表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/42

・【バトルステージ6】幸せな家畜 - 黒司祭の正体 -

「ふざけるなっっ、これはいったいなんだっ!!」


 バロンは別人のように激高した。


「見てわからないか? 絶望しかない哀れな農奴に、家畜に、幸福を授けてやったのだ」


「バーカッッ、どこがこれの幸福だしぃぃーっ!!」


 中指を立てて怒るプリムに我々は励まされた。どんな理屈を並べようとも、まったくもってその通りだった。


「ファフネシアに高度な産業は必要ない。いずれはイゾルテを弾劾し、我はこの地の民を楽園に連れて行こう。……家畜のな」


 ここでは人間を家畜に変える実験が行われていた。そしてそれは成功し、従順で幸福な単純労働者がここに誕生していた。


「そんなことはさせないっ!! 僕たち竜の翼がお前たちの野望を打ち砕く!!」


「ならば我を殺してみせよ」


「上等だよっ、バロンとうちでやっつけてやるっ!!」


 プリムが飛びかかろうとすると、巨大な火球が彼女の正面に放たれた。


「ぁ…………」


 それはちょっと熱いとか痛いとか、その程度では済まない強力な術だった。

 しかしそれはクイーンとジークが許さなかった。クイーンが氷の魔法剣を振り、俺もまたシャドウボルトを火球に撃ち込んだ。


「我の術を防ぐか。む……お前は……」


 レプトウスはクイーンの正体に気付いた。こんなに強い魔法剣士はこの国に彼女しかいなかった。


「ならばそちらは、先王の……」


 おまけのカラスにまで気付いてくれてありがたいことだ。


「退け、バロンッ、この怪物は我らに任せ、突破口を開け!!」


 バロンとプリムは我々の要求を拒んだ。だが老将ロンバルトが2人を引っ張って下がらせてくれた。

 これは罠だ。バロンの現場主義を逆手に取った、反乱軍総大将を狙った罠だった。


「こんなところで何をしている?」


「夜の散歩よ。そちらこそ、私に許可なく、何をしているのかしら……?」


 イゾルテとレプトウスの目にも止まらない戦闘が始まった。イゾルテは敵のどんな術も、有利な属性の魔法剣に切り替えて弾き飛ばす。


 しかしレプトウスの武器は術だけではない。正史ではここでイゾルテが負傷することになった。


 その症状は火傷。レプトウスは口元に奥の手を隠していた。


「覚悟っ!!」


「愚か者めっ、燃え尽きよ!!」


 レプトウスの口が大きく開かれ、炎が吐かれた。イゾルテは飛び退くが、利き腕に火傷を負うことになる。


「【アイアンスキン】!!」


 そんな納得のゆかない歴史をカラスは術一つで防いだ。我が主の肌を一時的に鉄に変え、火炎ブレスを無効化した。


「ジークッ、ありがとうっ!」


「こ、この死に損ないのカラスがっ!!」


「おかしいとは思っていたの。誰にも顔を見せない黒衣の神官……。こういうことだったのね」


 神官の顔の下にはトカゲの顔があった。それは人を超える身体能力と高い魔力を持つ、竜人と呼ばれる異形の者だった。


「クイーン、その異形は俺に任せてくれないか」


「貴方が……?」


「魔導兵がバロンを追っている。援護してやってくれ」


「でも……」


「君に見せたくない力を使う。それを使えば、こんなトカゲ男など瞬殺だ。俺に任せてくれ」


「……わかった。貴方はなんでもやってのけた人だもの。この悪い人をやっつけてっ、カァくんっ!」


「任せよ、我が主よ!」


 トカゲ男はカラスなど歯牙にもかけずイゾルテを追撃しようとした。そこにシャドウボルトを連射して足止めをした。


「邪魔くさいカラスがっ!!」


「黒の神官レプトウス。貴様はこの先も、バロンの前に立ちはだかり、各地の民に災禍をまき散らす。歴史が変わろうとも、貴様を野放しには出来ない」


