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第67話   魔導プロジェクターと、真実を映す光

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。


作品ナンバー2。

ほっと一息ついていただければ幸いです。

戦争の嵐がルメリア王国を過ぎ去った後、王都アステリアでは復興の兆しと共に、新たな問題が浮かび上がっていた。


ゾルタニア帝国との和平交渉が進む一方で、王国の一部貴族や民衆の間には、「家電兵器が戦争を長引かせた」との疑念と不満が根強く残っていたのだ。


そして、その矛先は佐藤達夫へと向けられていた。


「便利な道具が、戦争を加速させたのでは?」


「魔導ドローンがなければ、戦闘はここまで拡大しなかったのでは?」


そんな声が、街のあちこちで囁かれていた。


国王ラダン・エルトマール四世は、達夫を擁護していたものの、国の統治者として民意を無視することはできなかった。


「達夫、そなたの功績を疑うつもりはないが……」


謁見の間で、ラダンは静かに言葉を続けた。


「今こそ、そなたが創った“力”がどのようなものであったのか、正しく国民に伝える必要があるだろう」


達夫は、静かに頷いた。


「ええ、陛下。私も、そう思っていました」


その夜、達夫は魔導技研ラボの奥深くにある実験室で、ひとつの装置に向かっていた。


それは彼が極秘裏に開発を進めていた新たな魔導具――


「魔導プロジェクター」だった。


この装置は、魔力を帯びた映像を空中に投影し、誰にでも視覚的に「記録された過去」を再現することができるというものだった。


過去の戦闘記録、技術開発の経緯、そして現場での人々の声を、魔石に蓄積された魔力と記憶素子から呼び出し、再生できる仕組みだ。


「これが……真実を映す光になってくれればいい」


彼は静かに魔導プロジェクターに手を添えた。


数日後、王都アステリアの中央広場。


そこには、魔導プロジェクターが設置され、王国中から多くの民衆が集まっていた。


広場の上空に浮かぶ魔法の結界に、淡い光が投影され、静かに映像が始まる。


最初に映し出されたのは、ゾルタニア帝国軍による侵攻直後の前線基地の様子だった。


人々の混乱と恐怖、避難所で泣く子供、そして必死に支援物資を運ぶ王国兵たち。


次に、達夫が開発した魔導空気清浄機や携帯ラジオが、どのようにして民間人の命を救っていったか――その記録が映し出された。


「マスターの装置がなければ、私たちは生き延びられなかった……」


「この子の喘息が治まったのは、魔導空気清浄機のおかげです……!」


そして、映像は徐々に、魔導兵器が使われた戦場の記録へと移る。


魔導ドローンが敵の魔導戦車を上空から偵察し、効率的な撤退ルートを確保する様子。


魔導ヒーターで凍土の前線基地が温められ、凍傷を免れた兵士たちの安堵の声。


映像の最後には、達夫が魔導技研でひとつひとつの装置に込めた思いを語る姿があった。


「私は、家電製品を“兵器”として作ったつもりはありません。誰かの命を助け、暮らしを豊かにするために――そのためだけに、作ったのです」


プロジェクターが映像を終えると、広場には沈黙が訪れた。


だが、その静けさは、やがて拍手へと変わっていく。


「……ありがとう、達夫殿」


「私は、あなたの装置に命を救われたんです……」


「戦争が悪い。道具ではない」


人々の間に広がっていた疑念は、魔導プロジェクターの“真実の光”によって、少しずつ溶けていった。


だが、それは同時に、“情報”というものの力の大きさを人々に再認識させることにもなった。


「これからは、この魔導プロジェクターが、平和のために使われることを願います」


そう言ったのは、王国の報道局に勤める若き魔導記者、ルクス=メーヴだった。


「視える真実は、人の心を動かす。嘘ではなく、記録された“事実”を、皆に伝える手段として――これは、革新的です」


その言葉に、達夫は静かに頷いた。


「今後、戦場での記録、災害時の情報共有、教育にも応用できるはずです。“目で見ることのできる記憶”は、きっと未来に活かせる」


王国では、魔導プロジェクターが各地に導入されはじめ、真実の記録と伝達の新時代が幕を開けた。


映像による情報伝達が可能になったことで、誤解や偏見が減り、民の信頼も取り戻されつつあった。


一方、ゾルタニア帝国もこの魔導プロジェクターに強い関心を示していた。


しかし、それはあくまで「情報統制と洗脳手段として」の利用を目論んでのことだった。


達夫はそれを知り、心に決意を新たにした。


「技術は、誰かを支配するためのものじゃない。誰もが、自由に、正しく、“見える”世界で生きていくためのものだ」


その決意を胸に、達夫は新たな魔導具の設計図に向き合っていた。


平和と真実の架け橋となるために――。

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