第二章『とめどなき世界』1
道は舗装されていないが綺麗に均され、建物は土や木が基本だが頑丈に造られている。
行きかう人々には活気があり、店先にりんごと思しき物を並べた商店の呼び込みが勇ましい。
文明のレベルは、古代ローマから中世ヨーロッパと言った所。
人々が着ている服も、現代とは別の意義や機能を求めたものだった。
「人が多いね……殆どが普通の恰好?してるね……」
「鎧を着ている人は少ないわね。軽い胸当て位なら、見かけるけど」
「町には魔物は出ないとか……危険は少ないって事かな?それか……ここは市場みたいだから冒険者じゃなくて、普通に町に住んでいる人が多いとか」
「そうね、露店で売っているのは、生鮮食品が多いようだし、冒険者がいるのはここじゃないのかも。でも、町は壁に囲われていなかったから、そもそも安全かもだけど」
ユリアは広い大通りを歩きながら考え込む。
トウタも辺りを確認しながら、あてどなく歩いていた。
人々の間で交わされているの会話は、日本語に聞こえる。しかし、店に書かれている文字は、全く見たことも無いモノだ。
スキルの様な不思議な力で、耳に入る言語が翻訳されているのだろうか?
「眼鏡を掛ければ、あの文字も読めるわね」
ユリアは賢者の眼鏡を掛けて、店の看板を眺めている。
何が書いてあるのか聞こうとしたが、すぐに眼鏡を外して仕舞ってしまった。
「賢者の眼鏡…だっけ?便利そうだし……ずっと掛けておけば?」
「いやよ。私メガネに合わないモノ」
「似合わないって……それって今大事なの?」
「大事に決まっているわよ。知らないの?」
知らない。
と言える筈もなく、トウタは曖昧に頷いた。
「とにかく、どこに向かいましょうか?」
ユリアのわざとらしい言い方に、トウタは不快な顔を見せた。
「……人を試す言い方って好きじゃないよ……お金と情報が必要なんでしょ?」
「悪かったわよ。『質屋か武器屋を探しましょうかい、旦那?』。言い直したから良いでしょ?」
「……なんで下男風?」
トウタとユリアは大通りを外れ、冒険者の良そうな場所を探す事にした。
そこになら、手持ちの武器を換金できる場所が有る筈だ。
「………」
「……どうしたの…ユリアちゃん?」
「なんでもないわ。なによ、確認男の真似?」
「……あれって…真似するものなの?」
ユリアは誰かに見られていることを確信したが、気付いたことをバレない様に振る舞った。
トウタに行ってしまったら、気付いてない演技は無理だろうな、と。
伝える事は止め、1人静かに指輪をはめ直した。