「何を言っているかわからぬが、貴様もバロンもイゾルテも、ここで終わりよ!」


「終わるのはお前だけだ。【深淵の悪鬼】よ、再び俺に力を貸したまえ!!」


 あの日、竜脈の悪鬼は俺に褒美をくれた。やつらと同じ影の怪物と化し、圧倒的な戦闘力を与えてくれる術をくれた。

 カラスはみるみると巨大化し、生物ですらない影の怪物と化した。


「な、なんだ、その姿は……っ!? 影……影の、怪物だと!?」


 大柄な己より大きな黒い影に見下ろされてレプトウスは後ずさった。やつは術者だ。その影の怪物の秘めたる圧倒的な力を感じ取ったのだろう。


 黒い影はあの悪鬼が使っていた刀を腰から抜き、そして飛び退こうとする竜人レプトウスを追いすがった。


「一度は俺も受けた技だ、お前にもくれてやろう。覚悟……」


「なんという速度っ、なんという魔力っ、こんなっ、こんな怪物が蛮族の地に隠れていようなど……っ、ウ、ウオォォォッッ?!!」


 苦しまぎれの火炎ブレスを斬った。斬り上げられたブレスは天に立ち昇り、続けて放たれたみじん斬りが硬い鱗を持つ竜人をバラバラに斬り刻んだ。


 レプトウスはただの肉塊と化し、辺りには多幸感に包まれた哀れな農奴だけが残った。


「これでよし。レプトウスさえ排除すれば、反乱は成功したも同然だ」


 影はカラスに戻った。カラスは消耗を覚えながらも主の後を追い、撤退する彼女と合流した。


「神官レプトウスを討った」


「凄かった。カァくんが影のお化けになるんだもの」


「見ていたのか……」


「ふふ……かっこよかった。あの力があれば、この先も安心ね……」


 この戦いは元々撤退戦。離脱すれば勝利だ。どうにかしてあの姿を忘れてほしかった俺は、イゾルテのために少し無理をしてロバに化けた。


「さあ乗れっ、クイーンッ!!」


「ジークッ、貴方最高っ!!」


「顔は間抜けでしまらないがな……」


 我々はバロンを守り、帝国の本性を暴いて、真夜中の遠乗りを二人っきりで楽しんだ。


「そんな顔をするな、君は悪くない。あのような怪物が潜んでいるなど、誰にもわかるわけがないだろう」


「そうかしら……」


「そうだとも。君は悪くない。君はベストを尽くしている。人がなんと言おうと、君がしたことは正しかった」


 イゾルテは何度言われても納得しかねる様子だった。

 どちらにしろ彼女の悪夢はもうすぐ終わる。彼女は悪の総督として華々しく散り、そして使い魔のカラスと新しい人生を始める。


 イゾルテにとっても、俺にとっても、後ほんの少しの我慢だった。


――――――――――――――――――――

status_window(chaos)


【LV】  22  →   23

【HP】 500  →  505

 【現HP】 99600/500

【MP】 460

 【現MP】  4598/460

【ATK】185  →  187

【MAG】400  →  406

【DEF】255  →  256

【HIT】507  →  513

【SPD】990  →  998

【LUK】1115 → 1117


【獲得スキル】

 錬金系

 【錬金術:初歩】【合成術:初歩】

 【錬金術:発展】

 変化系

 【変化魔法:初歩】【変化魔法:発展】

 【補助魔法:初歩】

 【強化魔法:守】【強化魔法:時】

 【変化魔法:小動物】【変化魔法:小動物Ⅱ】

 【変化魔法:鉄化】

 吸収系

 【吸収魔法:初歩】【吸収魔法:発展】

 【吸収魔法:生命】

 共有系

 【共有魔法:初歩】【共有魔法:MP】

 大地系

 【大地魔法:初歩】

 感知系

 【感知魔法:初歩】【感知魔法:応用】

 ???系

 【深淵化:影人】


close_window()

――――――――――――――――――――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