3話 薬を作る
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「今日からよろしくお願いします」
「ふん。今日からも何も、今日で終わりだよ。薬師になりたがる奴なんて殆ど居ないってのに、なりたいだなんてね。孤児院からも頼まれたから今日1日は教えてやるが、明日からは自分だけで頑張りな。最初の道具はこっちで工面してやる。色んな薬の作り方も教えてやる。ただ、それをどうやって活用するのかはそっちが考えな。私はこれでも忙しいんだ。弟子なんて取るつもりは無いんだよ」
「えっと?」
「良いからこれを読みな。1時間もあればある程度は読めるだろう? まずはそれを読んでからだ。そこから基礎となる傷薬、風邪薬、初級ポーションの作り方を教える。それが終わったら修行は終わりだよ。後は好きにやってくれ」
「はい……。解りました」
えっと? この店に弟子入りして、いずれは店を継がせてもらえるって感じだと思ったんだけど、違うんだろうか? なんか思っていたのとは違うんだけど。まあ、とりあえずこの本を読んだら良いのかね? 読んで何になるのかは解らないけど、読むしかないよな。それ以外に選択肢が無い。
……読んだけど、これは、どうなんだろう? 薬の作り方と素材が載っているんだけど、曖昧というか、何でこんな書き方なんだろうって思う事があるんだよ。特に難しい薬になればなる程に曖昧になっていくのは何でなんだろうか。
特に中級ポーションなんかが解りやすいんじゃないかな。まずは初級ポーションなんだけど、これのレシピがジェルリ草+ミンティ草+水素材となっている。で、中級ポーションのレシピがジェルリ草+ミンティ草+生命力の高い素材+水素材となっているんだよ。……生命力の高い素材ってなんだ? その辺を教えてくれないと解らないんだけど。
「あの、質問があります!」
「なんだい?」
「生命力が高い素材って具体的にはなんなんですか?」
「知らないよ。同じ素材を使っても出来る時と出来ない時があるんだ。特定の素材じゃないんだろうさ。とにかく生命力の高い素材を含めることで中級ポーションになる。まあ、やってみれば解るさ。自分で研究してみな。その本はお前にくれてやる。その為の本だし、教える手間も省けるからね」
「いや、あの、本を貰っても作り方までは解らないんですが……」
「その本に載っている通りだよ。これから作るんだから気にしなくても良い。基本の作り方を学べば、後はその通りに出来るんだからね」
いや、面倒はみてくれよとは思うんだけど。マジか。店に修行に来たって事は、従業員になりに来たと思っていたんだけど、いきなり独立しろって方針なのか。これは前途多難だぞ。ただでさえ出来ることが少ないのに、薬師としての修行は今日だけとかハードすぎるだろう。どうなっているんだよ。
「まあ、読み終わったのなら話は早い。早速傷薬から作っていくよ。そんなに難しくないから安心しな。これがすり鉢、こっちがすりこぎだ。これは10セットくらいやるから、使う素材で分けな。洗っても駄目なんだ。こればかりは専用のすり鉢を作っておくこと。いいね?」
「はい。解りました」
「じゃあこの素材がマイマイ草だ。これをすり鉢ですりつぶしな」
ゴリゴリとすりこぎで粉にしていく。……粉にならないんだけど。若干ペーストになっているんだけど、良いんだろうか。まあ、良いんだろうな。何も言わないって事は。
「その辺にしておきな。いいかい? 品質はCで統一するんだ。そうしないと無駄になる。品質は何処までランクがあるのか知っているのかい?」
「品質はSからGまでありましたよね? 確かですけど」
「そうだ。そこまでランクがある。だが、C品質でないと売り物にならないから気を付けな」
「えっと、D品質以下は解るんですけど、B品質以上にするのも駄目なんですか?」
「ああ、駄目だね。商人が買うのはC品質だ。Bでも買ってくれないことはないが、値段は一緒だよ。ならC品質で売るのと大差がないだろう? 良いからC品質で作っておきな」
「何で値段が一緒になるんですか?」
「薬を作るのは、薬師だけじゃないからだよ。特に一番薬を作るのは誰か知っているかい?」
「いえ、知らないです」
「薬を作るので、一番多いのが錬金術師だ。他にも仕事はあるんだろうが、奴らは片手間で大量の薬を作るのさ。こちとら一生懸命にすりつぶさないといけないってのに、そんな過程をすっ飛ばして薬にするんだから、堪ったものでないんだよ。それがC品質で統一されているから、こっちもC品質で品質を合わせないといけないんだよ。商品にムラがあるのを避けたがるんだよ」
「錬金術師ですか。そっちが品質を上げてくることは無いんですか?」
「錬金術師はどうやってもC品質になるんだ。まったく。苦労もなにも無いったらありゃしない」
それは、反則では? 絶対にC品質が出来上がるってのは凄いメリットではないのかね? しかも過程をすっ飛ばすんだろう? でも、品質がいい薬を売らない理由にはならないとは思うんだけどな。いい薬なら、それだけで買い手が付くような気がするんだけど、何でなんだろう?
