避難誘導と再会 前編
俺達は門を出る。すると、2体のデットウォーカーが居たが、こちらにはまだ気づいていないようだ。母さんの指示で、麻陽瑠が1体目にクロスボウを構える。麻陽瑠はゆっくりと深呼吸をしたが、打つことが出来ない。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。殺れます」
麻陽瑠はもう一度ゆっくりと深呼吸をし、照準をデッドウォカーに合わせる。しかし、引き金が引かれることはなかった。俺は母さんに目で訴えかけ、母さんもそれを察して、別の行動に移る。
母さんは懐から警棒を取り出すと、自ら一体目を軽く屠る。二体目はさすまたをうまく使い、デッドウォカーを転ばせると、そのまま取り押さえた。俺はすぐさまデッドウォカーに近づき、バールを頭に突き刺す。
「麻陽瑠ちゃん。大丈夫?」
「すいません、撃てませんでした。でも次は、、、」
「無理しなくていいのよ。人には出来ることと、出来ないことがあるんですもの」
麻陽瑠は下を向いてしまい、そのまま黙ってしまった。
元人間相手に簡単に引き金を引ける奴は正直言って、頭のネジが何本か外れてる奴だけだ。麻陽瑠の様に躊躇するのが、普通の反応だと俺は思う。
今日中に隣接するすべての家を回る予定なのだ、麻陽瑠には悪いがこんな所で立ち止まっている時間は無い。俺達は目的の家まで進んでいった。
この辺は比較的大きな家が多く、佐城さんの家もコンクリートの塀に囲まれ、入り口には鉄製の柵の門が付いている。俺達は敷地内に入り玄関の横に備え付けならている、インターホンを鳴らす。
「はい、、、。あら、神田さん?」
「お久しぶりです、佐城さん。ちょっとご相談があってお伺いしたんですけど」
「こんな時にご苦労様、今玄関開けるますから、ちょっと待ってくださいね」
暫くして玄関のカギが開けられ、扉も開かれる。玄関の扉の先では夫婦2人の姿があり、こちらに少し不安そうな視線を向けてくる。
「お待たせして申し訳ございません。ご相談とはどのような話でしょうか?」
夫とみられる男性が軽く頭を下げ、質問してきた。
「相談と言いますか、提案と言いますか。うちを避難所として、周辺のご家庭の保護を行うことにしたんです。無理に避難する必要はないのですが、このご時世ですので、頼れる所があった方が安心だと思うんです」
男性の方は暫く考え込んで、妻とみられる女性と相談を始めた。
「あの、食料や、住居などはどうなっているんですか?うちには年ごろの娘もいますので」
「心配もごもっともです。安心してください、食料に関しては当面心配がない量を確保してあります。居住スペースに関しては、現状個々に割り当てられる建物が用意できていないので、しばらくは道場と、倉庫を開放するつもりです」
「なるほど、、、」
男性は再度考え込む。女性の方は少し安心したような表情を浮かべている。
「わかりました。私達家族を避難所に参加させてください」
「了解しました。では、必要な荷物をまとめて玄関にお越しください。私たちはここで、待機していますので」
話し終えると一度玄関を閉め、俺達は庭で待機させてもらうことになった。待つこと15分ぐらいで再び玄関の扉が開かれた。そこにはさきほどの夫婦と、娘と思われる黒髪ロングの女性が荷物を持って出てくる。
何だろう、娘の方に見覚えが、、、
「げっ」
夫婦の娘は俺を見るなりそう漏らした。
ん?、、、。あっ!佐城ってこいつのことか!
