29話 新しい薬を作ろう
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とりあえず、僕が出来ることは放置。宗教には関わらない。これが一番だと思うんだよね。関わると碌な事にならないだろうし、放置が一番だよ。よく解らないって時点で放置するのが正しいと思うんだよね。関わらないといけないことになったら、何かを考えないといけないかなって思うけど、今は何もしないで良いと思う。関わったら面倒なだけだしね。
そんな訳で、薬以外のものを買い取ってくれると言う事なので、蜂蜜を幾らか買い取ってもらった。冒険者ギルドに売るよりも高値で売れたから、これで結構儲けられたと思うんだよね。そんなつもりは無かったんだけど、あるなら売って欲しいって言われてしまったからな。残っているし、あるならって事で売ってしまった。在庫はちょっと寂しくなったけど、仕方がないよね。その内また採れるんだから大丈夫だろうと思う。後は、金銭はもうあんまり嬉しくないんだけどなあ。別の何かをって言いたい所なんだけど、別の何かってなにさって話にもなってくる。特に欲しいものがないんだよね。上級ポーションのレシピはそもそも頼んであるので、今欲しい物っていうと、特に無いんだよなあ。
「なあなあ。薬作るんは解るんやけどな? 毎回毎回同じのを作って楽しいんか?」
「そうそう。新しいのに挑戦するとかしないのかなって」
「難しいのは解りますが、苦労して探すのもいいかと思いますよ?」
「素材については、おいも少しは解る。手伝えることはあるか?」
「うーん。新しい物か。確かに欲しいと言えば欲しいよな。何を作るのかって話はあるんだけど。レシピにも載ってないようなものを作るとなると、本格的な研究が必要になるよね。それを作るのが良いのかって言われたら、良いと思うんだけど、僕に作れるのかな?」
「作れるかどうかやないやろ。作るっちゅう気概か無いと作れへんのや。最悪素材を無駄にするだけやろ? そんなのはまた取ってくればええだけの話やんか。新しい事に挑戦するのは、悪いことはないやろ。むしろ推奨されるべきや。面白いことは試さなあかん」
「むしろ積極的に作っていくべきだよね。何の薬になるのかは知らないけどさ。とにかく混ぜてみないと解らないんだし、やるだけやろうよ」
「この子たちもいつも同じ光景なので暇なのです。なので、多少の苦労をしてくれませんか?」
「おいも協力する。大地の恵みである素材については任せて欲しい」
「うーん。そこまで言うのであれば、作ってみようか。でも、何を作ればいいと思う? 今一つよく解ってないんだよね。何でも作れるのかって言われると微妙な所があるんだけど、何かいい案があるんでしょ? そうじゃないとそうやって言って来ないんだろうし」
「よくぞ聞いてくれた! 実はな? あの3人の会話を聞いてたんや。冬は肌が荒れるらしい。何でも、カサカサするらしいんや。それならカサカサを治す薬を作れてもええやろ」
「傷薬じゃ駄目らしいんだよね。カサカサには効かないらしいんだよ」
「何方かというと、乾燥とは逆の効果が必要になるんでしょうね。どういう薬になるのかは解りませんけれど、乾燥対策と言う事で、何か探してみましょう」
「おいも、候補は幾つか用意してある。探すのであれば手伝う」
「成る程ねえ。保湿クリームか。それなら作れない事も無さそうな気がするな。薬っていうよりも化粧品って感じがするのは、ちょっと微妙と言えば微妙なんだけど、それならリップクリームも欲しくなるんじゃないかな。化粧品路線か。有りと言えば有りなのかな?」
薬かと言われると微妙な気がするけど、保湿クリームやリップクリームは確かに薬用って付いていた気がするし、何とかなりそうな気がするんだけどね。リップ専用のクリームが必要なのかって話はあるんだけど。保湿クリームで良いんじゃないかなってのも思うんだけど、別の商品があるって事は、リップクリームも必要なのかな? どうなんだろう。その辺は使ってみないと解らないよな。単純に固めて肌の熱で溶けるようにしたのがリップクリームって可能性もあるし。保湿クリームでいいかもしれないな。それじゃあ、素材を探してみようか。
「それじゃあ、いつもの素材を探すのと同時にその保湿クリームの素材も探して欲しい。出来れば作ってみたいからね。じゃあ、とりあえず出発しようか」
採取もしないといけないし、精霊も集めないといけない。本来は採取を全部任せる方が良いんだろうけど、生命力や魔力を見極めるのには、精霊の力が必要になってくるからな。どうしても頼らないといけないんだよなあ。仕方がないとは思うんだけど。感覚共有は未だに出来ないんだよね。中位精霊じゃあ無理なのかもしれない。けど、上位精霊ってなると、今度はテイムが出来ないんだよな。上位精霊は「テイムA」が必要になってくるんだし。
足りないものが多いんだよね。どうしても欲しいって訳でもないから、とりあえずは今のままで良いんだけどさ。でも、なんだかんだと言っても、精霊が必要になってくるのは仕方がないんだよな。全部の工程で精霊が必要になってくるんだし。精霊無しじゃS品質は作れないしな。中々に考えられていると思う。精霊とは仲良くやっていかないといけないんだろうと思うんだよね。
そんな訳で、色々と採取をしてみた。今まで使ったことがない素材も取ってみた。まあ、生命力が高かったり、魔力が高かったりで使ったことがないってのは嘘になるんだけどさ。でも、その素材を軸にしようと思ったことはないし、まだ使ったことがない素材で間違っていないと思うんだよね。
そして、蜂蜜も忘れずに採取。冬場でもしっかりと蜜が取れるのは良い事だよね。定期的に取れるのは良い事だよなあ。幸いな事に、巣箱にも悪戯はされていないみたいだし。既にテイムしていないハニービーが大量に居るんだけど、それはもう諦めた。クイーンビーがテイムできていればそれでいいと思うんだよね。
「さて、それじゃあいつも通りに薬を作ってしまうよ。まずはそっちを優先的にしないといけないからね。シルバリ、レイン、シルフェ、ポイゾル。頼むよ? まずは普通に仕事をするからね? 実験はその後。まずは仕事をしっかりと熟してからだ。アースとソルとドレスは素材の仕分けね。いつも通りだ。皆で頑張ろう。そうしたら実験も出来るようになるからね?」
実験は遊びではない。半分くらいは遊びなんだけど、それでもきちんとした品質で仕上げる必要はあると思う。今までにない薬を作ることになるんだから、しっかりと考えないといけない。……既にある可能性はあるんだけどね。知らないだけで、既に試されているって可能性もあるんだよ。それでも僕は知らないし、メビウスとキマリスとメリアが使ってないって事は、平民には無い可能性もあるんだよな。……用途的には平民にこそ欲しいと思うんだけど、どうなんだろう。
保湿クリームなんて、水仕事をする人が欲しがるものだよな。水仕事をすると、肌が荒れるって聞くし。乾燥している所に冷水を浴びせると、余りよろしくないそうなんだよね。そう言えば、お風呂ってどうなんだろう。いつもは体を拭くだけなんだけど、お風呂も貴族様は入っているんだろうか。お湯で体を拭くだけでも十分かなって思っていたんだけど、お風呂かあ。懐かしいな。既にそういう生活に慣れてしまったから、入ってないことに疑問を感じなかったよ。
そうなってくると、石鹸も欲しくなってくるよね。薬用石鹸ってのもあるんだし、もしかしたら作れるのかもしれない。これは調査をしてみる必要があるだろう。石鹸があれば色々と変わって来る可能性もあるんだ。貴族様にだって売れるかもしれない。色々と実験をしてみよう。




