表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

風の音(ね)、水の音(ね)

作者: 入沙界南兎

 清志郎はよろめきながら山の中をかき分け進んでいた。

 腹から血が流れ、着物が血糊でべっとりとしている。

 かなりの深手だ。

 追っ手には致命傷を与えたので追いかけては来ないだろうが、それで逃げなくてはと気が急く。

 やがて小さな川に出て、ついに力尽き清志郎は川の中に倒れ込む。

 冷たいはずの川の水すら既に感じなくなっていた。

 ただ川の流れる音と風の音だけが清志郎の耳に心地良かった。

「・・・ですか?・・・かりして・・・ださい」

 どこか遠くで誰かが話し掛けている、それが清志郎の最後の記憶だった。




 清志郎が目覚めたのは、見知らぬいおりの中だった。

「ここは?」

 身体中が痛くて首すら満足に動かせない。

 なんとか動くだけ首を動かし、後は目を動かして辺りを見回す。

 庵は大して広くなく真ん中に囲炉裏があり、清志郎はその横に寝かされていた。

 入り口の横に小さな竈、両脇の窓は明け放れておりそこから気持ちいい風が入ってくる。 庵の端の方に小さなこりと物入れらしき木の箱が置かれている。

 典型的な田舎のたたずまいだ。




「あっ、目が覚めたんだ」

 明け放れた入り口に娘が立っており、その娘が素っ頓狂な声を上げたのだ。

 娘はパタパタと清志郎の寝かされている板の間に上がってくると、顔の横に座って覗き込んでくる。

 美人ではないが愛嬌のある顔だ。

「お侍さん、大丈夫かい?」

「体中痛くて動けぬが、なんとか生きている」

「そうかい、まだ当分面倒見ないとダメだね」

「お前が助けてくれたのか?」

「ああ、ここまで運ぶの大変だったよ」

 清志郎は大柄の身体の上に鍛えているので、かなり体格はいい。

 娘の方は背は低くはないが、着物から覗く手足を見ると鍛えているというのにはほど遠い感じだ。

 清志郎をここまで運ぶのはさぞ大変だったろう。

「娘、お前一人か?」

「あたい、一人でここに住んでるよ」

「そうか、お前一人で俺をここまで・・・」

「ほんと重かったよ」

 娘は屈託なく笑う。

「娘、名をなんと申す」

「清だよ」

「俺は清志郎だ」

 清はしばらく清志郎の名前を何度も呟くと、

「おんなじ清同士だ」

 ケラケラと笑い転げる。

 そんな清を清志郎も微笑ましく感じた。

 


