考文献:HUNTER×HUNTER
冨樫さん、元気にしているかな・・・
おっと覚者発見。
こっちにくるね。
用事かな。
日本の人じゃないね。
「失礼。君に興味があってね。」
「別に怪しい者じゃない。」
「ご覧の通り、君の同類だ。」
日本語がお上手ですね。
「訓練されるからな。」
「君が武術の達人だと聞いてね。」
「確かめに来た。」
「私は主に少林拳を修めている。」
僕は合気道と柔道のミックスですね。
「君がよければ、手合わせして戴きたいのだが。」
ちょっと聞いてみますね。
少佐に無線連絡。
これは借り物だけど技術がすごい。
前世の折り畳み携帯電話ほどの大きさ。
双方向通話。
通話品質良好。
だけどすごいのはそこじゃない。
日本全国どこでも通じるらしい。
要するに日本全国に携帯電話の基地局なみに基地があるということ。
覚者関連は力の入り方がすごい。
ちょっと場所を借りたいんですが、いいですか?
道場なんですけど。
「ずっと空いているから構わんよ。」
「お相手は誰だね?」
外国の覚者です。
「工作員かね?」
さぁ?
かなり出来そうですけど。
「見学させてもらっても構わんかね?」
どうぞどうぞ
「じゃあ待っているよ。」
道場で対峙。
間合いは一間。
ふっと突いてみる。
右にかわしながら回し蹴りがくる。
それを掌で受けて投げに入る。
1時間ほどの軽い攻防。
参考文献:コータローまかりとおる
そろそろいいだろう。
軽く「気」を込めて光の鞭を飛ばす。
さすがに避けるね。
「それは五十歩百歩拳!」
「ちがった、百歩神拳!」
「その若さでよくぞ高みに至った。」
参考文献:マカロニほうれん荘
互いに礼。
中国風のあれです。
夕食に招待しました。
四川料理のレストラン。
僕がオーナーです。
翌日、ご機嫌で帰っていきました。
私もその高みに至ってみせると。
そのために見せてくれたのであろう、と。
妻と結婚しました。
僕は学生結婚です。
結婚式ではぐちゃぐちゃに泣いていました。
実にかわいらしい。
結婚式は小さなホテルを借り切って盛大に。
僕がオーナーです。
あらかじめ、バーテンダーにはボーナスを出しています。
坊さんは呼んでいません。
参列者の皆様にはお泊り頂いてお楽しみいただきました。
僕の友人たちは朝まで飲んでいたようでバーには変死体がごろごろ転がっていました。
お互いの友人同士新しいカップルもできたようです。
なんともおめでたい。
友人曰く、
『持つべきは金持ちの友人。』
だそうです。
僕は妻とちゅっちゅしていました。
新婚旅行はそこそこ豪華な客船でヨーロッパ周遊です。
ヨーロッパの人たちはのんびりしていていいですね。
それでも、のんびりしきれない人もいるようで、甲板に銃を持った人が10人ほど現れました。
乗客に部屋に戻れと促しています。
とりあえず顎に「気」をフック気味にあてて気絶させます。
銃は海の中へぽいぽい。
まず操舵室に向かいます。
置いていくと危険かもしれないので妻も連れていきます。
僕のうしろが一番安全ですからね。
途中で出くわした賊も以下略。
操舵室では船長以下全員が射殺されていました。
賊は以下略です。
次は機関室に向かいましたが、同様のありさまです。
ホールで乗客が人質になっていましたので以下略。
「気」を膨らませて船を覆い、銃器を探しましたが、目の前にあるもので終わりのようです。
操舵室から無線で報告して終わりです。
参考文献:HUNTER×HUNTER
ヘリでお迎えが来ました。
隊長さんは白人の覚者です。
「中国の友人が、日本にやたらと強い武術家がいると言っていたが、君のことかな?」
共通の友人ですね。
「五十歩百歩拳?いや百歩神拳という技を君に魅せられて、修行中だと言っていたが、私にも見せて貰えないだろうか。」
こんな感じです。
「ふむ、努力次第では私にも再現できるかもしれんな。」
「ありがとう、いいものをみせてもらった。」
新居を構えるにあたって事務所に使っていた部屋を従妹に譲りました。
事務員さんはお引越しです。
リビング広めだから友人との宴会に活用するがよい。
新居は一戸建てでいわゆる4LDK。
庭は広めでバカ犬も喜んでいます。
と言ってもバカ犬は眠っていることが多くなりました。
お歳だからね。
従妹の進学先が決まりました。
国立の女子大です。
かなり頑張ったらしく、ガッツポーズをしています。
「にいちゃはどうしてなんだってできるのよ。」
「ピカッとの疑惑もあるし・・・」
「柔道はあれだし・・・」
「まさかの宇宙人なんじゃ?」
覚えてるんだ、あれ。
12年前のことですけど。
なんだってはできませんよ?
