ペナルティー 中編
部屋の外に出ると、同じタイミングで葉月が部屋から出てきた。
「葉月無事だったか!」
「うん、他のみんなは?」
「今から居間に行って確認するところだ」
俺がそう伝えると葉月は頷いて、俺の後について来た。俺と葉月は、片手に警棒を、もう片方の手にはライトを持っている。家の中は就寝時間だったので明かりがついておらず、ライトで暗闇を照らしつつ、家の明かりを点けて進んでいく。何事もなく居間へとたどり着くと、俺と葉月以外の全員が、すでに居間に揃っていた。
「よかったわ、全員無事のようね」
俺と葉月が居間にたどり着くと母さんがそう呟く。
「ここに居るメンバーは無事でも、簡易住宅方から悲鳴が聞こえたよ」
今でも簡易住宅方から怒声や、叫び声のようなものが聞こえてきている。
「わかってるわ。全員武器は持っているわね」
母さんは全員が戦える準備が整っていることを確認する。麻陽瑠はクロスボウ、それ以外の全員は警棒を持っている。
「外は暗く視界がない状況よ、明かりは各自持っておくように」
母さんはそう言って、ライトを持ってい居ないメンバーにマグライトを渡す。
「では、行くわよ。私が先頭を進むから、みんなは周りを警戒しつつ、後に付いてきてちょうだい」
全員が頷いたのを確認したあと、母さんを先頭に俺達は簡易住宅区へと向かって行った。簡易住宅区に着くと、すでに生存者は1か所に固まっており、その周りをダーサンズや男性陣が囲い守っていた。
「みんなさん!大丈夫ですか!」
母さんは突出し、固まっている生存者に近づこうとしているデットウォーカーを屠る。
「静香さん!助かりました!」
武田さんが母さんに話しかける。
「武田君現状を説明してもらえる?」
母さんが説明を聞いている間、俺達も生存者を囲うように円になって広がる。
「室内に立って籠ることが出来ない生存者は、ここに集まってもらっています。このまま奴らを殲滅できればいいのですが、あたりが暗すぎて厳しい状況です」
「ご苦労様、現状はわかったわ。では、物資調達メンバー、その他男性陣にはこの陣形を朝まで維持してもらうわ」
「この暗闇の中、奴らを向かい討つつもりですか?」
母さんの作戦に武田さんが問いかける
「この暗闇の中、大人数を守りながら移動する方が大変よ。突発的な戦闘が多くなるから」
その後の母さんの説明をまとめるとこうだ。俺、誠、秀樹チーム、ダーサンズチーム、母さん、葉月、麻陽瑠チーム、計3チームに別れ、トライアングルの形で配置し、中心にいる生存者を守る作戦だ。
俺達のチームはバールを誠、秀樹が使い襲い掛かるデットウォーカーの動きを止め、俺が止めを刺す予定だ。ダーサンズチームは、武田さんがバリスティックシールドを使いデットウォーカーを無力化した後、残り2人で止めを刺す予定らしい。母さんの組は母さんがメインで戦闘を、麻陽瑠はその場で援護射撃を行う、葉月は他2チームに危険が迫った時に動けるようにしている。
「みんなまだ避難してくる人がいるかもしれないから、間違ってデットウォーカー以外を攻撃しないように、わかった?」
「「はい!」」
母さんの指示で俺達は陣形を変え、その場で待機する。俺達3人は手持ちのライトを使い、周辺を警戒していた。
デットウォーカー達が襲ってこないな、、、。逃げ遅れた人達を襲っているのか?
暫くの間何も起こらない時間が続いた。しかし、周囲からはデットウォーカーのうめき声が聞こえてくる。
「青山先生、今この場に何人が集まっているか数えてもらっていいですか?」
生存者の塊に混ざっている青山先生俺がそう伝える。
「酢、少し待ってくださいね」
青山先生そう言って此処に居る全員を数え始める。
「あ、新君、32人です」
「わかりました。ありがとうございます」
俺達含めこの家には65人が生活していた、残り33人はどうなっているんだ?