 それから清は動けぬ清志郎を献身的に世話をしてくれた。

 日々過ごす内に、献身的な清に対して清志郎は特別な感情をいだくようになっていた。

 夕げを済ませた後、清はいつものように着物を脱いで一旦全裸になると、寝間着に着替える。

 別に珍しい光景ではない。

 田舎では普通の事なのだ。

 風呂屋があるわけでもなければ内風呂など余程裕福でもなければ夢の夢の話だ。

 故に老若男女問わず、軒先で行水が当たり前だった。

 清志郎の姉も妹も当たり前のように外で行水をしていたのだ。

 田舎では女の裸など別に珍しくもなかった。

 しかし、今は違う。

 清の事を意識するようになってからその裸を見る事が躊躇われたのだ。

 清志郎は見ないように反対を向く。

「清志郎様、どうして向こうを向いてるんだ?」

 清が不思議そうに聞いてきた。

 ついこの前まで、着替えをしていても平然としていたのに。

「ちょっとこっちに寝返りを打ちたくなっただけだ」

 苦し言い訳をしたが、

「ふ~ん、そうなんだ」

 清はそれだけ言うと、囲炉裏を挟んだ向こう側の寝床に潜り込む。

「清志郎様おやすみ」

 そう言った後、いくらもかからないうちに寝息を立てて寝てしまう。

「なんとも変わった娘だな」

 清は身動き出来ない清志郎の事を甲斐甲斐しく世話をしてくれていた。

 傷の手当てから下の面倒まで。

 他にも傷口に塗る為の薬草取りから食事の仕度まで、それこそコマネズミのように動き回っていた。

「疲れぬか?」

 と聞いた事もあったが、

「あたい、身体を動かすのは好きだから」

 笑って答えた。

 清の献身的な看病の甲斐もあり、清志郎はなんとか日常生活が出来るようにまで回復したのだった。

「すっかり良くなったね」

 清が清志郎の着替えを手伝いながら嬉しそうに笑う。

「これも清のお陰だ」

 清志郎は清を抱き寄せ、清も清志郎の身体に身を任せる。

 二人は既に男女の仲になっていたのだ。

「俺が良くなったら、一緒に山から下りないか?」

 その言葉に清は困ったような顔をしてから、下を向いて、

「ごめんなさい、出来ない」

「どうしてだ、どうして出来ないんだ」

 清志郎は清の肩を掴み、清の顔を自分の方に向けようとした。

 この話は、今までにも話したがその度に清は困った顔をして逃げていたのだ。

 逃げられないように肩を掴まれた清は、意を決して、

「清志郎様、あたい何歳いくつに見えます?」

 唐突に聞かれて、

「十六だろ、この前そう聞いたぞ」

 清に聞いた時そう答えたのだ。

「それは半分嘘で半分本当です」

「半分嘘で半分本当とはどういうことだ?」

 清は口を開き駆けて一瞬迷ってから、

「あたいが十六になる前の年に太閤様の刀狩りがありました」

「太閤様って、豊臣秀吉の事か・・・の刀狩り?豊臣家が滅んだのなんて数十年前の話じゃないか」

 刀狩りは豊臣秀吉が農民から力を奪う為に行った事で、既に徳川の治世になってから三〇年以上経っていた。

 清志郎が知らないのも無理はない。

「清、お前は豊臣秀吉の時代から生きているというのか?」

 清志郎の問いに、清は首を横に振る。

「生きてない、あたいはもう死んでいるの」

 衝撃的な話だが、清志郎は信じなかった。

 当然だろう、生きている清は目の前にいるのだから。

「違うの、この身体は仮初かりそめの身体なの・・・龍神様からお借りしているだけなの」

 泣きそうな顔で清は清志郎の顔を見上げた。

「どういう事だ、借り物の身体とか龍神様とか」

「あたいの村で日照りが続いて、龍神様の人身御供であたいが選ばれたの」

 龍神は水の使いとされ清志郎の家から近くの村でも信仰されていた。

 日照りが続くと娘を人身御供にするという話は実際にあったようで、清志郎の父が随分怒っていた事を覚えていた。

