準備完了
「新、、、これは何?」
母さんが指を差した先には、俺の記憶にない(夢中になって記憶にない)建物が建っていた。見た目は3階建ての立派なログハウスだ。
三角屋根がなんとも家って感じがするな、、、
「えっと、何だか創作意欲が湧いてきて」
そんな言い訳を言うと、俺の頭にげんこつが降って来た。
痛い、、、
「倉庫の隣に大きな建物が立っていたり、門の端には小さな家が何件かあったけど、あれは実用性があっていいと思うわ。でも、これはダメよ!建物は無駄に大きくて、個室なんて12部屋あったわよ!1階なんて無駄に広いリビングじゃない!」
説明しよう。今回俺が作ったログハウスは、一階が広々とした縦横16メートルあるリビングになっており。奥には、くの字になっている階段を設置し、1階から3階へと続いている。そして一番の魅力は、2階、3階にある個室だ。建物中央が廊下になっており、左右には3部屋ずつ個室が設けられているのだ。
「結構いい出来だと思うんだけど、、、」
「却下。この建物を片づけるまで、晩御飯は無しよ」
そんな、、、俺の自信作が。ゲームでは実用性重視で、見た目や内装には拘れなかったから、現実世界でちょっと楽しくなって、作ってしまっただけなのに。
俺はそのあと1時間ほど掛け、自慢の自信作を涙目で簡易分解していった。居間に行くと、母さん以外の全員がそこに居た。各々自由に過ごしており、秀樹だけは稽古の疲れかぐったりとしている。
「片づけ終わったみたいだな」
誠が俺に話しかけてくる。
「ああ、悲しかったけど取り壊してきたよ」
俺の返事に苦笑を浮かべる誠。
「でも、ほんとに驚いたよな。帰ってきたら、あんなに沢山の建物が建ってんだから」
「ログハウス以外は、そんな時間掛からなかったぞ」
「マジか!?ギフトってホントすげぇ能力だな」
俺もそう思うけど、正直いって戦闘で役立つギフトが欲しかったよ。そんな会話をしていると、母さんが夕食を運んできた。
「あら、もう片付け終わったの?」
「建てるのも簡単だから、壊すのも簡単なんだよ」
「そうなのね、、、」
母さんは急いで、台所の方に戻る。
片づけに時間がかかると思って、俺の分用意してなかったなこれ。
戻ってきた母さんは、ササっと食事の準備をしていく。いつも通り全員で手を合わせ。
「「いただきます」」
俺の食事だけ小分けなんだけど、やっぱ用意してなかったのか、、、。
食事が終わり、全員がいつも通り居間に集まっていた。
「俺から報告させてもらうよ」
俺は今日建てた建物のことを説明していく。
「ログハウスは壊したけど、それ以外はちゃんと使える物だから。あとはブルーシートで、入り口を塞ぐだけかな」
「新のギフトがこんなにも有用なものだと思わなかったわ、ご苦労様ありがとね」
母さんは俺にねぎらいの言葉をかけてくれたが、俺はログハウスの件をかなり根に持っているからな。
「私たちの方はスーパーマーケットを5件ほど回って来たわ。これで食料の確保は完了でいいわね」
そうか、今日は食料調達のみを行った感じなのか。
「それで次は住居と思ったけど、その問題は新が解決してくれたわね。これで受け入れ態勢は整ったと言って良いわね」
そうか、これで一歩前進したってことになるのか。
「居住スペースは新が作ってくれた倉庫と、道場を開放します。足りなければもう一軒、新たに作ってもらうことになるけど、大丈夫かしら?」
「建築の方は問題ないけど、物資は少し足りないかな。でも、多分どうにかできると思う」
母さんは真剣な表情になって話始める。
「その時は、よろしくお願いね。では明日はこの家に隣接する家を、一軒一軒回っていきます。そこで避難を求める人は受け入れ、望まない人には何かしらの援助を行おうと思っています」
母さんはそこで話を一度止め、全員の顔を伺う。俺達は黙って頷く。
「明日の午後から避難誘導を行うから、今日もゆっくり休んで万全の態勢で行きましょう」
俺達は再度頷いて返事を返す。
稽古がある時点で、万全にはならないんだけど。
「ごめん、俺から一つお願いがるんだけど」
そこで全員が俺の方を見る。
「確証はまだないけど、俺のギフトってどうやら、デットウォーカーを倒さないと、クラフトできる物が増えないみたいなんだ。だから、避難誘導の時はなるべく俺に、デットウォーカーを倒させて欲しいんだ」
今日の建築中にも考えていたが、やはりDポイントの取得方法は、デットウォーカーを倒すことだと思い至った。
「んー、そうなるとデットウォーカーを、無力化する方法が必要ね」
「俺と、誠がデットウォーカーを倒す時、バールで突き刺して行動を封じ倒していたんだけど。この作戦だと難しいかな?」
「バールで無力かね、、、あ!いい物があったわ。明日までに準備しておくから大丈夫よ。では、他に何も無ければお終いよ」
誰も何もないようなので、これで話し合いは終了だ。俺は自室に戻り早めに寝ることにした。
次の日の稽古が終わり、いつも通り玄関前に集合集合している。
「青山先生は今日は自宅待機ね。それ以外の全員は避難誘導に参加してもらいます」
各々返事をする。
「とりあえず、正面の家の佐城宅から行きましょうか」
佐城?どこかで聞いたことがあるような、、、。思い出せないな。
誠の顔を見ると俺を見ながら、なぜか苦笑いを浮かべている。
何か俺の顔に付いているのか?
「出発の前にこれね」
母さんは足元に置いてあった長い棒を持ち上げる。
「さすまたよ、これでデットウォーカーの動きを封じるわ。私と秀樹君がさすまた担当ね、新はこれ」
さすまたを1本秀樹に渡す。俺にも長い、、、バールだな。
「私が先行してデットウォーカーを地面か、壁に押し込むから、秀樹君はそのあとに足元を抑え込んでちょうだい。最後は新がバールで止めを刺す作戦よ」
俺と、秀樹は母さんの作戦に頷いて返事を返す。
「基本的に単体で行動している、デットウォーカーのみを狙います。複数いる場合は、麻陽瑠ちゃんがクロスボウで数を減らしてちょうだい。麻陽瑠はデットウォーカーを打つことになるけど、覚悟は大丈夫かしら?」
「はい。問題ありません」
少し声が裏返っていたように感じた。始めて人の形をした者を射抜くのだ、誰だって怖いし、力が入るだろう。
「葉月と、誠君は基本的に、予期せぬ事態の対応をしてもうことになるわ」
「要するに特にやることなしってことね」
不満げに葉月が言い返す。だが、母さんは真剣な表情で言い放つ
「ダメよ葉月。予期せぬ事態が起こるのが実践よ。あなたの力を頼りにしているから、任せるの分かった?」
「はぃ」
まだ不満そうな葉月だが、母さんの真剣な表情に気圧されて了承した。誠もそれに続いて了承する。
「では、避難誘導開始よ!」




