表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/35

4「地下牢への道」

「見張りがいるな」


地下通路を先行していたワシが、曲がり角で立ち止まった。

トウタも追いついて覗くと、そこは広い空間になっていた。


空間の先に、幾つかの通路が伸びている。ワシによれば、それぞれが個別の地下牢に繋がっているらしい。

空間内には見張りの敵が3匹。2足歩行の狼の様な魔物で、体の大きさは成人男性ほどだ。


「誰か遠距離攻撃できるかい?その隙に、あたいがちゃちゃっとしめてやるよ」

「遠距離なら…一応……」


トウタは拳銃を取り出し、手を挙げる。


「よし!なら任せた」


リズは気風よく言うと、突撃体制を整えた。


「俺らも行くぜ!」

「自分だけが活躍したと言われては、たまらないからな」


タカとワシも道具を持ち、走り出す準備をしている。


「行きます……」


トウタは緊張しながら拳銃を構える。


入っているのは、ユリアも使っていた爆発する弾丸だ。

5発しかないが、ここで使うのは間違っていないだろう。


3匹の内一番奥にいる敵に狙いを定め、引き金を引いた。

手の中に軽い反動が生まれ、弾丸が奔り、モンスター達の足元が爆発した。


「外した……」

「あたいには、十分な陽動さ!」


弾丸は直接的な被害を生み出さなかったが、相手を混乱させる効果はあったらしい。

モンスター達が戸惑っている間に、リズが突っ込んで行った。


「『スタンプ』!!」


スキル発動と共に、リズの斧が青く光る。

振り下ろされた刃は衝撃波を生み出し、モンスターをリンゴの様に押し潰した。


「俺も行くか、『ストンプ』!!」


スキル発動と共に、ワシの足が光り出す。

地面を踏み付けると強烈な反発が発生し、ワシは一歩で魔物の間合いに入った。


「『千影脚』!」


スキルを活かした技とでも言うのだろうか。

ワシは連続する蹴りで、モンスターを壁に押し潰していく。


「俺も行くぜ!『投擲』!!」


タカは走りながら複数本の短刀を構え、スキル発動と共に敵に投げつけた。

短刀は最後に残っている魔物に飛翔し、刃を喰い込ませていった。


ガアアアアアア


短刀の突き刺さった魔物は怒りに燃え、タカへと突撃しようとする。

タカは走る勢いのまま剣を引き抜き、敵を屠ろうとした。


しかし、


「ほら!止めだ!」


リズが斧を振り回し、タカとワシの獲物の首を跳ね飛ばしてしまう。


「一丁上がり!」


あっという間の出来事だった。

3体の魔物は塵と消え、空間が静寂に支配される。


「てめー、人の獲物横取りしてるんじゃねーよ!」

「そんな事より、斧に巻き込まれそうになったんだが」

「あたい達仲間だろ?細かいこと言ってんじゃないよ!」


いや、勝ち誇る3人の声が、すぐに静けさを追い払った。

タカとワシは文句を言っているが、リズは笑って取り合おうとしない。


(皆……強いんだね……)


これなら任務は何とかなりそうだと、ほっと胸を撫で下ろした。

トウタは銃を腰に差し、3人へと近付いて行く。


「トウタの兄貴!危ない!!」

「え……?」


油断したトウタの上方より、強大な爪が迫りくる。


「『ディレイ』!!」


咄嗟に腕を頭上に上げ、スキルを使用する。

気色の悪い遅延世界で、敵が猫の様なモンスターだと確認。スキルを停止させて敵の横側に回り込むと、爆発する弾丸を叩き込んだ。


「上から沢山来るよ!!」


猫の様な魔物は息絶えたが、リズの言葉の通り、天井から沢山の魔物が降ってきていた。


(待ち伏せされたのか……)


トウタは少し下がれば空間から出られるが、3人は魔物に囲まれるだろう。

トウタ1人で拠点から脱出して、仲間を呼びに行くのが最善手だろうか?


いや仲間が助けにこれる状況下も分からない。

なら神の御使いや神の使途を助けに、一か八か進むべきとも思う。


しかしどの道が目当ての地下牢に繋がっているのか、分からないらしいのだ。

間違った道に進めば、紙の使途と合流できずにただ追い詰められてしまう危険性がある。


(どうすれば……)


『こっちだ!』

「……!?」


突如トウタの脳内に声がして、眼前に地図が広がった。


「今の声は……レイカ先生……?」


神の御使いがトウタに通信し、地図を見せているのだろうか?

なら地図にある赤マークに、レイカ先生がいる筈だ。


「間に合うか……」


もうすぐ大量の魔物が地面に到達する。

この場所を埋め尽くす魔物を潜り抜けて、指定された場所まで行ける気はしない。


「いや……もしかしたら……」


トウタは昨日のタカ達との戦闘で、ワシの蹴りを避けた瞬間を思い出す。


(僕のスキルは…別の使い方が出来るのかも知れない……)


確信はない。

でも、出来なくてはならなかった。


「『ディレイ』!!」


スキルを発動させると、世界がぐにゃりと変化する。

体が重くなり、周りが高速で動き出す。


(走れ……走れ……走れ……!!)


体は殆ど動かないが、トウタは自身に走れと念じ続ける。

地面に溢れていく魔物の間を縫って、レイカ先生がいる筈の穴へと駆け抜ける自分を思い描く。


(!!)


動かないトウタを狙って、目の前の敵が腕を振り上げた。

倍速の掛かった高速の一撃に、遅くなったトウタの防御は間に合わない。


「うぐ……!!!」


攻撃を食らう直前に、スキルを停止した。

ハンマーに殴られたかの様な重い衝撃が、トウタの胸の中で暴れ回った。


しかし、それはモンスターの攻撃によるものではない。


(成功した……)


トウタは思い描いた通り、穴の近くまで移動していた。

後方を確認すると、トウタを狙った一撃は空振り、地面を抉っていた。


「トウタの兄貴すげえ!瞬間移動かよ!」


タカがはしゃいでいる。

彼にはトウタの動きが、瞬間移動に見えたのだろう。


しかし、何という事はない。


トウタは5秒程度スキルを発動し、発動中は元の場所に留まっていた。

そして、5秒間走り続けていたら本来到達していたであろう地点に、スキルを切った瞬間に移動しただけだ。


「使えないスキルだよね……」


ユリアのスキルであれば、この魔物達を一掃できただろう。

ジュンのスキルでも、一撃で複数の魔物を倒せた筈だ。


(いや……力不足を痛感している余裕はない……)


トウタは顔を上げると、地図の場所へと繋がる道へ進んだ。


「こっちに神の御使いがいる筈です……行きましょう……!」

「分かったぜ、兄貴!」


トウタの後ろを、タカがはしゃぎながらついてくる。


「頼んだぜ!後ろは、あたいに任せな!」

「俺も残ろう。そこが外れだった場合、追い詰められてしまうからな」


リズとワシは空間に留まり、穴を塞ぐように並び立つ。


「リズさん…!ワシさん…!」

「トウタの兄貴早く!この数だ、ワシが居ても、長くはもたねえ!」


トウタは唇を噛んで前を向き、歩を速める。

後方では魔物達の唸り声と、肉を砕く轟音が反響していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