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・【バトルステージ3】大いなる遺産 - 古代兵器 -

「知ってたなら教えてよっ、ジークッ!!」


「すまない、聞かれなかったものでな」


 プリムの抗議をお約束のセリフでかわすと、先頭でバロンと魔導機械兵の戦いが始まった。


「か、硬い……!?」


 実物のゲームをプレイしたわけではないが、このステージはだいぶ難しいのではないかと思う。

 金色の鈍い光沢を持つその魔導機械兵は、バロンの試し斬りを厚い装甲で弾き返した。


「殿下っ、一度後退を!」


「え、援護します……っ!」


 魔導機械兵の装甲はサリサのショートボウの矢を弾き、遅れて発動されたロディウスのストーンバレットを受け止めた。


 崇拝する先王の遺産に対して酷いことをするものだ。魔導機械兵の装甲には、ストーンバレットのような打撃攻撃がやや有効だった。


「バロンッ、反撃が来るぞ!」


 魔導機械兵は広い通路に2列横隊で8体立っている。そのうち最前列の2体が両腕を突き出し、バチバチとスパークする雷の塊を生じさせた。


「くっ?!」


 バロンは賢い。バロンは剣を地に立てて手放し、その場を飛び退いた。剣は避雷針の作用を果たし、ライトニングボルトの電流を地中に逃がした。


「やるではないか」


「ありがとう、ジーク、今のは危なかった!」


「てゆーか優雅に観戦してないで手伝ってよーっ!!」


「手伝ってしまっても、構わないのか?」


 確認するまでもない問いだが、言わずにはいられない。先の展開を知る俺のすることは全てがイカサマだ。


「ジーク殿っ、こんなところで殿下に負傷されるわけにはいきません! どうか援護を!」


「承知した。ではあのライトニングボルトは俺が迎撃しよう」


 まだ十分な蓄えのあるMPを駆使して、カラスはシャドウボルトを16本発生させた。ステージEX1の時と比較してその闇の槍は大きく、大幅なレベルアップにより威力が向上していた。


「ありがとう、ジーク! プリムッ、同時に突撃するよ!」


「おっけーっ、右のやつはうちに任せて! ケチョンケチョンにしてあげる!」


 二人が突撃すると射程内に入ったことで再び魔導機械兵ポーンタイプがライトニングボルトのチャージに入った。


 それが撃たれる前に狙撃をするだけで妨害が出来るのだから、簡単な仕事だ。シャドウボルトを撃ち込まれた雷球は制御を失い放電し、それがポーンの動きを痺れさせた。


「ちょいやぁぁーっっ!!」


「斬ってダメならっ、こうだっ!!」


 プリムは両手持ちの刀による力任せの斬撃。バロンはポーンの肩間接部への刺突。効力を発揮したのは無論、バロンの刺突の方だった。


「か、硬ぁぁっっ?!!」


「装甲の隙間を狙えばダメージが入るっ!! 総員、手足を狙って敵の動きを封じろっ!!」


 後衛の護衛をしていた剣士たちが声を上げ、前衛のバロンとプリムを援護した。


 ちなみに彼らがそうしている間も、奥のポーンからライトニングボルトが放たれようとしている。ポーンは正面2体を盾にして、後方6体が扇状の陣形を組み、バロンとプリムに危険な術を放とうとしていた。


「ナイスッ、ジークッ!!」


 望み通りにさせてやる道理もない。6本の闇の槍を一斉発射させると、やつらは暴走した己の術のダメージを受け、動きを鈍らせた。


「フッ、君がいると戦場が陽気になるな」


 ポーンタイプの弱点は雷魔法だ。今ので気付いて欲しかったが、今のところ彼らが弱点に気付く様子はどこにもない。


「気を付けてバロンッ、コイツ強い……!」


 前列のポーンは腰の剣を取り、バロンとプリムとの打ち合いを始めていた。剣士たちが援護に加わっても、ポーンは見事な剣術と装甲で侵入者の攻撃を防いだ。


「クッ、このままじゃ埒が明かない……っ、何か、何かないのか……!?」


 やはりこのステージは初見には難易度が高いようだ。弱点さえ知ってしまえばそうでもないが、気付くまでは厳しい戦いが続く。

 ゲームならリロードすればいいが、この世界にリロードはない。


「ウアッ?!」


 剣士の一人が傷を負った。彼は後退し、サリサの手当を受けることになった。


 ちなみに一巡目の世界では、何戦かしてから彼らは弱点を見つけることになった。イゾルテの使い魔であるカオスに、ルディウスがライトニングボルトを撃ったところ、それが機械兵に当たることで判明する。


 具体的には、直撃したライトニングボルトがポーンに装着された【外部装置】に流れ込み、先王が仕込んだ【迎撃モード】が解除され、鹵獲が可能になる、といったカラクリだった。


 1体でも多く鹵獲できれば、それだけ多くの兵が戦で死なずに済む。


「ルディウス、あの人形から妙な魔力を感じないか?」


「そんな余裕は私にはありませんっ!」


「少し偵察してこよう。何、術の相殺は継続するので心配はいらん」


 そろそろバロンかプリムが前列の1体を破壊してしまいそうだ。それでは我が主に良い報告が出来ない。カラスは突撃し、正面2体の周囲を旋回した。


「バロン、その魔導機械だが、背面に不審な点がある」


 バロンはマルチタスクが出来ない人種だ。やむを得ず、戦いに熱中するバロンの足下にシャドウボルトを撃ち込んだ。


「なっ、何をするんだっ、ジーク!?」


「世話の焼ける坊やだ。もう1度言うぞ」


 同じ説明をすると、バロンは俺の報告に深い興味を持った。彼はポーンの背面に回り込み、俺の言う不審な箇所を発見した。


「他の部分は古いのに、首の後ろのパーツだけ妙に真新しい……!」


「後から取り付けられた、と見るべきだろうな」


「後から……? あっ、まさか……っ!?」


 気付いたようだ。その装置が先王ロシェにより仕込まれた可能性に。カラスが敵装甲にシャドウボルトを撃ち込んで牽制すると、バロンは再び敵の背後に回り込み、飛び上がって後頭部の怪しいパーツを叩き斬った。


「えっ、と、止まった……!? みんなっ、首の後ろだっ、みんなで囲んで、首の後ろのおかしなパーツを破壊しろっ!!」


 バロンのその一声で形勢が一変した。剣士と連携してプリムがポーンの背後に回り込み、同じように外部パーツを破壊すると、あれだけ苦戦させられた魔導機械が停止した。


「いやったぁーっっ、止まったぁぁーっっ!!」


「君たちへの攻撃は全て俺が封じよう。さあ、思い思いに突撃してくれ」


「ちょー助かるっ! じゃ、うちは右半分っ、バロンたちは左半分ねっ! どっちが多くと止められるか競争だーっ!」


「ちょ、ちょっとプリム……ッ!?」


 プリムは単騎で右翼に。バロンは剣士を引き連れて左翼へ。競うように弱点への攻撃を仕掛ければ、8体の魔導機械兵など竜の翼の敵ではなかった。


「やったぁーっ、うちら最強ーっっ!!」


「か、勝っちゃった……」


 競争の結果は3:3で引き分け。いや、単騎で3体を停止させたプリメシア姫の判定勝利だった。

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