「バカな、そんなバカな事があるか。清はここに居るではないか、死んでなんていないではないか」

 信じようとしない清志郎に、

「来て」

 と手を引いた。

「どこへ行くのだ、今はそれどころではないだろう」

 抗おうとしたが、清の力は意外と強く、そのまま引きずられるように連れて行かれた。

 清は庵の裏側に回ると上に向かって歩く。

 途中深い藪があり、その藪をかき分けて進むと洞窟の前に出た。

 清は迷わず、その洞窟の中へ進む。

 洞窟の中には小川が流れており、その小川から僅かに光ってたのだ。

「み、水が光っている」

 驚く清志郎。

「これは龍神様の御水だから」

 説明する清。

「龍神様の・・・?」

 清志郎は半信半疑に答える。

 最初暗かった洞窟も、目が慣れ足下を流れる川からの光だけでも充分見えるようになってきた。

 よく見ると洞窟は強い力で一気に打ち抜かれたかのように見える。

 自然に出来た洞窟にしては妙に真っ直ぐすぎるのだ。

「これも龍神様の力?・・・まさかな」

 清志郎は自問自答して心の中で笑ってもみ消す。

「着いたよ」

 清の声に顔を上げると、前の方がかなり明るくなっているのが判る。

 そのまま清に連れて行かれると、大きな池に出る。

「龍神様の泉だ」

 泉からの明かりが全体をあまねく照らし、その幻想的な光景に清志郎は心を奪われて辺りを見回した。

 泉の周りはざるをひっくり返したように球状に削られている。

 表面はむき出しの岩だったが泉からの光でキラキラ輝いて見え、清志郎達が出てきた洞窟の反対側にほこらが見えた。

「あれは?」

 清志郎が聞くと、

「あれは龍神人様の祠の・・・裏口」

 つまり、あの先に本物の祠があると言う事だ。

「清志郎様脱いで」

 と言いつつ、清は既に着物を脱ぎ始めていた。

「なんだ突然、どうしてだ」

 清志郎は躊躇ったが、清はさっさと着物を脱いでしまい既に全裸だった。

「早く、早く」

 清に急かされて慌てて着物を脱ぎ、裸になる清志郎。

「じゃあいくよ」

 清志郎の手を握るといきなり清は泉に飛び込んだ。

「うわぁ」

 突然の事で清志郎もそのまま泉に引きずり込まれる。

「な、何をするんだ」

 水から顔を出した清志郎が怒鳴る。

「大丈夫、泉の中は苦しくないから」

 清は言うなり潜り始める。

「ちょ、き、清」

 一瞬慌てふためいたが清志郎も清の後を追って泉の中を潜った。

「本当に息が苦しくない」

 水に潜っている感触はあるのに、地上にいるがの如く普通に呼吸が出来たのだ。

 それならばと、

「き、ぐぅえほげほ」

 声を出そうとしてむせた。

 声は出せないようだ。

 息は苦しくないのに声は出せない事を理不尽と思いながら清志郎は清の後に続く。

 最初揺らめいてはっきりとしなかった水底みなそこが次第にはっきりとしてくる。

 水底は地上部と違ってかなり起伏があり、自然に出来たという感じだ。

 その水底に何かあるのが見えた。

 はっきりしない形が近づくに従いはっきりとした形になっていく。

 人だった。

 一糸まとわぬ女の身体が水底に沈んでいるのだ。

 そしてその顔は清だった。

「こ」

 声を出しかけて慌てて口を塞ぐ清志郎。

 清は水底に沈む自分に手を合わせると水上を目指して上がり始める。

 清志郎も後に続いた。

 二人とも水面に顔を出すと、

「あれが本当のあたい、この身体は龍神様があたいを不憫に思って貸してくれたんだ」

 つまり泉に人身御供として鎮められた清の魂を龍神が龍神が作った身体に移したのだ。

「あの身体はもう目覚めぬのか」

「うん」

「でも、息が出来たぞ。息が出来る泉で何故死ぬのだ」

「それは龍神様があたいが本当の身体を見に来てもいいように水を苦しくないように変えてくれたから」

 これも龍神の神通力だった、

 



