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男3人は私を掴みかからんとする勢いで突進してくる。1人の手が私に触れようと言う時、光太郎は刀を抜いた。そこから先は、時の流れが至極緩やかになったような気がする。光太郎が刀を抜くと、一瞬にも満たない速度で、男の腕に刀が振るわれた。三日月の様な残像が見え、その太刀筋は非常に美しく思わず見惚れてしまうものだった。

「うおあぁ!?」

男は腕を押さえて悶絶した。だが、そこで私は違和感に気がついた。男の腕は、光太郎が切ったはずではなかったか。切り伏せたはずの腕は、何一つ違わない様子で、もとある位置についていた。そこで私はやっと、光太郎が持っている刀が、木刀であることに気づいた。どうやら男三人衆も、斬られたはずの腕が元あった位置に寸分違わずついていたことに困惑している様だった。そしてその困惑は、光太郎に急所を突かれるには十分な時間を作った。男どもが困惑して動けない間に、光太郎の刀は3人の首を流れる様な動作で打ち抜いた。次の刹那、男どもは白目を剥いて倒れてしまった。

「口ほどにもねえなあ。」

光太郎は笑いながら言った。彼の剣技は本当に見事なものだった。そして、夢と同じ、どこか懐かしさを感じるものだった。

「あの、ありがとうございます。おかげさまで、ちょっとすっきりしました。」

私も、笑いながら答えた。そして、私は倒れた男たちに向かってしゃがみ込むと、男たちの顔に泥を塗ってやった。

「これは、今まで受けた仕打ちの仕返しです。ざまあみろ!」

次にこの男たちが起きたとき、どんな反応をするか楽しみだ。仕返しといっては、少々物足りない気もするが、いま男たちに目を覚まされては困るので、このぐらいにしておく。また怒って追いかけられることがない様、足跡を残さないでおこう。そうすれば、もうあの村の者たちと関わることもないだろう。

「こいつらが目を覚ます前に、先を急ぎましょう。」

「そうだな、余計なことで道草くっちまった。おいてかれんじゃねえぞ!」

そうして、私と光太郎は、男たちを残して走り出した。男たちが目を覚ましたとき、私たちのことが視界に入れば、また追いかけ回される。なんとしてもそれは避けたい。その思いで、私は無我夢中で走った。途中、後ろを少し覗いてみたが、まだ男たちが目覚める様子はない。そうして男たちが見えなくなるころ、とうとう男たちの目が覚めることはなかった。こうして私は、あの忌々しい村との訣別を果たし、街に向けての旅路を歩み始めるのだった。


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