大脱出!!
3体以外の奴らが去り。俺達は、車内で休息を取りつつ、今後について、話し合っていた。
運転席に教師、助手席に誠、中央の席に俺、後部座席に佐城、となっている。
「あ、あのアラーム事前に、仕込んでいたのですか?」
教師が俺に、そう尋ねる。
「ええ。念のため、3分後に再度鳴るように」
「念のためが、起きないのが、1番だったけどな。その念のために、命を救われた訳だ」
リクライニングを倒し、誠が話す。
おい。俺の領域に入って来るな。
「この後は、どうするのよ?門も閉じてるし、車で脱出、出来ないわよ」
1番後ろで寝転がりながら、当たり前のように、問題を丸投げしてくる佐城。
「今の状況を、確認するぞ。佐城は、足をひねって走れない。そうなると、車移動が絶対条件。車で脱出するには、閉ざされた門を、開けに行かなければ、いけない」
「その通りだ、リーダー」
誠は冗談交じりに、そう返答する。
リーダーなった記憶はないが、無視して話を続ける。
「そこで。まずは、車の周りにいる、3体をどうするかだ」
車の右側に2体、左側に1体、挟まれる形で、奴らは立っている。
「こ、困りましたね」
教師も、打つ手なしって感じだ。
ここぞとばかりに、俺はカバンから、ある物を取り出す。最初に別館校舎で、見つけた、電動のネイルガンだ。
「おまえ。そんなもん、隠してたのかよ」
誠が妬ましそうな顔で、俺にそうを言ってくる。
「隠してたんじゃなくて、使い所を探してたんだよ。それが、今ってことだ」
俺は座席の左端に移動し、扉についている、窓のスイッチを操作する。少し開け、ネイルガンの発射口を、窓の隙間に向ける。窓が開き、匂いに釣られた奴は、窓の隙間に、顔を捩じ込ませようとする。
俺は、奴の額が窓の隙間に、擦り付いたタイミングで、ネイルガンの引き金を引く。
パシュ!
その音と共に、窓の外で、1体目が死体となる。
「え!?何よそれ」
スマホ見ながら、寝転がっていた、佐城が音に気づき、話しかけてくる。
「ネイルガンだよ、別館校舎で、偶然見つけてな」
教師も最初は、驚いていたが、校内の備品であることを、知っていたのか。特に何も言ってこない。
俺は、反対の窓際に移動し、同じ動作で、2体目を死体にする。3体目は、誠の横なので、誠にネイルガンを渡す。
「渡されても、使い方知らねーぞ」
俺は使い方を簡単に説明し、誠も理解したようだ。
俺と同じ動作で、3体目死体にした。
「こんな便利なもんがあるなら、最初っから使えよな」
誠はネイルガン片手に、そう文句を言ってくる。
「至近距離なら、使えるだが。少しでも離れると」
俺は周囲が安全になったので、窓を開け、外にネイルガンを向ける。
「あそこの木を、狙うぞ」
俺は3メートルほど離れた、距離に植えられている、木を指差す。ネイルガンの発射口を、木に向け、引き金を引く。
パシュ!
乾いた音が鳴っり、俺はそのまま、窓を閉める。
「当たらねーんだよ。この距離でも」
「いや、お前が下手なんじゃ、、、」
誠が下手くそ呼ばわり、してきたので、睨んでおく。
上手いわけでは、ないけどさ、難しいんだぞ本当に、、、。
誠はそれ以上、何も言わず。リクライニングを、さらに倒し、寝そべりだす。
俺はネイルガンの発射口を、誠に向けかけたが。我慢をして、カバンにしまう。
問題の3体は片づけたので、次の行動について、話し合い始める。
「現状まともに動ける俺と、誠だけだ。俺達で、門を開けに行く」
誠は手を挙げ、返事を返す。
誠さんよ、それは了解でいいのか?
