避難誘導と再会 後編
風呂から出て居間に戻ると、母さんもすでに戻ってきており。葉月や雪音達と談笑をしていた。
「あら、上がったのね。今日はこの後炊き出しをするから、晩御飯は外よ。その前にみんなで、少し話し合いましょうか」
俺達はテーブルへと座ると、母さんが話し始める。
「今日避難してきた家族が12組、総勢58人だったわ。すでに、避難している家や、自宅に残る方を選んだ家もあったので、思ったよりは少ないわね」
58人か、普通に考えれば多く見えるが、この街全体で言えば、ごく僅かな人数だろう。
「暫くはこの人数を増やさないつもりよ。現状でどんな問題が起こるか、どんな不満が現れるか、避難してきた方には悪いけど、観察して今後の方針を、決めていこうと思うの」
「あの、この話って私聞いてもいいですか?」
流れで座って、話を聞いていた雪音が質問する。
「問題ないわよ。雪音ちゃんは私の親戚のようなものだもの」
雪音はそう言われると、何故か少し嬉しそうな表情していた。
お前も母さん信者なのか?
「続けるわよ。明日の午前中に家族の代表者を集めて、話し合いの場を設けよう思うの」
「どんな話をするんだ?」
俺が質問する。
「まずは現状の情報交換ね、それと、家族全員の職業なども聞きたいわ。職業に合った作業を、今後割り振っていきたいし、タダ飯ぐらいなんて、させるつもり無いわよ」
「そうすると、外に物資調達に行く人材も、募集するってことですか?」
誠も質問をする。
「そうね、そこは自己責任で有志を募るつもりよ」
外に物資を調達しに行くのは命懸けだ、強制なんかしたら暴動が起きてもおかしく無いだろう。でも、有志で参加してくれる人がいれば、今よりもっと効率よく物資調達を行えると思だろう。
「問題があるとすれば、この避難所の責任者を誰がやるかってことね」
「「え?」」
いや待ってくれ。それは母さん以外に、適任者などいるわけがないだろ。
多分全員がそう思った。
「ママ以外に適任者がいるわけないでしょ」
俺達全員が思っていることを、代表して葉月が伝えてくれる。
「私は、パパが帰ってくるまでの繋ぎみたいなものだし」
「なら父さんが帰ってくるまで、母さんが責任者でいいんじゃないか」
「、、、そう?なら任せてもらおうかしら。当面は簡易住宅の建築を、最優先で進めていくわよ。細かいことは、明日決まるわ」
話し終えると母さんは立ち上がる。
「明日は稽古もお休み、午後も自由行動よ。ゆっくり休みを満喫してね」
そう言い合えると母さんは居間を出て行った。多分この後炊き出しの準備をするのだろう、俺も立ち上がり母さんについていく。
「新と、雪音ちゃんも手伝ってくれるの?」
そう言われ、後ろを振り返ると雪音が、俺と同じように母さんに付いてきていた。
「大人数の炊き出しをやるのに1人だと大変だろ」
「私に手伝えることがあれば、言ってください!」
「2人ともありがと。でもね、子供は休んでいなさい。手伝ってくれる方達はもう、見つけているから」
会話をしていると台所にたどり着き、そこでは何人かの人達が夕食の炊き出しの準備を行っていた。
どうやら、俺達が出る幕はなさそうだな。
俺達は居間へと戻り、休んでいる他のみんなと合流した。
「そうだ、青山先生は先ほどから何をしてるんですか?」
ノートPCから張り付いて動かない青山先生に問いかける。
「え、えっとですね、避難してきた方々の名前や家族構成などをまとめて、名簿の様なものを作成しているんです」
「母さんに頼まれて?」
「いえ、私にできることはないかと思い、勝手ながら作成しています」
俺は横から覗き込むように、ノートPC画面を観る。そこには家族の名前、性別、人数、など細かく記載がされ、まとめられていた。
「これはかなり役に立つと思いますよ。青山先生すごいですね」
「学校でも同僚の皆さんに、よく事務作業を任されていたので」
きっと押し付けられていた、わけではないと願おう。
「明日の話し合いでこの名簿は役に立つと思うので、あとで母さんに報告しておいてくださいね」
「わ、わかました」
