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第89話 魔導レーザー測定器と、天空神殿の封印

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。


作品ナンバー2。

ほっと一息ついていただければ幸いです。

エルダの森を突破した達夫たちが辿り着いたのは、広大な平原の中に忽然と現れる、白銀に輝く建造物だった。


「……これが、天空神殿……!」


エイラが、呆然と呟く。


古代文明が築いたと伝えられるこの神殿は、長らく封印され、誰一人内部に踏み入れた者はいないという。


だが、神殿の奥深くには、莫大な魔力の源が眠っている——そんな伝承も存在していた。


「中に入れれば、俺たちの旅にも大きな助けになるかもしれないな」


達夫は目を細めた。


しかし、問題が一つあった。


神殿の入口には、幾何学模様のような無数のラインが刻まれており、その間にびっしりと魔力の罠が張り巡らされているのだ。


うかつに踏み込めば、たちまち爆発するか、あるいは空間そのものに閉じ込められる危険がある。


「うーん……これは困ったね……」


マリィが神妙な顔をしている。


「魔力探知魔法でも、全部を把握するのは難しいな……」


ロックも腕を組んだ。


エイラが達夫を見た。


「何か……対策、あるの?」


達夫はニヤリと笑った。


「もちろんだとも。これの出番だな」


彼が懐から取り出したのは、手のひらサイズの奇妙な筒状の道具だった。


側面には魔法陣が刻まれ、先端には小さなレンズがはめ込まれている。


「これが……"魔導レーザー測定器"だ!」




——魔導レーザー測定器。


達夫が異世界技術と現代科学を融合させて生み出した、画期的な装置だ。


内部で極細の魔力ビームを生成し、目に見えない魔力の密度や流れを即座に可視化する。


特に、罠や結界のような、通常では探知しにくい魔法構造に対して圧倒的な性能を発揮する。


測定精度は驚異的で、たとえ髪の毛一本分の隙間すら逃さない。


「よし、始めるぞ」


達夫は魔導レーザー測定器を起動させた。


レンズ部分から、青白い細い光線が一直線に伸びる。


彼がゆっくりと手を動かすと、光線は空中に走る見えない壁に当たった。


ピピピッ——!


本体が小さな音を立て、瞬時に空中に複雑な魔力ラインを浮かび上がらせた。


まるで、蜘蛛の巣のように張り巡らされた罠の網目。


「すごい……! こんなにはっきり……!」


マリィが感嘆の声を上げる。


「これなら、どこを通ればいいかわかるな」


ロックも感心している。


「……ここから、この線を避けて、左に三歩。そのあと、しゃがんで一歩前進」


達夫は測定器でラインを読み取り、進むべきルートを即座に割り出していった。


まるで地雷原を踏破する兵士のように、正確なルートを示していく。


仲間たちは緊張しながらも、達夫の指示通りに慎重に進んだ。


汗がにじむ。


少しでも間違えれば、命に関わる。


だが、達夫の読みは完璧だった。




——神殿内部。


無事に結界地帯を突破した一行の前には、さらに驚くべき光景が広がっていた。


「これ……全部、古代の魔導装置……?」


エイラが目を丸くする。


壁には動力管のようなものが張り巡らされ、床には魔力を流すための水晶ラインが走っている。


中央には、巨大な扉がそびえ立っていた。


——天空神殿の最深部へと通じる扉。


だが、その扉もまた、異様な結界に包まれていた。


無数の小さな魔法陣が回転し、隙間から黒い光が漏れている。


「これは、普通の開錠魔法じゃ無理だな……」


ロックが苦い顔をした。


「でも、あの測定器なら……!」


マリィが期待に満ちた目で達夫を見つめる。


達夫は頷いた。


「……やるしかないな」


再び、魔導レーザー測定器を構え、扉に向かってビームを走らせる。


ピピピピピ——ッ!


反応はすさまじかった。


測定器のスクリーンには、複雑きわまりない結界構造が三層、四層と重なって映し出される。


「こいつは……とんでもねぇな」


達夫は舌を巻きつつも、冷静に作業を続けた。


レーザーで結界の弱点を探り出し、順番に小さな魔力針を突き刺していく。


まるで、金庫破りのような繊細な作業だった。


失敗すれば——即座に、神殿ごと爆破される危険すらあった。


しかし、達夫の手は一切揺れない。


(……こういう作業、俺、昔から得意だったもんな)


地球でサラリーマンをしていた頃。


何百もの家電のトラブルに立ち向かい、精密な修理作業を繰り返してきた経験が、今ここに生きていた。


そして——


カチリ。


乾いた小さな音。


「……開いた」


達夫が呟くと同時に、巨大な扉が静かに開き始めた。


ギギギギギィィィィィ………


奥から、まばゆいばかりの光が溢れ出す。




最深部には、巨大な魔力炉が眠っていた。


「これが……天空神殿の心臓部……!」


エイラが震える声を上げた。


無限にも思える魔力が、静かに脈動している。


「これを持ち出すのは無理だが……制御できれば、俺たちの旅にとって、計り知れない力になるぞ」


達夫は、目を細めた。


しかし、それにはもう一つ、大きな課題が残っていた。


(この魔力を制御するシステムを、現代風にアップデートする必要がある……)


次なる挑戦が、達夫たちを待っていた。


だが、それも、きっと乗り越えられる。


仲間たちと共に、知恵と技術で未来を切り開いていくのだ。


達夫は、そっと魔導レーザー測定器を撫でた。


「ありがとう。お前がいなかったら、ここまで来られなかった」


そして、仲間たちに振り向く。


「さあ、次はこの魔力炉を……俺たちの手で蘇らせよう!」


新たな冒険が、再び動き始めた——!

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