佐城夫婦の娘は俺が学校から脱出した際に、行動を共にしたあの女だった。
出発前に聞き覚えがある名前だと持ったが、まさかコイツの家がうちの目の前だったとは。誠の奴が苦笑いしてた理由もこれか。知ってたんなら教えてくれよ。
「私は佐城和彦と申します。こっちは妻の智子です。この子は娘の雪音です。家族3人お世話りなります」
和彦がそう言うと家族3人こちらに向け頭を下げる。なぜか、雪音の方は俺を睨んでる様に見えるのだが何故だかわからない。
「こちらこそよろしくお願いします。では、行きましょうか」
俺達は佐城家の3人を囲むように門を出て家まで向かう。正直、目の前なので護衛も何もないが。
問題なく自宅の門を潜り抜け、1軒目の避難誘導が完了した。この後は事前に青山先生に行動を伝えていたので、3人を青山先生に託し俺達は次の家へと向かうこととなった。
ここ後は佐城家から右回りで順番に訪問する予定だ。道中に何体かのデッドウォカーが居たが、単体で行動している奴らだけだったので、作戦通りに倒していく。ほとんどの家庭は食料備蓄の限界を迎えており、喜んで避難を求めてきた。避難誘導も順調に進んでいき、残り半分ほどになった頃。
「デッドウォカーよ」
母さんが伝えてくると、全員が戦闘態勢に入る。デッドウォカー数は1体特に問題もない、作戦通り母さんが壁にデットウォーカーを取り押さえ、そのあとに秀樹もさすまたで動きを完全に封じる。
その時だった。戦闘場所には小道がありその近くの壁で、母さんと秀樹がデットウォーカーを取り押さえている。そこに、たまたま小道から出てきたであろうデットウォーカーが秀樹に気づき襲い掛かろうとしていたのだ。
誠と、葉月も警戒外から来たデットウォーカーに反応できていない。俺も取り押さえているデットウォーカーに、止めを刺そうとしていたので動けない。このままでは秀樹が噛まれてしまう。
「秀樹!」
シュッ!
そんな音が俺声と同時に聞こえた。そして、秀樹に襲い掛かろうとしていたデットウォーカーの頭には、矢が突き刺さっており、デットウォーカーはそのまま倒れる。
「秀樹、無事?」
クロスボウを構えたままの麻陽瑠が秀樹に問いかける。どうやら、秀樹を救う為に、麻陽瑠がクロスボウを放ったようだ。
「ありがとう姉ちゃん。俺は大丈夫だ」
その返事に麻陽瑠は肩の力が抜けたのか、クロスボウを構えるのをやめ、安心した表情になる。
俺は直ぐに拘束しているデットウォーカーにトドメを刺し、戦闘を終わらせた。その後、母さんは秀樹に近づき、怪我をしてないかの確認をした後、麻陽瑠に近寄って行った。
「麻陽瑠ちゃん、よく撃てたわね。大丈夫?」
「はい。もう大丈夫です」
そう返す麻陽瑠の表情には、何か決心がついた雰囲気を感じ取れた。きっと弟を助けたいと言う一心で、行動し、そのおかげでデットウォーカーを倒さなければと、踏ん切りがついたのだろう。
「ごめんなさい。私がちゃんと警戒していれば、こんな危ない事にわならなかった」
「いや、葉月ちゃんだけのせいじゃない。俺も油断してた、すいませんでした。」
葉月と、誠が全員に頭を下げる。
「2人とも顔を上げなさい。今回の事については。指揮官として小道の警戒を全員に、伝えていなかった私の責任よ」
母さんはそう話すと全員に頭を下げる。
「これからはもっと注意深く行動していきましょう」
母さんの話に俺達は頷いて返事をする。残り半分の避難誘導は全員がしっかりと役割を果たし、問題なくこなすことが出来た。隣接するすべての家を回り終え、自宅に戻ると夕日が沈み、夜に差し掛かろうとしていた。
「これで、本日の避難誘導は終了よ!危ない所もあったけど、みんなご苦労様でした」
玄関前で母さんはそう伝え、本日の作戦が終了した。
「私はこの後、避難してきた人達と少し話し合ってくるから、みんなは先にお風呂に入って来なさい」
そう伝えられ俺達は全員家の中へと入って行った。