できるようになるまで努力しただけです。
それと、宇宙人ではありませんよ。
その件はそのうち、お話しできたらいいですね。
あの時の一回かぎりだったみたいで、今のところ再現できないんですよ。
「え、光ったのは本当だったんだ!」
成人を機に祖父の遺産を受け取りました。
お世話になったから叔母さん(おかあさん)に受け取って欲しいのですが。
「だめよ。父さんがお前のためにって遺したのだから。」
「それに父さんに厳命されているのよ?」
あの実母、お爺ちゃんの厳命を無視しやがった。
遺産は結構な金額でした。
郊外に一軒家が注文できるくらいの。
家業の土建業を継いで、がんばって稼いだんですね。
会社は跡継ぎがいなくて番頭さんに譲ったそうです。
祖父は僕に継がせたかったらしいけど、さすがに幼児じゃどうしようもない。
少佐から依頼が来ました。
「ロシア語は話せたな?」
そうですね。
「国外の覚者の間では君の噂で持ち切りらしい。」
「とんでもない奴がいる、とな。」
お友達が増えましたからね。
「ロシア政府からの要請だ。覚者の革命分子を駆逐して欲しいと。」
「百歩神拳の使い手が現れて、手に負えないらしい。」
「雷神ペルーンの使徒だと自称しているそうだ。」
参考文献:ロシアの神話
百歩神拳は徐々に広まりつつあるようですね。
もうちょっと使い手が増えたら大会でもやりますかね。
目標があれば修行も捗るでしょう。
じゃあ、ちょっとロシアに行ってきますか。
もちろん妻を連れてね。
やはり冬のクレムリンは寒いですね。
妻には「気」でコートしておきます。
ぬっくぬくです。
お迎えの人が来ました。
覚者ですね。
「遠いところまでお越しいただきありがとうございます。」
いえいえ、とんでもない。
仕事ですから。
「上のものが待っていますのでこちらへ。」
やってきました、クレムリン宮殿。
頼んだら泊めてくれるんでしょうか?
泊めてくれるそうです。
じゃあホテルのキャンセルを。
え、やってくれる?
ありがとうございます。
妻を部屋に送って、さっそくブリーフィングです。
妻はさっきからすごいすごいの連発です。
僕はいちおう部屋のチェック。
案の定、補聴器、ではなく、盗聴器がありました。
指先で握りつぶします。
参考文献:ラシャーヌ!
相手の人数、拠点などなど。
昔、内戦に使われた砦を占拠。
人数は100人程度。
もちろん武装している。
戦車はある。ヘリもある。戦闘機はなし。
よかった。
戦闘機は手に負えません。
戦車とヘリはなんとでもなります。
砦の見取り図。
明日にでも行きましょう。
日帰りできそうです。
お借りしたジープみたいな車を止めます。
砦まで1km。
そろそろ哨戒に引っ掛かるでしょう。
ゆっくり歩いていきます。
ヘリが来ました。
2機。
妻と観たランボー2で見た奴ですね。
名前は知りません。
近寄ってくると面倒なのでさっさと落とします。
石を2個拾って。
投げました。
狙いはテールローターです。
命中。
ローターが吹っ飛んで機体はくるくる回りながら落ちていきます。
あと500m。
砦から戦車が出てきました。
砲塔をこちらに向けて。
撃ってきました。
ふーん、人間相手に大砲を撃ちますか。
割と正確な狙いでまっすぐ飛んできます。
ひょいと首を振って避けると100mくらい後ろで爆発しました。
足元を狙わないとだめですよ?
まじで一人で来やがったのか?
ライフルも持ってないヤツが、どうやってヘリを落としたんだ?
事故ったのか?
まぁ関係ねー。
500mなんざ俺に取っちゃ必中距離だ。
キレイなツラを霧に変えてやるぜ。
避けやがった?
スウェーしやがった・・・のか?
参考文献:リングにかけろ
秒速600mだぞ?
まあいい2発目だ。
ん?なにか投げたのか?
口径は105mmですか。
適当な大きさの石を拾って。
投げます。
石は時速およそ200kmで火花を上げながら砲口に突き刺さります。
直後。
砲塔が吹き飛びました。
派手に暴発しましたね。
中は大変なことになっているでしょう。
人間に大砲を撃つような奴はどうなろうと知ったことではありませんが。
参考映像:インディジョーンズ/最後の聖戦
砦の外壁は5mくらいですね。
さっさと登ります。
さっそく機関銃弾が飛んできますが、無視して砦に侵入します。
さっそくいました、ペルーン君。
ひとりで待ち構えているところを見ると自信満々ですね。
「雷神ペルーンに刃向かう者は死ぬことになる。」
それぞれの指から「気」の鞭を計10本出して見せます。
ああ、それでですか。
スターウオーズ6を観たんでしょうか。
妻と観ましたが、妻的には恐れ多くも皇帝陛下の顔が気持ち悪くて、『無理』だそうです。
参考映像:STARWARS ジェダイの帰還
「気」の鞭で手首を拘束して、気を吸い取ります。
吸い取りすぎると死にそうになるので加減します。
調子に乗って「気」を使いすぎてぶっ倒れましたからね。
経験者は語る。
フッとペルーン君の鞭が消えて、ペルーン君が倒れます。
一丁上がり。
雇い主に連絡して引き取ってもらいます。
外に出て照明弾をポーン。
帰り便は、妻とシベリア鉄道でのんびり帰ります。
チュッチュしながらね。
さて。
目の前にペルーン君がいます。
拘束されているはずでは?
