一息と妹
目を覚ますと。俺は居間で、寝かされていた。
顎が痛い、、、。
確か、、、母さんに、門で殴られたんだっけ?
俺は起き上がり、周りを見渡す。
居間の中央には、テーブルがあり。その周りに誠と、青山先生の姿があった。
2人は座布団の上に座り、茶菓子と、お茶を楽しんでいるようだ。
「新。起きたのか。ちゃんと、生きてたんだな」
茶菓子を食べていた誠が、起き上がった俺に気づき、話しかけてくる。
「あれで死ねたら、一番良かったんだけどな」
俺のその返しに、誠は顔を引きつらせていた。
俺はテーブルに移動し、誠の横に座る。反対側には、青山先生が座っている。
「あの後、どうなったんだ?」
俺がそう問いかけると、先生が答える。
「佐城さんは、無事に家に、帰られました。私たちは、お母様に事情を説明し、神田家に迎えられた形です」
そうか、佐城は無事に、帰れたのか。家近所だったのか?
母さんは基本、来るものを拒まないからな。そこはあまり、心配していなかった。
てか、青山先生も、うちに居候かよ。
「今は、ここに案内されて。一息つかせてもらってる、感じだな」
お茶を啜りながら、誠はそう付け加える。
「そうか、、、」
あの地獄のような場所から、家に帰ってこれたのだ。そう考えると、全身に疲労感がやって来た。
少し、俺も休むとするか、、、。
しばらく沈黙が続く。
俺は、特に理由もなく、居間の壁に埋め込まれている、テレビの電源を入れた。
最初に映し出されたのは、ニュース番組だ。当然のことだが、今起きている現状について、報道されていた。
「予想はしてたけど。どこも、あいつらだらけなんだな」
「ここに居れば、奴らは入ってこれなし、安全だよ」
誠の言葉に、俺はそう返しておく。その後も、ニュース番組では、各地の悲惨な状況が映し出され、観ていて、気分が悪くなるばかりだ。
「この先。世界は、どうなっちまうんだろうな」
誠の言葉に、俺は、何も言うことができなかった。誰にも、この先のことなんてわからない。きっと平和な未来は、もう無いのだと、俺は思ったからだ。
そんなことを思っていると、居間に、母さんが入って来た。両手には、母さんの手作りであろう、料理を持っており、テーブルへと、並べていく。
「新。葉月を、呼んできてちょうだい」
気づけば、外は暗くなっており。夕飯の時間らしい。俺は、言われた通り、居間を出て、葉月の部屋へと向かう。葉月の部屋に、たどり着くと。
ドンっ!
勢い良く、扉が開く。扉の前に居た俺は、顔面に扉が当たり、痛みでのたうち回る。
「あ、生きてたんだ、お兄ちゃん。あと、邪魔だからどいて」
おい葉月よ。無事に帰還した兄へ、第一声がそれか?泣くぞ、、、
俺は立ち上がり、顔面を抑えながら、話をする。
「邪魔とはなんだ。飯ができたから、呼びに来たんだよ」
「匂いでわかるよ、それぐらい。そんなことより、汗臭いよ?血とかついてるし、着替えてから来てよね」
そう言われ、自分の服を確認する。所々に、返り血などが付いていた。葉月は、それだけ言うと。先に、居間へと、向かっていった。
ふむ、着替えるか。
俺は隣の自分の部屋へ入り。適当な服に着替る。誠用に、着替えを持って、部屋を出た。居間に戻ると、全員がテーブルに着いており。俺は、葉月の隣に座る。
並びはこんな感じだ。左側に俺、葉月。右側に誠、青山先生。廊下側に、母さんだ。
俺が座ると、母さんが話し始める。
「今日は、いろいろあったけど。新しい息子と、おじさんが、我が家に加わった、記念日です!腕を振るったから、たくさん食べてね」
ツッコみたいところが、多数あったが。全員が箸を持ち、手を合わせたので、俺もそれに合わせる。
「「「いただきます」」」
全員でそう言って、食事が始まる。
最初は遠慮気味だった、誠達だが。母さんに、どんどん料理を取り分けられ。次第に、箸が進むようになっていった。
