16話 金貨が見える
OFUSE始めました。
https://ofuse.me/rukea
ついでにブログも始めました。好きなことをつらつらと書いていく予定。
https://rukeanote.hatenablog.com/
さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
https://twitter.com/rukeanote
「ミシェル様、これからよろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「失礼ですが、ミシェル様。私共は使用人です。ミシェル様が家主である以上は、使用人に敬語は不要です。それが例え歳が上であってもです。どうぞ普通にお話しください」
「解りまし、解った。これでいいかな?」
「上出来でございます。それでは自己紹介を。私はメビウスと申します。クレマンティウス商会から送られてきた鑑定士でございます」
「わたしはキマリスと申します。主に雑用を仰せつかっております」
「わたくしはメリアと申します。同じく雑事を行う事を仰せつかっております」
「ミシェルです。薬師をやっています。よろしく。ところで、雑事って何処までが雑事なんですか?」
「そうですね。この家の事全般が雑事と言えるでしょう。掃除に洗濯、食事の用意や素材の買取などを行えればと思っております」
「冒険者との繋がりがあるとのことでしたので、買い取りも必要だろうと仰っておりました。冒険者ギルドよりは高く買い取りつつも、必要な分だけを買い取るという方針の方が良いのではないかと伺っております。簡易買い取り所も家に作ってあるとの事だったので、そちらの方で使っていただければと思います」
「それは、助かります。正直、自分で全てをやるのは大変だったので、誰か適当な人を雇う事を視野に入れていたので、この配慮は助かります。非常に」
「仕事をされる方はどうしてもそうならざるを得ない環境になりますので。その辺りはクレマンティウス商会の方が察して人員を送り込むという事で対処をすればよろしいと判断されたのでしょう。しかし、信用ならない人を雇うのはよろしくありません。今後の事を見据えるのであれば、雇い入れるのにも審査が必要になるでしょうね」
「審査ですか? そんな事が必要になると?」
「ええ、必ず必要になります。ここではS品質の薬を作っているのです。それを公開するだけでも非常に厄介な事に巻き込まれます。ですから、必要最低限の人材でこの家を回していく方が賢明だと考えます」
「そうなんですね。その辺りの事は解らないので、詳しくはおまかせします。その、よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
うーん。敬語を使わないってのは難しい。キマリスとメリアはまだいい。同じ年頃の筈だから。でも、メビウスはちょっと。良い感じの女性って感じがあるんだよなあ。……何で女性しか居ないのかが解らないんだけど。男性でも良かったんじゃないですかね? その辺の事は言わない方が良いんだろうな。なんだか、嫌な予感がするし。聞かない方が良い事もあるんだ。
でも、鑑定を持っているのがメビウスなんだよな? 鑑定士って言っていたし。鑑定をしてくれるのは助かるから良いけど、結局鑑定のランクはなんなんだろうか。
「メビウスに聞きたい。鑑定のランクはどの位になるんだ?」
「私の鑑定のランクですが、Sになります。先天スキルで「鑑定S」を貰っております。後はキマリスとメリアも「鑑定B」を所持しておりますので、買取にも不便は無いかなと」
「S!? それって最上位の鑑定を使えるって事じゃないか!? え!? そこまで期待をされているの!?」
「失礼ですが、S品質の薬を作れるという事は、そういう事です。国や貴族が抱え込むことを良しとしている今のご時世、平民がS品質の薬を買えると言うだけでも恵まれているのです。メルクリウス様はその様な世界を目指すことを決めました。ミシェル様と会われて、その野望を手にしようと動いております」
ちょっと期待の込め方がやばい。これで失望されたらどうしよう。いや、まだ大丈夫。まだそんな早くに見切りを付ける訳がない。……けど、結局はS品質の薬は9種類しか作ってないし、まだまだなんだよな。もっと多くの薬を作りたいと思うんだけど、素材が無いのと、鑑定のランクがなあ。これからは何とかなるとは思うけど、実験も沢山やらないといけないと思うんだよな。
ううん。今からが大変だぞ。何が何でも有用だと言う事を証明しないといけない訳だし。のんびりとは、生きられないんだろうな。もうちょっとのんびりとしていたいって気持ちもあるんだけど、なんだかなあ。そういう歯車に巻き込まれてしまったからな。もう何とかしないといけないって次元になってきている。何とかなるのかな。不安でしかないんだけど。
「ところで、薬の買い取りをしてくるようにと言われております。今まで作った薬を買い取りますので、査定をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「うん。薬は纏めてこっちに置いてあるから、この辺の薬は全部買い取ってもらえるのであれば、買い取ってもらいたいです。あ、こっちに置いてある麻痺猛毒のC品質やB品質の傷薬や初級ポーションは残してもらえると。冒険者仲間に安く売っているので。そっちは必要になるので残しておいて下さ、くれ。その内必要になるんだ」
「解りました。では査定に入ります。……これは」
「うわぁ。これ全部?」
「こっちも全部。本当だったんだ……」
「私語は慎みなさい。査定をするだけです。解りましたね?」
「「はい!」」
殆どをS品質で揃えてあるけど、いくらになるんだろうか。多いと嬉しいんだよなあ。流石に全部を買い取ってくれるだけでも有難いんだけど、何処まで金額が伸びるのか。銀貨50枚くらいにはなって欲しいんだけど。そうしないと色々と払おうと思っていたものが払えないからな。流石にクレマンティウス商会がお給金を出しているからと言って、僕が全く出さないのは不味いよね? だから、月に銀貨10枚くらいを払いたいなって思っているんだけど。冒険者の月収がそんな感じって言うんだし、その位の支払いは必要だよね?
「査定を終えましたが、予想以上ですね。〆て金貨1枚と銀貨51枚になります」
「金貨!? そうすると、151万レギン!?」
「そうなります。これは予想以上でした。ここまでのS品質の薬を用意していただけるのであれば、この金額でも安い方ですね。特に麻痺猛毒のS品質は高値で買い取らせて貰いました」
「金貨……。え? 本当に?」
「本当ですよ。錬金術師であれば兎も角、薬師でここまで稼げるのは中々ですよ。特に鑑定ランクがCで揃えてのものであると言う事を考えれば、もっと難しくなる。普通は「鑑定B」で見えるものを含めての値段になるなら解るんでしょうが、「鑑定C」でここまでとなると、中々真似できるものではありません。殆どA品質かS品質ですし」
「思った以上の金額になって驚いているんですが……。そうですか。金貨ですか。それでなんですけど、皆さんのお給料ってクレマンティウス商会が払っている訳じゃないですか。でも、こっちで自由になるお金がある訳では無いですよね? ですので、月に銀貨10枚くらいずつ支払おうかと思うのですが、どうしましょう?」
「それはいけません。我々にもプロとしての意地があります。既に貰っている以上、これ以上の対価を求める訳にはいきません。それに、「鑑定S」を抱え込むのであれば、白金貨が必要になります。流石にそれを求めるのは厳しいので」
「そうです。「鑑定B」でも、大商会であればそこそこにお給金が発生します。わたしたちはそれで納得してここに来ているのです。これ以上は貰う訳にはいきません」
「既に前金も受け取っております。わたくし共にも自由に出来るだけのお金はありますので、ご心配をなされないようにお願いします」
でもね? 心がね? 本当に良いのかって悲鳴を上げるんですよ。金貨ですよ? 貰い過ぎじゃないんですか? 月に100万円って考えると、やばいくらいに稼いでいる訳ですよ。大丈夫なのかって言いたくもなるじゃないですか。え? 良いの? 本当に?




