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第62話  消えた補給隊と、魔導GPSの追跡

いつもお読みいただきまして、ありがとうございます。


作品ナンバー2。

ほっと一息ついていただければ幸いです。

砂漠を越えて広がるゾルタニア帝国との国境地帯――その中でも過酷な環境で知られる〈ヴァーレン荒地〉にて、ルメリア王国の補給隊が忽然と姿を消した。


「……三日前の出発以来、連絡は途絶えたままか?」


王国軍の前線基地で、佐藤達夫は眉をひそめた。


補給物資の輸送は戦局を左右する。


今、王国軍は大規模な戦闘の準備を進めており、この補給隊の失踪は致命的だった。


補給隊には、達夫が新たに試験導入していた“魔導GPS”が搭載されていた。


それは、かつての地球にあった全地球測位システム(Global Positioning System)の概念を基に開発された魔導技術であり、特殊な魔力波を用いて遠方の対象の現在位置を特定できるという画期的な装置だった。


「位置追跡の魔導装置……使えるかもしれない」


達夫はすぐさま、自らが設計した魔導GPSの端末にアクセスし、追跡を開始した。


「マスター、補給隊の反応、まだあります!」


助手のラゼルが指差す地図上には、薄く点滅する青い光。


位置は、ヴァーレン荒地の北側、古代遺跡が点在する「死の谷」と呼ばれる地帯だった。


「あんな場所に……これはただの事故じゃないな」


達夫はすぐに救援部隊の編成を提案、自らも同行する意志を示した。


「前線基地にとっても、君に何かあっては困る」


軍司令官は渋い顔をしたが、達夫の強い意志と、魔導GPSの操作が達夫にしかできないこともあり、特例として出撃が許された。


数日後、一行はヴァーレン荒地を行軍していた。


乾いた風、岩肌をなでる砂、視界を奪う砂嵐――地形は険しく、進軍は困難を極めた。


しかし、魔導GPSは正確に光を灯し続けた。


「おかしい……この座標だと、補給隊の位置は――」


ラゼルが呟いた先には、崩れかけた古代遺跡の入口があった。


何世紀も放棄され、すでに地図からも消えていたはずの遺構。


その地下深くに、反応は存在していた。


一行は慎重に遺跡の内部へと踏み入った。


魔導ランタンが灯す明かりの中、瓦礫と化した石柱、魔力が腐敗した残滓の漂う空間を進んでいく。


そして、最奥部にて彼らはそれを見つけた。


「……生きている!」


洞窟内の一角、簡易テントを張って身を寄せ合う補給隊の姿があった。


魔物の襲撃で荷馬車が転倒し、逃げ込んだこの場所で出口を見失い、身動きが取れなかったのだという。


「本当に……助かった……!」


補給隊員の一人が、達夫の腕にすがり涙をこぼした。


帰還後、補給隊の全員が無事であったことは、王国中に安堵の波を広げた。


そして今回の功績により、魔導GPSの有効性は広く認められることとなる。


「魔力通信と測位……かつて人類が夢見た“見えない糸”が、ついに形になったな」


達夫は、工房に戻ってからもGPSの改良を続けた。


魔導素子の調整、消費魔力量の軽減、荒天時でもブレない安定性の向上――家電製品という枠を越え、戦場で人命を救う“道具”へとその姿を変えていく。


そんな中、ラゼルがぽつりと呟いた。


「マスター、あなたが創った家電が、こんなふうに人を守る力になってるのって……なんだか、不思議ですね」


「技術ってのは、そうあるべきなんだ」


達夫の目は遠くを見つめていた。


「戦争は、いつか終わる。そのあとに何が残るかが、大事なんだよ」


魔導GPS。


それは単なる追跡装置ではなく、人の絆を繋ぎ、未来の希望を示す光となった。


そして――


ルメリア王国は今、変革の只中にある。家電と魔導が交わることで、戦乱の大地にも新たな秩序と平和の可能性が芽吹きつつあった。


その中心に、ひとりの“元・家電オタク”が立っていることを、誰もが忘れてはならなかった。

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