スーパーマーケットと劣等感 前編
俺達の乗った車は、門を出て母さんの案内のもと、スーパーマーケットへと向かっていた。
「奥さん道案内は任せたぜ!どんな場所でも、俺とコイツで送り届けてやるぜ!」
ハンドルを持って、豹変した青山先生が、母さんへと向かってそう話す。
「あら青山先生、男前ね。じゃあ、うちのパパが居るところまで、行ってもらおうかしら」
「違うでしょ!目的地はスーパーマーケットでしょ!」
思わず、ツッコみを入れてしまう。母さんは「冗談よ」と微笑みながら、言っていたが。今の青山先生なら、向かいかねないので、やめて欲しい。
スーパーマーケットへの道中、デットウォーカーは見かけたが。生きている人たちの姿を、一人も見かけることはなかった。ほかの人達は、家に立て籠っているか。自衛隊などが、管理している避難所へ、避難しているのかもしれないな。
特に何事もなく、15分程でスーパーマーケットへ、とたどり着いた。
「みんなついたぜ!」
スーパーマーケットの駐車場に車を止め、青山先生がそれ達に声をかけて来た。母さんはスッと、真剣な表情になり、俺達へ話しかける。
「先生はエンジンを止め。車で待機してちょうだい」
青山先生は頷いて、車のエンジンを止める。すると青山先生は、いつも通りのおどとした、雰囲気に戻る。
あの豹変モードって、エンジンが付いている間、限定なのか。
「3人は私に続いてスーパーマーケットへ、入って行いくわよ。その後は、店内に居るデットウォーカーを殲滅後、食料調達をして車に戻ってくる。これが大まかな流れよ」
母さんはそこで話を一度区切り、全員が真剣表情で続きを聞く。
「店内の戦闘では、3人はなるべく私から離れないように。私がなるべくデットウォーカー達、各個撃破していくから、無理して戦闘に参加しなくていいわ。もし私以外が、デットウォーカーと戦闘になった場合。私が助けに入るまで、なるべく接近はしないこと。デットウォーカーの攻撃は直線的だから、回避を優先ね」
母さんが話し終えると、全員の顔を見渡し、最後にこう言った。
「デットウォーカーに、噛まれたらお終いよ。絶対、全員無事に車まで、帰ってくること。分かった?」
全員が頷いて返事を返す。母さんは、全員のスイッチが入ったのを確認し、1人車を降りる。
「じゃあ。先ずは、店内までのお掃除してくるから、車で待っててね」
警棒を両手に、外に出た母さんは。駐車場から店内までに居た、デットウォーカー達を、次々に屠っていく。
母さんが輝いて見えるのは、俺だけだろうか。
5分ほどで戻ってきた母さんは、後部座席の扉を開け、俺達を外へ出るよう促す。
「行くわよ」
外に出ると母さんを先頭に、俺、誠、葉月の順番で、一列にスーパーマーケットへと、向かって行く。入り口の前で、一度立ち止まり、外から軽く店内を見渡す。店内にはデットウォーカー達が、何体かうろついているのが、確認できる。
「目視できるので5体か。他にも見えない所に、いるかもしれないな」
「そうね。全員周囲の警戒を怠らないように。デットウォーカーを発見したら、私に報告してちょうだい」
全員が頷くと、先ほどと同じ陣形で、店内へと入って行く。店内に入ると、直ぐに1体目のデットウォーカーと接触した。母さんはスッと近づいて、デットウォーカーが知覚できる、間合いへと入る。デットウォーカーは母さんに気づくと、「グァ」と奇声を上げ、母さんへと襲い掛かった。
母さんはデットウォーカーの突進を、悠々と躱し。そして振り向きざまに、デットウォーカーの後頭部へ、警棒を振るって屠る。
一連の流れを見ていて一瞬、胸の中でモヤっとした感情が現れたが。今は戦闘中などで切り替えよう。
その後も特に問題なく、母さんがデットウォーカー達を屠っていき、店内の掃討が完了した。
「お掃除も終わったわね。ここからは食料調達よ、新と、誠君は、保存食を集めてちょうだい。私と、葉月は、生鮮食品コーナーね」
母さんの指示で、俺達は移動して行く。俺と誠は、保存食コーナーへとやって来た。
「いやー。静香さんって、マジ何もんなんだ?」
段ボールへ食料を詰め込みながら、誠が話しかけてくる。
「言ってなかったっけ。母さんも、元自衛隊員だよ。父さんと、母さんが、酒を飲んでた時に、特戦群で出会ったとか。なんとか言ってたな」
「特戦群が何かわかんねーけど。お前の親父さんを見る限り、エリート部隊だろうな。ホントお前の家族は、規格外だよ」
「俺以外はな、、、。俺には父さんと、母さんの、遺伝子が遺伝しなかったみたいだけど」
誠は「そうか?」と返してきたが。俺が黙ってしまったので、会話が終わってしまった。その後は、淡々と食料を詰め込んでいく。詰め込み終わった段ボールを、入口へと運んでいる最中。誠がまた、話しかけて来た。
「なんか、わかんねーけど。新が家族に対して劣等感?みたいなのを感じてるんだったら。それは俺からしたら、違うなって思うわ」
誠の言う通りで、俺は家族に対して、劣等感を感じている。昔は稽古を続けて、いつか父さんや、母さんの様に、強くてすごい人間に、なれるんだって思っていた。中学三年生の頃ぐらいだったか、葉月に稽古中の試合で、勝てなくなった。
その時思ったんだ。ああ、俺には才能がないんだ。父さんと、母さんの遺伝子が、俺には遺伝しなかったんだって。そのあとは、稽古も次第に参加しなくなって。学校以外は、部屋に引きこもって、ゲームばっかりやっていた。
そんなことを、思い出していると。誠は話を続ける。
「俺から見たらさ、新も十分にすげぇよ。そりゃあ、他の家族は強いくて才能に、恵まれているんだと思うけど。俺は新の行動力に、命を救われたんだぜ。俺から見た新も、才能ってのがあると思うぞ。悪いな、うまく言えなくて」
「いや。何か、気を遣わせて。ごめんな」
「俺が余計なこと、言っちまったのが原因だからな。謝んなって」
なんだこの会話は、、、
お互い謎の空気になったのを、察したのか。顔を突き合わすと、噴き出して笑いあった。
「よし。残りも、片づけちまおうぜ」
残りの食料を段ボールへ詰め込み、入り口まで運んだ。母さん達まだ、作業が終わっていないようなので、戻るまで入り口で待つこととなった。