青山先生は途中「久しぶりのまともなの食事です、、、」と言っていたが。普段、何を食べっているのだろうか?顔が青いし、ほうれん草ばっかり、食ってそうだな。
食事も終わり。母さんが、後片付けしている間に。誠と青山先生を、風呂へと案内した。
誠は「青山先生と一緒かよ」と言っていたが。うちの風呂の広さ見ると、黙って入っていった。
居間では、俺と妹の2人で、並んで座っていた。妹は退屈そうに、あくびをしており、普段と変わらないように見える。
「学校で、なんかあったか?」
俺は何気なく、そう聞いてみる。
「別に、、、」
思春期かな?いつもより、冷たいぞ。
そんな返事だったが。俺には何となく、伝わって来た。
俺と違い、友達が多い妹は、学校できっと、悲惨な状況を、目の当たりにしたんだと思う。それは、小学生の妹にとって、耐えがたく、悲しいことだらけの、1日だったろう。
俺は黙って、軽く頭を撫でてやる。
「うざ、、、」
そう呟く妹の目には、涙が少しずつ、溜まっていった。
「普段通り、過ごしてるつもりだと思うが。お前の兄貴だぞ、何も言わなくてもわかるさ。母さんも、心配していると思うぞ」
俺がそう伝えると、妹は少しずつ、学校で起こったであろう出来事を、話し出した。
「私、友達を助けられなかったの、、、。みんな私の目の前で、あいつらに、、、食べられて。私は強いはずなのに、体動かなかったの、、、みんなを、守ってあげられなかった」
妹は、母さんに鍛えられ、確かに強い。それは、俺も知っている。
でも、友達だった人間が、突然奴らに変わり、他の友達を襲いだす。そんな光景を前にしたら、誰だって何もできず、立ち竦んでしまうだろう。
「強くても。出来ること、出来ないことはあるんだ。お前は優しいからな。ただ、友達を傷つけることが、出来なかっただけだよ」
俺はそう言って、涙があふれだした妹の頭を、涙が止まるまで撫で続けた。
途中、母さんがやって来て、妹の泣いている姿を見ると。テーブルに、妹が好きなアイスを置いて、片づけに戻っていった。
暫くして、泣き止んだ妹は。黙って、テーブルに置かれたアイスを、食べている。
そのタイミングで、誠と青山先生が、風呂から戻って来たが。
妹の様子が、先ほどと少し違うことに気づき。
「縁側で、涼んでくるぞ」
誠はそう言って、青山先生を連れ、居間を出ていく。
また、2人きりになってしまった。さき程から妹は、俺の前に置かれている、アイスを見ている。
「食うか?」
「別に、要らないもん」
素直じゃないよな、、、
「腹いっぱいで、もう食えないんだよ。代わりに、食べてくれよ」
妹は仕方ないなっと、言う顔をしながら。俺の前に置かれたアイスを、自分の前に移動させ、食べ始める。
「お兄ちゃん。さっきの人たち誰?ママは、新しい息子とか、言ってたけど」
「学校の友達の、誠と、青山先生だよ」
俺がそう紹介する。かあさんが言っていた、息子の件は。いつもの暴走だと思うので、流しておこう。
「お兄ちゃんって、友達いたんだ。ボッチかと思ってた」
失礼な!俺だって、友達の1人や2人居るぞ。高校では、今日まで、ボッチだったけどな。
「しばらく、一緒に生活することになるけど、仲良くしてくれよ」
そん会話を終えると、母さんと、誠達が居間に戻って来た。
「新も、お風呂入っちゃいなさい」
母さんが、俺にそう言ってきたので、俺は立ち上がり、妹の方へ向く。
「久しぶりに、一緒に入るか?」
「しね」
殺意の籠った、鋭い目を向けられたので、俺は寂しく、一人で風呂場へと向かう。
居間を出る際に、誠の顔を見ると、さすがに、ドン引きしてる顔をしていた。
誠には、妹の尊さが、わからないようだな。
そして妹よ、兄は悲しいよ。お前が、思春期に突入してしまって、、、