青山先生と話していると母さんがやって来て、炊き出しの準備が出来たことを伝えられた。俺達は家の外の空きスペースへとやって来ると、そこにはすでに避難してきた達が並んで、炊き出しをもらっていた。
「俺らも並ぶか」
俺が言うと、全員で最後尾へと並ぶ。俺達の番になると皿に盛られたカレーライスを受け取った。
カレーかうまそうだな。
俺達は空いているスペースに円形で地面に座る。
「外で食べるカレーってなんか特別だよな」
「わかるわー、なんかいつもより、うまく感じるよな」
「家で食べる方がおいしいでしょ」
俺と真子の会話に水を差すように、雪音がそう話す。
「女子にはわかんねーよな」
「別にわかりたくないわよ」
俺の言葉に雪音がそう返してくる。
「ま、まぁまぁ。喧嘩よしましょう。それより頂きませんか」
「そうだぞ、喧嘩なんかしたら飯がまずくなるぜ」
「「うっ」」
俺達は黙ると、全員が手を合わせる。
「「いただきます」」
カレーを食べ終え、俺達は後片付けを手伝った。炊き出しの後、雪音は両親の元に戻り。俺達もそれぞれ寝ることにした。次の日、稽古の感覚で目覚めてしまった俺は、俺は居間へとやって来た。居間には誠と、青山先生がすでに起きており、のんびり過ごしていた。
「おはよう」
「おう、おはよう」
「お、おはようございます」
「稽古がないっていうのに早起きだな」
今の時間は7時前だ、普通にならまだ寝ていてもおかしくない時間だ。
葉月なんて普通に寝てるぞ。
「稽古になれちまったのか、目が覚めちまった」
「わかるわー。俺も同じだよ」
青山先生は歳のせいだとこの前言ってたっけな。
「朝飯ってどうなってるか聞いたか?」
昨日から避難民を受け入れたので、いつも通りの朝食にはならないはずだ。
「ああ、静香さんとお手伝いさんたちが、朝早くから準備を始めてくれているぞ」
「そうか、俺達は暇だな」
「暇ってことは、良いことなんじゃねーの。最近までは色々忙しかったし、ちょっとは息抜きも必要だろ。静香さんも昨日言っていたし」
誠の言う通りだな、こんな世界になってから初めての休日だ。
「休みって言っても、特にやることもないんだけどな」
「だよなー。午前中に話し合いがあるけど、それ以外の時間は何すっかな」
外にも出ることが出来ず、家でやれることなんて、漫画を読むか、スマホを弄るぐらいしかないんだよな。
そんな会話をしていると、秀樹と麻陽瑠が居間にやって来た。
「おはよう」
「おう」
「、、、」
「何話してたんだ?」
テーブルの空いている席に座り、秀樹が問いかけてくる。
「今日の休みは何するかって話だよ」
「そんなの自主練だろ」
「熱心なのはいいけど、休めるときに体を休めておかないと、この先辛くなるぞ」
ここ2日間、母さんにボコボコにされ続けているのに、自主練とかある意味すごいぞ。
「2人とも暇なら付き合ってくれよ」
「やることもないし、いいぞ」
誠がそう返す。
「俺はちょっと、やりたいことがあるからパスで」
俺はそう言って断る。
やりたいこととは、ギフトの確認だ。昨日の戦闘でかなりの数の、Dポイントを取得できたので、それの使い道を考えたいのだ。
「そろそろご飯よー」
母さんが居間にやって来てそう伝えてくる。
「葉月はまだ寝てるの?新悪いけど起こしてきてくれる」
「了解っと」
俺以外のメンバーは外へと向かい、俺葉月の私室へとやって来た。
「葉月、飯だぞ起きろー」
ドアをノックしながら呼びかける。少し待ってみたが返事が帰ってこない。俺は恐る恐る扉を開け部屋の中をを確認する。1度部屋を見渡し確認すると、葉月はまだベットでご就寝中のようだ。
稽古が休みだからってのんびり寝てやがるな。ふむ、どんなイタズラをしてやろうか。愛する兄の口づけで起こすか、そっと頬を撫でて起こすか、悩ましいな。
ベットの横で考え込んでいると、寝ていたはずの葉月と目が合う。
「あれだよ、飯出来たから起こしに来ただけだから。別に、何かしようとしてないから」
「死ね」
起きてすぐに股間にローキックとは成長したな、、、。