「先生と、佐城はここで待機。先生は電話したら、いつでも出発できるよう、準備しておいてください。俺達は校門で、乗り込みますので」
俺は教師と、連絡先を交換し合い、外に出るため、準備をする。
あっ、先生の名前って青山なんだ、、、。ずっと顔が青いし、納得だな、字は体を表すって、言うよな。
「準備は良いか?」
「問題ないぜ」
俺の問いかけに、誠はグーサインを、向けてくる。
俺達は同時にドアを開け、外に出る。周辺の状況は。車内から、事前に確認できたので、問題はない。そのまま2人で、校門まで音を立てず、速やかに移動する。
どうやら他の奴らは、校庭に集まっているようで、問題なく校門まで、辿り着いた。
しかし、校門に近づくと、うめき声が聞こえてくる。内側には何も居ない。外側を外壁越しに、覗き込み確認してみる。そこには10体ほど、の奴らが校門に、へばりついていた。
よく見ると、先ほど俺達を置き去りにした、3人も、お仲間に加わっているようだ。
ざまあみろ。
少し気も晴れたので。この先のことについて、誠と小声で、相談し合う。
「門を開けると、あれが入って来るよな」
「そうだな。10体は2人だと、厳しいぞ」
2人でしゃがみ込み、ひそひそ話す。
「なぁ、数体なら、車で引いても、壊れねーよな」
誠が俺に、そう尋ねる。
「多分問題ないとは、思うけど、、、」
俺がそう答える。
「チキンレースだな」
誠が考えていることは、何となく予想できる。
校門は1枚扉で、左に引くと、開くようになっている。
誠の言うチキンレースとは、2人で門を開き続け。奴らが襲ってくる前に、車が通れる道を、確保すると言う事だ。
奴らにビビって、早く逃げても、車は通れない。逃げ遅れて、奴らに襲われても、アウトだ。
まさに、チキンレースだな。
俺は少しため息をつき、その作戦に同意した。
正直、さっきの逃走劇より、ぜんぜん楽に感じる、自分が怖い。
事前に青山先生には、作戦を伝え、エンジンをかけて、スタンバイしてもらっている。
俺達は、門の左端を掴み、校門を開け始める。
ギギギギ!
そんな音を立てながら、門は徐々に、開いていく。数秒ほどで、2体の奴らが、侵入してきた。この時点で、1メートルほど開いていた。
「まだ、足りないからな」
誠はそういいながら、門を開け続ける。俺も黙って従うが、7~8メートル先に、奴らがいる。
奴らは、こちらには気づかず。アラームの鳴る校庭へと、進んでいった。
さらに門が開くと、3体が侵入してくる。奴らとの距離は、5メートルぐらいだ。
「そろそろ、やばくないか?」
俺は、奴らから目線を逸らさず、誠にそう問いかける。
門も3メートルほど、開いており。車1台が通るには、十分な幅を、確保できていた。
「んじゃ、逃げるか」
誠の言葉と共に、すぐさま、車へと駆け出す。後ろを振り向く、余裕はないが。確実に、入ってきた奴らが、追ってきている気配を、感じた。
「今回は、余裕だったな」
少し笑いながら、誠が話しかけてくる。
「一応、命狙われてるんだぞ」
「さっきので、麻痺してるのかも」
そんな、やり取りをしている間に、車にたどり着き、2人とも後部ドアから、乗り込む。俺達が乗り込んだのを、確認し佐城は、勢い良くドアを閉める。奴らは、車に突進してこようと、していた。
俺は衝撃が来ると、覚悟していたが、、、。
俺の耳に届いたのは、青山先生の言葉だった。
「皆さん、しっかりと掴まっていて、くださいね」
あれ、、、。青山先生の顔が、青くないな。
その瞬間。車が急発進し、校門へと、全速力で進んでいく。
「どけオラ!邪魔だ!」
俺達を追っていた、何体かは、そんな言葉と共に、弾き飛ばされていった。
全速力で進む車は、校門付近まで、スピードを落とすことなく、進んでいく。
「先生!このままだと、校庭に、突っ込んじゃいますよ!」
俺の言葉が届いたのか、青山先生は、急ブレーキをかけ。ドリフトしながら、校門へ向きを変える。
そんな曲がり方、予想してないですよ、、、。
俺達は、後部座席で、左右に振られ、もみくちゃになっていた。そして、再度加速した車は、俺達が開けた校門を、余裕で通過していった。