もう一人のギフト保持者
無事、物資調達から、帰宅した俺達は、荷下ろしを終え。居間で休息を取っていた。今日から仲間となった2人は、どこか落ち着かない様子だったが。
まぁ、この家などを見たら、そうなるよな。
母さんが夕食の準備を終え、テーブルには夕食が並んでいる。
「また、新しい家族が増えたことを祝って。今日も豪勢にしたわよ!遠慮しないで、みんな沢山食べるのよ!」
「「いただきます」」
誠と、青山先生が来た時と同様に、2人は遠慮しながら、箸を進めていた。しかし、母さんの押し付けにより、皿にはどんどん食事が、取り分けられていく。最初は二人とも、渋々食べているようだったが。食事のおいしさに、次第に笑顔が漏れ出てきていた。
これが母さんのすごいところなんだよな。
食事も終わり、全員で後片付けを済ませる。その後は、特に何もやることを決めていないが。全員が居間に座っていた。
「そう言えば、自己紹介がまだだったわね。私は神田静香よ。そこの3人の、ママです」
母さんは、麻陽瑠と、秀樹に、自己紹介をする。
てか。3人って、誠も含まれてるのか、、、。
秀樹が「3人のママ」っと呟いていたが。口説いた相手が、人妻だったのが、衝撃的だったのだろう。
続いて、俺に目線を飛ばしてきたので。順番に全員が自己紹介をしていく。
「自己紹介はこれでお終いね。二人は今の状況を、どれぐらい理解してるのかしら?」
母さんが二人に問いかける。
「ゾンビがそこら中にいるって、ことぐらいだな!」
秀樹はなぜか偉そうに、そう言い放つ。麻陽瑠の方は、黙って居ることが多いな。あまり、話すのが得意じゃないのか?
母さんは、今知りうる情報を、事細かに2人に説明していく。
「なるほどな!なんとなくわかったぜ!」
うん。秀樹は絶対に理解していないな。姉の方は、あまり表情も変わらないので、よくわからないな。
「あの。私多分、ギフトを持っています」
淡々とした話し方で、そう伝えるのは、姉の麻陽瑠だ。
「私。銃器を持つと、その弾道予測が、見えるんです」
「ホント!?すごいわね。だから、クロスボウを持っていたのね」
弾道予測が見えるということは、命中率がほぼ100%と言うことだ。
「そうね、、、」
何故だ母さん。俺を廊下の端に立たせ、頭にリンゴを置くんだ。
「じゃあ。こんな感じで、やって見せてくれる?」
廊下の反対に居る母さんが、麻陽瑠が持っていたクロスボウを借り、構える。次の瞬間、俺の頭に乗っていたリンゴに、矢が突き刺さり、廊下の床に転がっていた。
死ねる、、、。いや、普通に心臓が止まってたぞ。多分。
母さんはクロスボウを麻陽瑠に返すと。再度、俺の頭にリンゴを乗せる。
「遠慮はいらないから。気にしないで、撃ってちょうだい」
「待って母さん。これ、俺じゃなくて、机でよくないか?」
「緊張感がないと、つまらないじゃない」
笑顔でそう返された俺は、神に祈ることしかできず。死を覚悟して麻陽瑠を見る。麻陽瑠はクロスボウを構え、ゆっくりと標準を合わせている。ギフトで軌道が分かるといっても、外したら人を殺しかねない状況で、緊張感しない人などいるはずもない。母さんは別として。
照準が合ったのか、クロスボウの手の動きが止まる。次の瞬間、矢は俺の頭の上のリンゴを貫通しており、俺の命が救われた。
麻陽瑠は、ホッとした表情を浮かべていた。
「生きてるって幸せだな、、、」
そんな俺の呟きを、誠は憐れむような表情で見てくる。
やめてくれ、俺はまだ生きているんだ!
「すごいわね。一発で成功するなんて。やっぱりギフトの力って、本物なのね」
おい、母さん。ギフトの力を、信じていなかったのか?それなのに、こんなことをしたのか!
「これからは、戦力が増えて大助かりね」
「でも、矢があまりなくて。今使っているのと、後三本だけしか」
「それなら心配いらないわ。うちには弓道で使っている、矢が余ってるから」
ホント、何でもあるよなうちには。
居間に戻り、話の続きが始まった。
「明日の予定なんだけど」
「その前にいいかな」
母さんが話しているところに、俺が割って入る。
「なにかしら」
「明日なんだけど。俺、物資調達休んでもいいかな?」
「どうしてかしら?さっきので、怖気づいたの?」
息子をチキンみたいに言うな!実際、ちょっと。ホントちょっとだよ。ちびったけど。
「今日のホームセンターで、色々物資を揃えられたから。明日は試しに、建築をしてみたいんだ」
俺はそう提案してみる。決して、稽古の後の物資調達が辛いから。嫌だってわけじゃないんだらね!
「そうね、、、。どのぐらい、建物が建てられそうなの?」
「多分だけど。簡易的な建物なら、2、3軒かな」
「わかったわ。じゃあ、明日は新抜きで、物資調達に向かいます」
俺の提案は受け入れてもらえたようで。危険な物資調達に行く、みんなには悪いが。明日はギフトの、建築能力の確認が出来そうだ。
その後は、明日の予定についての話し合いが進められ、特に何もなく終了した。今は自由時間なので、風呂に入って、居間でテレビを見ている。
テレビでは一昨日と変わらず、ニュース番組が流れている。
「えー、突然ですが発表があります。我々はこれまで沢山の、情報を発信してまいりましたが。このスタジオの安全確保が、難しくなってきました。私たちはこれから、避難所へ避難を開始いたします。ですので、このテレビ局の報道も、これが最後となります。テレビをご覧の視聴者の皆様、今後とも安全を心より祈っております」
ニュースキャスターがそう言うと、テレビの画面が放送休止状態となる。他の局に変えてみたが、どこも休止状態で、完全にテレビでの情報集が、出来なくなってしまった。
日を増すごとに、デットウォーカー達の数も増えてきている、ということだろうか。この先何週間、何ヶ月もしたら。生きている人間より、デットウォーカー達の数が、多くなっているのではないか。
先の見えない不安が、俺の心に暗い感情を落としていく。
「て、テレビ観れなくなると。やることが、なくなってしまいますね」
呑気に、そんなことを呟く青山先生を見て。なんでこと人は、そんな平然としていられるんだ、と思ったが。この人はホントに、何も考えていないんだと思う。そう思うと、何故だか笑いが込み上げてきて、さっきまでの暗い気持ちが、晴れていった。




