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・カラス育成パートその4 - 残SP:4 -

 バトルステージ4は内部的には2つのステージで構成されている。よって(2+2)の計算で4のスキルポイントを獲得することになった。


 今回は変化魔法のスキルツリーから2つを採用する。選ぶのは【変化魔法:小動物Ⅱ】【変化魔法:時】だ。


 海底要塞レムリスへの拠点の移転を進めるバロンたちを監視しながら、カラスはつぶやいた。


「skill_tree(chaos)」


 星空を模したウィンドウ画面が開くと、変化魔法カテゴリーからスキルを採用した。これによりもう少し大きな生物への変化が可能になり、新たな魔法【クイック】と【リターン】を修得した。


 【クイック】は加速魔法だ。どんな状況においても腐ることのない効果の高い術となる。【リターン】は対象の時を少し巻き戻す魔法だ。非常に高コストだが、チャート上必須のスキルになる。


 残るスキルポイントは2。残りは吸収魔法に使う。採用するのは【吸収魔法:生命】とそこから続くツリーにある【吸収魔法:発展】だ。


 【吸収魔法:生命】は採用でHP吸収魔法【ドレイン】を修得する。【吸収魔法:発展】は系統魔法の効果を高め、HPとMP最大値にボーナスを与える。


 つまりこれであの竜脈から、MPと同時にHPを吸い上げることが可能になった。先日の戦いでMPをかなり使い込んでしまったので、この機会に補充したい。


 幸い、次のバトルステージはとある大事件の後に発生する。毎日イゾルテに定期連絡を入れていれば、事件が起きてからでも十分に参戦が間に合う。


『聞こえる、カァくん……?』


『ああ、感度良好だ。腕を上げたものだな』


『だって貴方がいないと寂しいんだもの……』


『ならば使命を捨ててどこかに逃げよう』


『ありがとう。貴方のやさしさに私、救われている……』


 ありがたいことに術を極めたイゾルテは通信可能距離を7キロメートルまで広げていた。

 さすがに総督府から【クァドヴァルト】の森には届かないが、通信が遙かにやりやすくなった。


『近くに来ているのか? そっちに行こう』


『いいえ、もう戻らないと……』


『そうか、では……そうだな、今夜を期待しておいてくれ。新しい変化(へんげ)を覚えた』


 そう伝えると、出先で暴君としてふんぞり返っている女が通信で黄色い声を上げるのだから、まあ人は見かけだけではわからないものだった。



 ・



 レジスタンスの海上要塞への移動は近いうちに完了しそうだ。少数を隠し砦に残して、主力を全て海上要塞に移すことにしたようだ。


 任務を終えて帰ると、いつものように政務室から自宅へとイゾルテとカラスは総督府を闊歩した。家に帰るとすぐに服を脱ぎたがるのが、美しき我が主の悪いところだった。


「だって、窮屈でかわいくないんだもの……」


「まあ俺など常に全裸だ、批判する権利はないな」


「お洋服を作りましょうか?」


「それだけは勘弁してくれ」


「そう……」


 断ると悲しそうな顔をされてしまった。そんな顔をした彼女に切り出すのは覚悟がいたが、心を鬼にして話を持ちかけた。


「竜脈に行かせてくれ、魔力がだいぶ落ちてきてしまった」


「わかった、いってらっしゃい……」


「いいのか?」


「ええ、貴方は結果を出した。その力があればあの子はさらに高く飛翔する」


 俺は嫉妬深いのだろうか。バロンを優先する彼女に少しの不満を覚えた。


「3日くれ、毎晩定期連絡も入れる」


「本当っ!?」


「何が起こるかわからない情勢だ。主のピンチに駆けつけられないようでは使い魔失格だろう」


「なんだか幸せな気分……。いつも一緒に居てくれて、ありがとう、カァくん……」


「いつまでも隣にいるさ」


 イゾルテはいつものように裸にシーツでベッドに寝そべり、使い魔を胸元に呼んだ。豊かな膨らみの立間に乗ると、イゾルテが微笑んだ。


「さて、そろそろお披露目といこう。鍛錬の結果、俺はこれまでよりもう少し大きな小動物に変化出来るようになった」


「ええっ、待っていたっ! 素敵ねっ!」


「何か希望があれば言ってくれ。連日激務にあえぐやさしい暴君様の慰めになろう」


「柴犬になって!」


「中型犬か……わかった、がんばってみよう」


 カラスは暴君の胸元で変化魔法を使い、カラスから柴犬に化けた。……わかってはいたが、柴犬ではなく豆柴サイズが限界だったようだった。


「か、かわいい……っっ!! ずっとその姿でいてっ!!」