 水から上がり、着物を着ると清志郎はうなだれたまま清に手を引かれて洞窟を出る。

「このままじゃダメだ、このままじゃダメだ」

 口の中でブツブツ言いながら。

 そうこうしている内に庵に着く。

「清志郎様、大丈夫?」

 泉から上がってから清志郎の様子が変なので、心配になって清志郎の顔を覗き込む清。

「このままじゃダメなんだ!」

 突然、大声を上げた立ち上がる清志郎。

 驚いて清は尻餅をつく。

「き、清志郎様?」

 清志郎は尻餅をついて見上げている清を一瞥すると、しゃがみ込んでそのまま清を抱き上げる。

 唐突なことで驚くが、そのまま清は身を委ねる。

 清志郎は清を抱き上げたまま庵を出ると、道を下り始めた。

「清志郎様、どこへ行くの?」

 清の問いに、

「山を下りる」

 きっぱりと答える清志郎。

「だめ、だめ・・・あたいは山から下りられない」

 清は清志郎の腕の中で抵抗したが、清志郎にしっかり抱え込まれていて逃げることが出来なかった。

 嫌がる清を抱えたまま清志郎は山をドンドン下ったが、在る場所に来た途端前から風が吹いてきた。

 その風は尋常な強さではなく、油断すると身体事吹き飛ばされそうな程強烈な風だったのだ。

「くそっ、龍神の仕業か」

 清志郎は歯を食いしばり、清をしっかり抱えて踏ん張る。

 一歩、また一歩とじりじりと前へ進む。

 唐突に風の向きが変わり、後ろから吹いてきた。

 清志郎は思わず前へつんのめり、清を離してしまう。

 それを待っていたかのように更に強烈な風が清志郎を吹き飛ばした。




「ここは?」

 清志郎が目覚めたのは日がだいぶ傾いてからだった。

「そうか龍神の風で飛ばされて・・・清、清はどこだ!」

 周りを探したが清の姿はどこにもない。

「そうか、あの時・・・」

 後ろからの風でよろけた時、清を離してしまったことを思い出す。

「まだ上か」

 清志郎は山を駆け上がった。

「な、なんだ、先に進めぬぞ」

 見えない壁でもあるかのように、在る場所に来た途端、先に一歩も進めなくなってしまったのだ。

「これも龍神の力か」

 清志郎は見えない壁を地kらの限り叩いたが、びくともするモノではなかった。

「清!清!俺はここに居る、きよぉぉぉぉぉ!」

 力の限り清の名を呼んだが、返事はなかった。



 清は見えない壁の直ぐ反対側で清志郎を見ていた。

「清志郎様、清志郎様、あたいはここです、ここに居るよ」

 清は清志郎に抱きつこうとしたが見えない壁に阻まれて出来なかった。

「清志郎様、清志郎さまぁぁぁぁぁ」

 清の慟哭どうこくが響き渡った。




 清志郎は数日の間、どこからかは入れないか見えない壁の周り調べて回ったが、どこにも入る隙間はなかった。

「どうしたものか」

 清志郎は考えあぐねて、結局、目覚めた場所に戻ってきてしまった。

 そこへ小屋を建て始める。

 清のいるこの場から離れられなかったのだ。

 食べる物と水は山から手に入ったので最低限の生活には困らなかったのだが、清志郎は暖かかくなると里に下りて里の手伝いをしては日銭を得るようになっていた。

 清志郎は僅かな金を貯めては反物やかんざしなどを買っていたのだ。

 今日も貯めた金で反物を買って帰ってきた所だ。

 買ってきた反物を持って見えない壁まで来ると、反物を壁に押しつけた。

 最初は抵抗があったが、唐突に反物は壁をすり抜け向こう側へ消えてしまう。

 壁の向こう側へ入ったのだ。




 小屋を建てた後も、なんとか壁に入れないか試していた。

 何をやっても壁を越えることは出来ず、手にした山芋を怒りにまかせて壁に叩き付けたのだったが、山芋は潰れる事も無く壁に張り付いたように動かなかったが、突然吸い込まれるように消えて無くなったのだ。

 それから色々試みて幾つか決まりがあるのも判った。

 壁の外にはじき出されてから数日後、清志郎の刀が壁の外に置かれていた。

 方などもう必要無いと思い刀を売り払い、いつか渡せる時が来たらと清の為にかんざしを買ったのだ。

 その事を思い出し、小屋の中から持ってくると壁に押しつけてみたがどうやってもかんざしを壁を通すことが出来なかった。

 山で手に入れたキノコや肉は壁を通せた、最初は山で取れた物だけ壁を通れると思っていたが、あれこれ試す内に清志郎が汗水垂らして手に入れた素朴な物なら壁を通ることが判ったのだ。

