一般回線・1
『もしおさんもしおさんー?』
「…………」
『も、もしやもしこさんでしたか! 失礼しましたっ!』
「…………紗綾さん」
『およ、その声はゆりちー! 偶然だねぇ!』
「あー、いや、紗綾さんってそんな人でしたよね。久しぶりでどう反応していいか分かりませんでした……あと、紗綾さんはこの時間は家に私しかいないこと知ってるんですから、偶然でもなんでももないんですけどね」
『細かいことはいいじゃない。ところでうちの子が九州支部にお預かりされることになったらしいのよね』
「…………それで、なんです?」
『だから、下宿させてあげて、うちの彩っ』
「下宿って……うーん……」
『駄目? いや、そんなことはないわよね』
「確かに部屋は余ってるのでいいことはいいんですが……その」
『あーっ、よかったよかった! 実はもうそっちに色々荷物送っちゃったのよ!』
「あ、相変わらずの強引さで……もし私が断ったらどうするつもりだったんですか……?」
『断らせない。脅すわよ、ゆりちーの真っ黒な歴史をひっぱりだしてお子さんに洗いざらい――』
「分かりました、二言はありません。彩さんは私が責任をもって預かります」
『うんうん、それでいいのよ! 明日にはそっちに着くと思う!』
「あ、明日!? 急過ぎませんか!?」
『つい連絡するの忘れてたのよ』
「下宿の依頼をついで忘れるなんて……紗綾さんらしさを痛感します」
『そんな、照れるわー!』
「褒めてません! ……もう、切りますよ? 準備もあるんですから……」
『大変ねー……頑張って!』
「誰のせいで――あ、切れて……はぁ」