表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神が終わりを告げた世界で  作者: てんま
第1章 変わる世界
3/20

初会敵と脱出プラン

俺達が校庭側の入り口に辿りつくと、田中、佐城そして数名の生徒が、入り口から侵入しようとする奴ら必死に扉を抑えていた。


「誰かどうにかして!」


俺達に気づいた佐城が、こちらに向かってそう叫んできた。


しかし、駆けつけた全員が、どうすればいいかわからず、その場で立ちすくんでいた。その間も奴らは、腕を扉にねじ込み、扉をこじ開けようとしてくる。


俺はその場に駆け寄り、持っていたバールの尖っている部分で、奴の腕を突き刺す。しかし、痛みを知らないのか、そのまま腕をねじ込ませようとしてくる、俺は何度も腕に向かって。バールを突き刺す、すると骨が砕ける感触が、手に伝わってきた。


バタン!!


その音と共に扉が閉じられ、奴の腕がボトリと室内にちぎれ落ちる。

俺は返り血で制服のシャツが汚れてしまい最悪だ。


「あ、ありがとう神田君」


田中が俺にお礼を言ってきたが、ほかの面々は俺の行動に、かなり引いているようだ。

かなり顔に出てるぞこいつら、やばいやつを見る目だこれ。


「なんでこうなったんだ?」


俺は入り口に立つ田中達に向かい、そう問いかける。


「え、えっとですね。校庭の方から5人の生徒と、先生がこちらに走ってきたんです。その人達は奴らに追われていて、それでギリギリのところで閉めたんですが。奴に腕をねじ込まれてしまい、先ほどの状況に、、、」


「状況はわかった。一歩間違えれば奴らに侵入され、全員が危険にさられる可能性があったことは、理解してくれ」


俺がそう言うと、佐城が俺を睨むように見てきた。


「助けてくれたのは感謝してるわ。でも、貴方は他の人を助けたいって、気持ちはないわけ!」


現状俺は、自分の身と家族それさえ守れれば、それ以外はどうでもいいのだ。思っていることをこのまま言えば、ただ反感を買うだけだし、ここ穏便に済ませるとするか。


「助けたい気持ちは俺も同じだよ。だけど、全てを助けようとして、今助かっている命を危険にさらすのは反対だ。俺達には奴らと戦う準備も、できていないんだからな」


俺と佐城が話している間、他の面々は黙って下を向いている。現状において誰が正しいかなど、誰にも分からないのだから。佐城も、俺の言うことに納得は出来ていないが、理解はしているようだ。

不満そうに俺を睨んでくるがな。


「今回のような事が起きた時の為に、俺が集めて来た武器が必要だろ。これで追い払うぐらいは、できると思う」


「そうだな。各入り口で武器を持った者が待機し、協力して逃げてきた生徒を助けよう!」


黙って見守っていた長谷部が全員にそう言うと、下を向いていた面々は頷き合う。


長谷部みたいなリーダーシップがある奴がいると、こういう時に助かるな。まあ、先ほどの状況で動けなかった、面々に奴らと戦うことができればの話だが。


「待ってください」


入り口近くにいる一人の男が話し出す。


たしか、、、現国の教師だったか?


「そ、そんな物騒なものを使い、何をするつもりですか!た、確かに校内で生徒や、教員同士で暴動が起こっていますが。こ、これは何かしらの病気が、原因かもしれません。む、むやみに襲い掛かってくる生徒や、教員に暴力を振るうなど、教師として許可できません!」


少し興奮気味に現国の教師がそう言うが、この男は奴らが病気にかかっているだけに見えるのか?


「先生は本校舎からここに来られたんですよね?」


「そうです。この4人の生徒と、本校舎から逃げてきました」


「それなら奴らが、人を襲い殺している姿も、見ていますよね?」


「殺しているかまでは確認していません、、、逃げるのに必死だったもので、、、」


要するに自分の身大事に、他の生徒を助けようともせず、逃げてきたわけだ。


「では、あれを見てください」


俺はそう言うと、入り口の窓に向けて指を指す。

そこには先ほど侵入しようとしてきた、女生徒が入り口に、頭を何度もぶつけて居た。その姿は片腕がもげ、首には誰かに噛み切られただろう傷があり、至る所から血が流れ出ている。