「あんなもん簡単に抜けられる」
どうやって僕の所在を?
「お前、有名人だろうが。柔道6連覇。俺でも知ってる。」
で、何しに君は日本に?
参考映像:YOUは何しに日本へ?
「弟子にしてくれ。」
タックル君も似たようなことを言っていましたね
分厚い名簿みたいなのをかかえて。
聞くと血判状だと。
一揆じゃないんだから・・・
行きがかりがあるうえに、友人なので断るのはかわいそうだと思ったので、名前だけお貸しすることになりました。
結婚式で変死体になっていたやつらのひとりですし。
『もちろんだとも!君はこのような些事にかかわっていいような人間じゃない!』
いやいや・・・
弟子は取ってないです。
それに人殺しはちょっと。
先日、おそらく数人くらいは殺っちゃいましたけど。
「ん、殺してないぞ?」
だって、
『雷神ペルーンに刃向かう者は死ぬことになる。』
って、雰囲気たっぷりに言っていたじゃないですか。
「そのほうがかっこいいだろう?」
「ぶちのめしただけだ」
部下の人は戦車砲を撃ってきましたけど?
「あんなやつら、部下じゃない。勝手に付きまとってくるだけだ」
「鬱陶しいが、それこそ殺してまわるわけにもいかん。」
『そのほうがかっこいい』か、この時代のロシアに中二病患者がいるとはね。
伊集院さんに教えてあげたい。
参考音声:伊集院光 深夜の馬鹿力
ここに中二病患者がいるぞー!って、叫びたいけど、妻のために作り上げたイメージが瓦解するからやりません。
とりあえずロシア政府に確認を取るとして、君はこれからどうするんです?
「金はたっぷりあるから弟子を取る気になるまで付きまとう」
君はそれが鬱陶しかったんじゃ?
お金はどうしたんですか?
「コンピュータでクレムリンの秘密口座から偽口座に移した」
参考映像:マトリックス(の、どれか)
スーパーハッカーでもあるらしい。
「パスポートもビザも正規発行元が作った偽物だ」
見る暇もなかったけど、武術はなにを?
「マーシャルアーツだ」
ロシアでマーシャルアーツ?
「ああ、流行ってるぞ。」
「アメリカ大使館の職員がジムをやってる。」
いいのかそれ、ロシア的に。
サンボとかじゃ駄目っだったんですか?
「かっこ悪いだろ?」
予想通りのご回答、ありがとうございます。
ロシア政府からの回答:
『手に負えないからそっちで面倒を見てくれ。』
『養育費は言い値で支払う。』
『使途様(笑)には金は返さなくてもいいと伝えてくれ。』
厄介払いですか。
自宅に白い仔猫が迷い込んできました。
妻はたいへんお気に入りのようです。
どんな名前がいいかと、毎日のようにあーでもない、こーでもないと言っています。
そうだね、せめて猫さんには名前が欲しいよね。
バカ犬でも覚えられるように簡単な名前にしてあげてください。
バカ犬はふんふんと猫さんの匂いを嗅いで、ごろんと丸まって猫さんを抱き寄せて、ぺろぺろ舐めています。
妻がなにか決心したようです。
「そうね、白い仔猫だから、しろさんがいいと思いますわ。」
「ねぇしろさん?」
素晴らしい。
あまりにもビューティフル!
彼女の特徴を端的にとらえつつ、まったくくどさが無い。
妻は名づけのセンスも料理と並んで抜群ですね。
参考文献:月刊誌 3分クッキング
ぜひとも、僕の名前も考えて欲しいものです。
作品名とペンネームもお願いしたい。
バカ犬の名付けもお願いします。
彼と暮らし始めてもうすぐ2年になります。
今でも夢の続きを見ているような。
彼はいつでもクールでかっこいいの。
でも、私は知っているんです。
彼が面白いことやかわいいものが大好きなことを。
かわいいもの、しろさんを見る目は優しげで、楽しいことを見つけると目が輝きます。
面白いことがあると、うずうず?するみたい。
特にわんちゃんと遊ぶときはすごく楽しそう。
そういえば、わんちゃんにも名前をつけないといけないわね。
わんわん鳴くから、わんこかしら?
彼が私の存在にもっと慣れたら。
彼はきっとそんな自分を見せてくれます。
そんな気がします。
僕、って言ってくれないかな?
俺、も捨てがたいわね。
ネタ切れでごんす
ここまでお読みいただいた方は作者のだいたいの年齢はお分かりと思いますが、凡人がちょっと長く生きてもこんなもんだと実感しました。ここまでで半年以上かかっています。
最終回は決めていて、呼ばれた理由も決めていますが、そこまで持って行くのにこの3倍は書かないといけません。
作品の内容は数万冊の小説と数千冊のコミック、文献、映像作品、音声作品からちょっとずつお借りしました。
主人公に関しては美化している部分以外は作者の投影です。
武術はやっていません。
株もやっていません。
カクヨムはルビが独特で狙っていた効果が出ませんでした。
了