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カネ喰ひ蟲

〈夏寒し掟を破る言葉あり 涙次〉



【ⅰ】


 金尾は悩んでゐた。だうやら、と云ふより、間違ひなく、一味の金庫から、カネが拐帯されてゐる。

 だう勘定しても、金額が合はない。

 金庫のキイ№は、カンテラと自分しか知らない。

 よもや自分が【魔】に催眠狀態にされ、拐帯の手助けをしてゐるのではないか... そんな疑心暗鬼に、彼は陥つた。時代は「ニュー・タイプ【魔】」主流となつてゐる。だう云ふ手に出てくるか、全く予想がつかないのである。



【ⅱ】


 その事は氣付いて直ぐ、カンテラに話した。だうせ隠したつて、何になるもんぢやなし、また、隠し立ては、カンテラと云ふ御仁には、通用しないだらう、さう思つたのだ。


「うん。金尾くん、あんたが憑依されて拐帯に手を貸してゐる、つて線は、まづないね」-「分かるんですか!?」-「うん。あんたの顔には、憑依はあり得ないつて云ふ、精氣が感じられる」-これで一つ、金尾の肩の荷が下りた。しかし疑問は殘る。「一體誰が-」-カンテラは云ふのだ。所内の人間の仕業ではなからう。カネ、もう要らないよ、つて云ふところ迄、彼らには渡してゐる。現狀の配当に、文句ある者はゐなからう。


「恐らく【魔】だな」



【ⅲ】


 然し、結界内の事である。然も、目撃は誰もしてゐない。一體、どんな【魔】が、一味のカネに手出しゝてゐる、と云ふのだ? 金尾には分からなかつた。


 で、そこでテオの出番、である。「えーと、錢喰ひ蟲の【魔】で、然も結界を物ともせぬ、と」とPCにインプット、暫くして後、回答を得た。


「あつたあつた。これでせう。『カネ喰ひ蟲』。そのまんまだけど・笑」


 更にテオが云ふには、防犯カメラには冩つてゐるのではないか。で、一同観てみた譯だが...



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈汁饂飩熱き五月に注文す焼き饂飩と云ふ選択なきかと 平手みき〉



【ⅳ】


 金尾が金庫の扉を開けてゐるシーン、何やら影が冩り込んでゐる。「こいつ、かな」とカンテラ。


 テオの云ふところに拠ると、「カネ喰ひ蟲」は、何にカネを使ふ迄もなく、その名の通り、カネをむしやむしや喰らふらしい。だから、彼は金庫に閉じ籠り、カネを喰らつてゐる- それで、額面通りのカネが殘つてゐない、と云ふ事態が出來(しゅつたい)、してゐるのだらう。


 カンテラ、じろさんとごによごによ。で、「金尾くん、金庫のドア、開けるよ」-「は、はあ」


 カンテラ、金庫の中を、脇差しでつゝいてゐる。なる程! で、影、が堪らず出てきたところを、じろさん、掌底で潰してしまつた。


 潰れてはいるものゝ、「カネ喰ひ蟲」正体を露はにした。見ると、でかいごきぶりである。年経たごきぶりの【魔】だつた譯で、これが「ニュー・タイプ【魔】」なのかな、と云ふ「ベタ」なその正体であつた。


 カンテラ、「『シュー・シャイン』が齡食つたら、かうなるのかな?」一同笑つてはゐたが、氣が濟まぬのは「シュー・シャイン」である。「私は、そんな事、断じてありません!!」-「まあさう怒るな。兎に角、早めに一件落着して良かつた」とカンテラ。金尾が焦つてゴーレムにならないで濟んだのは、却つて安心出來る結末である。ゴーレム登場すれば、事務所がまたどこか壊れるから・笑。あ、それは「龍」か。金尾くん、失敬失敬(永田)。



【ⅴ】


 不幸中の倖ひ。金尾の精勤のお蔭で、金額的なロスは余りなかつた。「カネ喰ひ蟲」も、カネ、これだけあるんだから、焦つて食ふ事ないな、と思ったのか。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈錢龜や稚き内は全て良く 涙次〉



 お仕舞ひ。一番心配してゐたのは、遷ちやんこと遷姫だつたんぢやないかな。金尾が苦勞すると、彼女も心に負担が掛かるのであります。ぢやまた。


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