 清志郎が働いて手に入れた物でも、華美な物は壁を通すことは出来なかった。

 今日買ってきた反物も、ありふれた柄のごく普通の反物だ。



 反物を壁の婿に送って数日後、壁の外に着物が畳んで置かれていた。

 清志郎はそれを手に取ると小屋に戻ると拾った着物に着替える。

 あつらえたように清志郎の身体にピッタリだった。

 柄は先日壁の向こう送った反物と同じ、つまり送られた反物で清が清志郎の為に縫った着物なのだった。

「清」

 清志郎は着物を抱きしめるように腕を胸で組むとしばしむせび泣く。

 そんな間接的な逢瀬が数十年続いた。





「はぁはぁはぁ」

 清志郎は死にかけていた。

 ここに来て龍神の加護なのか病気一つしないで過ごせていた、いよいよ天寿が尽きようとしていたのだ。

 体調が悪くなってから壁際に身を寄せていた。

 壁際にギリギリまで身を寄せると何らかの加護が発動するのか、雨風どころか地面や周りの暑さ寒さからも切り離され、快適に過ごせるのだ。

 それよりもここに居ると清が粥を差し入れた時に、僅かに指に触れることが出来た。

 指先が触れあうだけだったが、半日指を触れあわせたまま過ごすことも、僅かな触れ合いだったが清志郎と清にとっては至福の時だった。

「ああ、このまま時が止まってくれれば」

 と何度思ったことか。

 それも終わりを告げようとしていた。

「き、清・・・」

 その一言の後、清志郎は天寿を使い果たした。

「清志郎さまぁぁぁぁぁ」

 唐突に見えぬ壁が消え、清は清志郎の身体にしがみつく。

「清志郎様、清志郎様、目を開けて下さい清志郎様。目を開けて清を見て下さい清志郎様」

 動かぬ清志郎にすがりつき、清は清志郎の身体を揺さぶる。

 しかし、清志郎は二度目を開けることはなかった。

 涙が涸れるまで泣いた後、清はなんとか清志郎の身体を抱え上げる。

「軽い」

 初めて会った時、川から引き上げて庵まで引きずっていくまで重くて大変だった。

 それに比べて今の清志郎の身体は、清でもなんとか抱えられる程に軽くなっていたのだ。

「清志郎様、今、清の所へ連れて行きますから」

 清は清志郎の身体を抱えたまま、庵の裏の洞窟に入り泉まで来る。

 泉の横に清志郎の亡骸を横たえると来ていた着物を脱がし始める。

「清志郎様、今、綺麗にしますから」

 泉に手ぬぐいを濡らすと清は清志郎の亡骸を吹き始める。

 真っ白になってしまった髪、深くしわの刻まれた顔、節くれが目だつ手足、清は丁寧に拭き上げた。

「綺麗になりましたわ清志郎様」

 清は着物を脱ぎ裸になると再び清志郎の亡骸を抱え上げた。

「さあ行きましょう清志郎様」

 泉の中に飛び込む。

 清志郎の亡骸を抱えたまま清は水底を目指す。

 水底まで行くと清は自分の亡骸の横に清志郎の亡骸を並べる。

「これでずっと一緒です」

 手を合わせる清。

 すると清志郎の亡骸が見る間に若返っていき、出会った時と同じ若さまで戻ったではないか。

「これは・・・もしかして」

 清は淡い期待を胸に水面を目指し、水面に出ると辺りを見回した。

 人影が目に入る。

 清は急いで岸に上がると人影の元に走った。

「清志郎さまぁぁぁぁぁぁ」

 名前を呼びながら清は人影にしがみつく。

 清志郎が天寿を全うすることで、龍神が清志郎の魂に仮初めの身体を与えてくれたのだ。

「清」

 清志郎も清の身体を抱き締めた。

「夢のようです、またお会い出来るなんて」

「夢ならいつまでも覚めないで欲しいものだ」

 二人はいつまでも抱き合っていた。

                    (Copyright2023-© 入沙界南兎(いさかなんと))

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お互いずっと愛し続けたのですね。 心に残るお話でした。
2024/01/13 13:13 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