9話 契約を結ぼう
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「……本当にS品質だね。となると、……そうか。そうか。うん、いいよ。最高だよ。予想を超えて来てくれた。A品質の初級ポーションが出てきたんだ。だからA品質の中級ポーションが出てくるのか、A品質の初級魔力ポーションが出てくるのかとおも思ったんだ。S品質、これは本物だよ。誇って良いよ。S品質を作れる薬師には、俺は会ったことがない。殆ど王都に抱え込まれてしまっているからね。在野に居る事がまずもって珍しいんだ。それが例え初級ポーションであってもだ」
「そこまで珍しいんですか?」
「ああ、珍しいね。普通は子供の内に貴族に買われて修行を行う事になっているから。そもそも、先天スキルを確認された時点で買い手が付くくらいには有用なスキルなんだよ。在野にこうして居るって事がまず珍しいんだ。本当に何で貴族に買われていないのか、不思議だよ」
「あの、先天スキルは、関係なくてですね。「調薬B」の後天スキルだけで勝負しているので、先天スキルは関係ないといいますか、いや、全く関係ない訳では無いんですけど」
「……先天スキルは関係ない? そんな馬鹿な。後天スキルではどうやってもS品質に届くことは無いと言われてきているんだよ? それを覆したのかい?」
「まあ、先天スキルも使いはしましたけど、調薬に関しては「調薬B」ですね。僕が使った先天スキルは「精霊視S」です。なので、環境が整えばですが、調薬は後付けでもS品質は作れます」
「……これは驚いた。今日は本当に驚かされてばかりだ。「調薬B」でしかない薬師がS品質を作り出すという事も可能だと言う事は、……誰にも言っていないかな?」
「いえ、孤児院の友達、冒険者組には言ってしまっています。……不味かったですか?」
「うーん。微妙な所だけど、こっちにとっては悪い訳では無い、かな。貴族に取り込まれずに在野にこうした薬師が居る事は確認できたし、繋がりも出来た。……貴族家にはこのことはバレていないんだろう?」
「そうだと思いますけど……。貴族家ってここの貴族様の事も知らないですし」
「ならば、君はクレマンティウス商会が囲い込もう。そういう契約を結ばないかい? そうすれば、例え貴族家に見つかったとしても、引き抜かれる様な事は無い。このままの暮らしを続けるのは無理だけれど、ある程度自由の利く生活を送ることが出来ると思うんだけど、どうだい?」
「契約に関しては、こちらも出来るならしておきたいと思います。その、流石に貴族様に捕まって薬を作り続けさせられるのは、ちょっと困るというか」
ちょっとばかり、話が大きくなってきたんだけど。え? S品質って先天スキルでしか作れないのか? 思ったよりも発想力で何とかなってしまったというか、あれくらいなら誰でも思い付きそうな気がするんだけどな。普通に出来たよな? 「精霊視S」と「テイム」が無ければ意味がない話ではあるんだけど、それがあればある程度自由に作り出せると思うんだけど、どうなんだろうか。
でも、こっちが思っていた以上の価値で買い取ってくれるんだから、好都合ではある。価値としては極上って感じなんだけど。こんなに高く売るつもりじゃなかったんだけどなあ。天井知らずに値段が上がっているような気がするんだけど。まあ、こっちとしては有難い事ではあるんだけどさ。ある程度自由も利くって言うんだから。自由がない生活なんて嫌に決まっているだろう? そんなのは嫌だ。飼い殺しにさせられるのは嫌だ。僕はもっと自由に色々としていたいんだよ。
「じゃあ、早速だけど、契約内容を決めようか。今回の契約はガチガチに縛るものにはしないつもりでいる。そうしないと君が困るだろう? 君では可哀そうか。俺たちは商売を一緒にやる相手になるんだから。君の名前を教えて欲しい。俺はメルクリウスって言うんだ。クレマンティウス商会のメルクリウス。これでも次期商会長になる事を目指していてね。次男ではあるけれど、実力主義で登り詰めることは出来るんだ」
「僕はミシェルって言います。その、ルトアック孤児院に住んでます。商会長になるんですか? というよりも、なれるんですか?」
「孤児……。ますます都合が良いじゃないか。領主もミシェル君の価値には気が付いていない。今なら俺が買い取るよ。それも契約に書いておこうか?」
「お願いしても良いんですか?」
「良いよ良いよ。これでもキャラバンを任されているくらいにはお金を持っているからね。ミシェル君を買うくらいはお安い御用さ」
「それじゃあ、孤児院の支援もお願いしても良いですか? その、補助だけではやっぱり厳しいので。それなりにお金を入れてくれると助かるんですけど」
「良いけど……。ミシェル君自身の得が無い気がするんだけど、良いのかい?」
「僕は孤児院の仲間がちゃんと働けて、自由に薬を作れる環境があればそれでいいかなって思っているんです。ずっとは薬を作り続けられないですけど、それでも孤児って居なくならないですし」
「そう。……ある程度の自由は盛り込むつもりだったけど、孤児院の支援も追加しよう。就労の助けもしてもいい。他に望むことはあるかい?」
「そうですね。あ! 鑑定が出来る人をお願いしたいです。僕では鑑定が出来ないので。その、「鑑定C」のスキルしか持っていないので、中級ポーション以上が作れないというか、作れても何なのかが解らないというか」
「……成る程、高ランクの鑑定持ちが側に居て欲しいと言う事か。確かに必要だろうね。こっちでいい人材を見繕うから、それは心配しなくても大丈夫だよ。他はあるかい?」
「後は……。流石に自分の家を持った方が良いですよね? ずっと孤児院にいる訳にもいかないですし」
「税金はかかるけど、そうだろうね。こっちで準備をしておくけど、何処に建てて欲しいか要望はあるかい?」
「イベル川の川沿いにお願いしても良いですか?」
「イベル川の川沿い? それだと洪水時に流される危険があるけど、本当に良いのかい? いや、勿論だけど、対策はするよ? するけど、限度があるし、もっと安全な場所に住もうとは思わないのかい? 場所は幾らでも選べるんだよ?」
「今後の大量生産を見据えると、川沿いに建っていた方が結果的には良いと思うので。支流沿いでも良いんですけど、流れが強い方がいいかなって思うんですよね」
「ふむ……。何か考えがあるのか。それならばいいだろう。他に要望はあるかい?」
「……今はこの位しか思い付きません」
「そうか。契約は上書きも取り消しも出来るから。ミシェル君と俺が居た場合のみだけどね。「契約S」のスキル持ちにそういう契約をさせるから。大丈夫だよ。こっちは使い潰す気はないし。こっちの要求としては、出来るだけ早く、S品質の他の薬も作り出して欲しい。それだけだ。それだけで貴族家からも一目を置かれることになるからね。クレマンティウス商会が更に大きくなることが約束されたようなものなんだ。ミシェル君には期待をさせてくれ」
「あの、本当にそれだけで良いんですか? 出来ないかもしれないんですよ?」
「ミシェル君は、出来ないと思っているかい?」
「いえ、何とでもなる気がしています」
「だろう? だからだよ。変な自信がある訳でもない。かといって出来ないとも思っていない。それでいいんだよ。それだけでも十分な契約になると思う。是非とも頑張って、俺を商会長にまで押し上げてくれ」
本当にそれだけで良いんだろうか? こっちが貰い過ぎって可能性もあるよな。というか、貰い過ぎだよな? 何かで返さないといけないんじゃないだろうか。うーん、何が良いのかな? とりあえずはS品質の薬を作り続ければ良いんだよな? それなら僕にも出来るし、何とかなる気がするんだよね。