「先生はあれを見て、生きている人間に見えるのですか?彼女が病気の人間に見えるのですか?」


俺がそう尋ねると、教師は顔を真っ青にし、押し黙ってしまった。なので、俺はそのまま話し続ける。


「これは映画やアニメなどで見た、ゾンビと全く一緒だ。噛まれれば感染し死に至る、そして、死ねばそいつもゾンビになる。同じ学校の生徒に、武器を振るうのには抵抗だってあります。だけど、俺は戦わずに、奴らの仲間入りなんかしたくない。みんなも、奴らの仲間になりたくないだろ?」


教師以外の全員が、俺の方を見て覚悟ができたように頷く。教師は黙って、外にいる人間だった者を見つめ続けていた。


その後は、長谷部が覚悟ができた全員に指示を出し、各々決められた場所に移動していった。


俺、長谷部、現国の教師が、校庭側の見張りだ。

俺は全員が移動したのを確認し、長谷部に声をかける。


「長谷部君、少し話があるんだけど」


「ん?どうした?」


「俺はこの後すぐにでも、ここから出て妹の居る、小学校に向かいたいんだ」


俺がそう話すと、長谷部は少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な顔に戻り答えた。


「しかし、この状況でむやみに動いても、奴らに食われるだけだぞ?」


「考えがある」


俺は自分の考えている作戦を、長谷部に話す。


「少し危険だが、そこにいる奴の制服のポケットに、スマホが入っているが見えた」


俺は、入り口に頭を何度もぶつけて居る、元女生徒を指さす。


「奴を倒し、そのスマホを使って。アラームを起動できれば、校庭に奴らを集められると考えている。

これは俺の想像というか、映画の知識道理なんだけど、奴らは音に反応するはずだ。俺はそのタイミングで、校門前の駐輪場に行き、自転車でそのまま外に脱出したいと、考えている」


俺が作戦を伝え終えると、長谷部は少し考えこんでしまった。俺一人が脱出する作戦に、協力などしてくれるわけがない、反対するのが当たり前だ。


「わかった。協力する」


長谷部は何か吹っ切れたような顔をして、俺の顔を見て来た。


「神田君には最初に助けられたし。先ほどの戦いで誰も動けないなか、率先してみんなの為に、戦ってくれた。それに、君の先ほどの言葉で、みんな戦う覚悟ができたしな、手伝う理由には十分だ」


正直断られると考えていたんだが、長谷部の中の俺は、想像以上に株が上がっているみたいだ。


俺達はその後、詳しく段取りを話し合い始める。


フェーズ1 入り口を開け、外にいる奴を中に入れる。そして、正面から奴の頭にバールを突き刺す。仮に失敗した場合、ドアを開けその後ろに隠れる予定の、長谷部がハンマーで倒す。


フェーズ2 俺が成功した場合は、奴のスマホを奪いアラームを設定し、俺が校庭の中央付近まで走り、スマホを設置する。そして、1度別館校舎に戻る。フェーズ1で俺が失敗し、噛まれた場合は、長谷部に俺を処理してもらい、作戦は終了だ。


フェーズ3 アラームが起動し、周辺の奴らを集めることに成功したら。タイミングを見て俺は、駐輪場まで走り、自転車で学校を脱出する。


「この作戦で問題はないか?」


俺がそう長谷部に尋ねる。


「問題はないが、校庭にも何人か奴らがいる、これどうする?」


「あの数ならこいつで、1体ずつ片づけるよ」


俺は持っているバールを構え、そう返事をする。


「わかった。しかし、1人より、2人の方が確実で安全だろ?」


長谷部はそう言うと、蹲ってしゃがみ込んでいる教師に、声をかける。


「先生、話は聞いていましたね?」


真っ青な顔の教師は、顔を上げ頷く。


「俺と、神田君で校庭まで、スマホを設置してきます。その間ここの戸締りを、先生にお願いします」


教師は正気か?という顔でこちらを見ている。


「し、しかし私は戦えませんよ」


「先生は安全な所で、待機して頂ければいいので、大丈夫です」


「わ、わかりました。それでよければ手伝います」


この教師ホント使えねぇ、生徒が命懸けの作戦を行おうとしているのに、自分の安全しか考えてないのか。


「長谷部君、無理に俺に付き合うことはないんだぞ?」


長谷部は、それ以上何も言うな、という雰囲気で首を横に振る。


まことそう呼んでくれ、命を懸け合う仲だろ?」


「わかった、誠ありがとう。俺は新だ」


俺がそう言うと、誠は手を俺に伸ばしてくる、俺はそれを握り返し握手をする。

俺達の命を懸けた、脱出作戦の開始だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