「お前、品質が良いなら売れるって思っているんだろう? それは間違いだ。薬ってもんは効果が解っているから売れるんだよ。初級ポーションなんかで考えてみな。いつもC品質を使っているんだ。そこにB品質が混ざって見な。どうなると思う? B品質でしか回復しない傷があるのかって話だ。そんなものは殆どない。それならC品質の中級ポーションを使うのさ。わざわざB品質の初級ポーションを買う奴なんて居ないのさ。その場でどの品質のポーションが必要なのかって判断しないといけないのに、悠長な事をやっている訳にはいかないのさ。だから、同じ品質のポーションを手に入れたがる。そうなってくると、量産性のある錬金術師のC品質に合わせるのが手っ取り早いのさ」
「そうなんですか……」
「まあ、その内解る時が来るさ。今はこの位でC品質だって事を覚えておきな。さて、水素材だが、これも井戸水を使う。もっと良い水素材があるんだろうが、そうすると品質が上がっちまうからね」
……そんな理由で品質を落とすのも間違っている気がするんだけどな。良い品質のものを普通に売った方が良いんじゃないだろうか。僕にはよく解らないんだけど、わざわざ効果を下げる必要があるのかって感じがするんだよな。良い品質のものを作れる方が良いと思うんだけど、違うのかね? それだけで全然違うと思うんだけどな。
色々と試してみないといけないかもしれない。本当に色々と試そう。その方が良いと思う。それでもし駄目ならC品質で統一しよう。駄目なら駄目で仕方がないんだ。出来ることをやってみて、出来ることを増やしていかないと。色々と出来ることがあるかもしれないんだ。やってやろうじゃないか。考えられることは山ほどあるんだ。C品質で満足していて良いって話にはならないと思うんだよな。
「これで基本の3つの薬は伝え終わったよ。後は自分で頑張りな。初めだから入れ物各種とすり鉢のセットはくれてやるが、必要なら自分で買いな。それと、初めは聖地で自分で採取をするところから始めた方がいいだろうね。採取を頼むにしても、依頼料を取られるからね。初めは資金が無いだろうから、自分で出来ることは自分でやりな。お金が貯まってきたら好きにやればいいさ」
「はい。ありがとうございました」
色々と貰ったけど、運び出すのが大変だぞ。何往復かしないといけない。しかし、そうか。そうなると孤児院を出られないな。僕も孤児院の厄介にならないといけないか。そうなるとお金が必要になってくるんだよな。稼がないといけない。薬でどれだけ稼げるのかだよな。稼ぐなら初級ポーションがおススメだと教わったが、一番必要になるのがそれだろうからな。かなり作らないといけないだろう。しかもC品質をだ。実験でA品質を作っても良いが、それはある程度の資金を回収してからになるだろう。まずは金を稼ぐ。そこからだな。