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空白の世界とモノクローム  作者: 藤 光一
二、破曲

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6/27

-暁光に添えて-

 この空間に太陽は無い。それなのに暁光ぎょうこうとも呼べる程、幻想的な空間を作り出していた。橙の空を見上げれば、凪により形を変えることなく浮かぶ雲たち。巻雲けんうん高積雲こうせきうん、様々な雲がアプリコットのように染まり浮かんでいる。都会では見る事の出来ない空模様なのだろう。どこか人里離れた高台から覗く景色のようだ。一言で言えば、絶景と括ればしっくりくる。どこからか、ピアノの演奏が流れてきても可笑しくはない。それはきっとこの空のように、心揺らす美しい旋律が静かに奏でているのだろう。見渡せば陽の光に遮られる事なく、大空のパノラマを堪能できる。空白の世界と呼ばれるこの世界は、私の常識に当てはまらない。私たちは、その空の間に浮かぶ床を歩き、奥へと進む。


 歩き続け、気付いた事がある。この空間の入り口で佇んだ際、遠くに見えていた部屋は

 やはり扉により固く塞がれていた。不思議だったのは扉にノブが無かった事。押しても引いてみてもビクともしなかった。何か所定の事をしない限りは開く事は無いのか。まるで謎解きゲームのようだ。それはまるで何かを試していると言わんばかりである。そして、もう一つ。

 シャドウは、私にしか追ってこないという事。モノリスには何一つ興味を示さない。モノリスが近付いても、通り過ぎても見向きもしなかった。変わらず目掛けて襲ってくるのは、人間である私だけだった。モノリス自体、シャドウの一種として認識しているのか。私にある何かを求めているのだろう。彼には無くて、私にあるものを。それが彼らシャドウを動かすギアとなっているのか。


 この空間の奥には次の空間への入り口となる扉があった。数歩離れた間に人一人通れる橋のような一本道。この橋の中央には、ユラユラと浮游するもの。それは炎のように空気中の酸素を燃やすように揺れ動く青い火の玉。火の玉は、揺れ動きはするがその場を離れることはない。未練を残した人魂のように。その場を守る・通さないと云うよりは、何かを待っているようだった。


「これじゃあ、通れないわね・・・。何かを待っているのかしら。」


「さぁ。君がそう思うのなら、そうなのだろう。」


 モノリスは、常に肯定的だった。否定する事はなく、私の言葉には賛同していた。いや、賛同と云うには少し一歩距離を置いている。『君の思った事をすれば良い』というような何かを試し観測しているような感覚だ。彼は単に知識を求めているだけ。謂わば私と云う資料を、物語を読んでいる傍観者とでも。考え過ぎなのだろうか。彼の素顔がフードで隠れている以上、本心は読めない。やめよう。人の感情を覗くのは、ナンセンスだ。


 この空間を通り抜けたいところだが、いずれにしてもこの人魂を退く必要がある。話しかけたり、手を使ってコミュニケーションを取ってみたが反応は無かった。やはり何かを待っているのか。それが何かわからないと、どいてはくれないのだろう。そうすると一度この場を出直すことになる。私たちは来た道を戻ることにした。


 人魂があった橋のすぐ先にも部屋があった。つまりこの空間の入り口から見て、一番奥の部屋でもある。そして唯一、この空間で点在する閉ざされた部屋達の中でも扉が開かれた部屋だ。と、なればこの部屋へ入る他無いだろう。まずはこの空間の奥へ行くために。先に進めれるのならば、遠回りとは思わない。それがやるべき事なのであるならば。

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