「本来の姿から逸脱するほどに、長く変化していられなくなるようだ。それに、あまり応えたくない命令だ……」


 鳴いてというのでワンワンと鳴いてやると、暴君殿が豆柴を抱いてベッドで暴れ回った。


「次のご希望は?」


「マラミュートが憧れなの! 大型長毛の猫ちゃんになって!」


「マニアックなオーダーだな……」


「待って、図鑑を取ってくる!」


 図鑑をベッドに開いてもらうと、ああコイツかと合点がいった。それからドロンと化けると、マラミュートの子猫に変化していた。


「は、はぁぁぁーんっっ、か、かわいい……っ、こんなにかわいい子を私一人が独占していいのかしらっ?!」


「君は独裁者、人と何かを共有できる立場ではなかろう。ミャーミャー」


「ふあぁぁぁっ、鳴いてるぅぅーっっ!!」


「ザラザラの舌で人のスベスベとした肌を舐めるというのも、新鮮な体験だ」


 胸の谷間で愛でられるのにも慣れてきた。無意識にゴロゴロと喉が鳴り、背中がアーチ状に折れ曲がった。


「キツネ!」


「よかろう」


 キツネに化けると長い尻尾を撫で回された。


「鷹!」


「それはなかなか悪くない」


 鷹に化けると猛禽類の威圧感と優雅さに、イゾルテに憧れの目を送られた。


「タヌキ!」


「君はほとほとマニアックだな……。わかった」


 丸くてふっくらとしたタヌキになると、また抱き締められて添い寝を強制された。


「タヌキが気に入った! 今日はずっと、タヌキでいてくれる、カァくん……?」


「タヌキは気に入らない、別のがいい」


「なんでもわがままを聞いてくれると、聞いた気がするのだけど?」


 これから本格化する反乱に負けて死ぬつもりの女性とは思えない姿だった。


「わかった、もう少しタヌキでいよう……」


「はぁぁ……っ、お腹がぽよぽよ……」


「よ、よせ……っ、うぐっ!?」


 しばらく好きにさせてからカラスに戻り、新たに手に入れた術を披露した。しかしベッドでゴロゴロとしている女性にクイックをかけたところで、大きな変化はなかった。


「ふふ……貴方バロンより強いんじゃないかしら?」


「どうだろうな。だが君の足下には及ばないのは確かだろう」


「昔から少しだけ、魔力が高くて物覚えがよかっただけよ」


 そうと見えないがこの女性はとてつもなく強い。暗殺など到底不可能なほどに。


「もう1つ術を見せよう。これは【リターン】と呼ばれる珍しい術でな……」


 カラスは部屋を舞い、イゾルテが大切にしていた鉛ガラスの水差しを蹴落とした。


「カ、カァくんっ!? ひ、ひどい……」


 そして本気でショックを受けて涙目になる女性の前で【リターン】の魔法を使った。

 まるで逆転再生されるように水差しはテーブルに戻り、こぼれた水も元通りとなった。


「よ、よかったぁ……。ビックリさせないで、カァくん……っ!」


「すまない、少しやり過ぎた。だがこれでわかっただろう、俺は君を死なせはしない」


 君が死を選ぼうとも、俺はこの術で時を戻し、復活させる。死なせたりなどしないと意思表示をした。


「いいえ、絶対に私は死ぬ。ごめんなさい、全部演技でした。なんて言っても、誰もわかってくれないもの……。潔く終わることにする……」


「困ったな……君とはいつも平行線だ」


 端から説得出来るなど思っていない。披露を終えた俺は彼女お望みの――不満ではあるがタヌキに化け、枕元で丸くなった。


「カァくんの尻尾に顔を埋めて眠れるなんて、私幸せよ……」


「君は意外性の塊のような女性だな……。もう好きにしてくれ……」


 タヌキは明日のために目を閉じて、尻尾にかかる熱く激しい鼻息を堪えて眠ることにした。


――――――――――――――――――――

status_window(chaos)


【LV】  20

【HP】 260  →  310

【MP】 180  →  230

 【現MP】 500/230

【ATK】 51

【MAG】110

【DEF】 62

【HIT】216

【SPD】408

【LUK】1090


【獲得スキル】

 錬金系

 【錬金術:初歩】【合成術:初歩】

 【錬金術:発展】

 変化系

 【変化魔法:初歩】【変化魔法:発展】

 【補助魔法:初歩】

 【強化魔法:守】【強化魔法:時】new!

 【変化魔法:小動物】

 【変化魔法:小動物Ⅱ】new!

 吸収系

 【吸収魔法:初歩】【吸収魔法:発展】new!

 【吸収魔法:生命】new!

 感知系

 【感知魔法:初歩】【感知魔法:応用】


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