「母さん!」
俺は少し離れた位置にいる母さんへと声を掛ける。
「新の言いたいことは分かるわ。でも、此処に居る人達を守るには戦力を割く余裕がないの」
母さんは俺が言いたいことを察しており、俺もこの問題を解決できる提案が浮かばない。
「ママ、ここには私が居るから、逃げ遅れた人達の所へ向かって」
葉月が母さんに提案する。
「ダメよ!子供達だけを残しては行けないわ!」
「私だって十分戦えるよ!麻陽瑠ちゃんも援護してくれるし大丈夫!」
離れた位置からでははっきりと分からないが、聞こえてくる葉月の声は真剣だ。
「絶対に無理はしない事、自分の命を最優先するのよ、わかった?」
「心配しないで、何かあったらお兄ちゃんが守ってくれるよ」
おっと、その発言はかなり俺には刺さるな。これは是が非でも頑張らなければ。
「私はこの場を離れて、簡易住宅区を回って来るから、それまでは絶対に凌いでちょうだい」
「任せて」
母さんはそう言ってその場を駆け足で離れていった。
「そう言うことだから、お兄ちゃん何かあったらお願いね」
離れた位置に居る俺に葉月がそう伝えてきた。
「安心しろ、俺がお前だけは守るから」
「新お兄ちゃんは俺達の事は守ってくれないんですか?」
隣にいた誠が茶化すように問いかけてくる。
「うるせぇ、男は自分のみぐらい自分で守れ」
「へーい」
そんな会話でその場の緊張した空気が少し緩んだ気がした。その時だった、2体のデットウォーカーが葉月達の方に近づきてくる。
「葉月!」
俺がそう呼びかけると、麻陽瑠が素早く1体目をクロスボウで処理する、2体目は葉月に襲い掛かろうとしたが、軽くステップで躱され頭に警棒を叩き込まれた。
普通に俺の力を借りる状況なんて来なくないか?
この戦闘を皮切りに、デットウォーカーが数体ずつ3チームに近寄って来た。各チーム作戦通りにデットウォーカーを倒していき、今の所問題はない。
「暗いから足元気をつけろよ、デッドウォカー死体が転がっているからな」
周りの状況を確認していた俺に、誠がそう伝えてくる。誠の言った通り足元にはデッドウォカーの死体が転がっており、間違えて躓いてデッドウォカーに襲われたりしたら一溜りもないだろう。
「了解、気を付けるよ」
俺が返事を返す。母さんが離れてから10分ぐらい経つ、順調に救助できていれば。そろそろ戻ってくるだろう。
そんなことを考えていると、また周囲からデットウォーカー達がやって来る。俺は足元に注意しながら、誠と、秀樹が動きを封じたデッドウォカーに止めを刺す。自分たちのデットウォーカーを処理した後、周りに目を向ける。ダーサンズは武田さんが1体をシールドで吹き飛ばし、その間に2体目に突進し地面に押さえつけ倒していた。
武田さんって力すごいよな、消防士ってみんなあんなことできんのか?
武田さん達の方は問題なさそうなので、葉月達の方を確認すると、3体のデットウォーカーが葉月に向かっていた。1体目を麻陽瑠がクロスボウで仕留める、矢の再装填に時間がかかるので、2体目を葉月が軽く屠っていた。
葉月の方もこれなら問題ないな。
そう思っていると、3体目が葉月に襲い掛かろうとした時、暗闇の中からもう1体のデッドウォカーが現れる。葉月は咄嗟に距離を取ろうとしたが、足元にデッドウォカーの死体が転がっており、死体に足を取られその場でコケてしまった。
「葉月!」
俺は咄嗟に葉月達のもと駆け出したが、完全にデッドウォカーが葉月に襲い掛かる方が早い。2体目のデッドウォカーが葉月に襲い掛かろうとした時、2体目のこめかみに矢が突き刺さる。麻陽瑠が再装填を終え撃ったようだ。しかし、3体目がすでに葉月に襲い掛かろうとしていた
走っては間に合わない!
俺は咄嗟にインベントリーからクロスボウを取り出す、正確に狙いを定めている余裕はない、俺はクロスボウを構え矢を放つ。俺が放った矢はデットウォーカーの肩に突き刺さる。
「クソが!」
麻陽瑠は急いで矢を再装填しているが、間に合わないだろう。葉月はその場で身動きせず、両手を交差し身を守ろうとしている。
「葉月!」
デットウォーカーは葉月の目と鼻の先に居る、間に合わないそう思った時、デットウォーカーと葉月の間に誰かが割り込んだのが見えた。
「もう、詰めが甘いって何度も言ってるでしょ」
母さんだ、母さんは葉月のデットウォーカー間に割り込み、デットウォーカー頭にナイフを突き刺していた。俺は葉月が助かったことに安堵し、その場に座り込んだ。
「ま、ママ?」
何故か不安そうに葉月が母さんに話しかける。何をそんなに心配しているのか、俺は立ち上がり2人のもとへと近づいて行った。




