SNSのサーバーが「いじめられて、自信を失くしました……」と言って家から出てこなくなったんですが……
お久しぶりです。星原ルナです。リハビリがてら、ショートショート書いてみました。
最後まで読んで貰えると嬉しいです。
とある少女の自室にて。
「あれ? SNSにログインできない。どうしてだろ?」
一人の少女がスマホを操作していた時のこと。常日頃から使用しているSNSのアプリをタッチした瞬間、『只今、ログインできません』と表示されたのだ。
首を傾げながらも、再度挑戦するも、表示される画面は同じだった。三十分粘って試しても結果は変わらない。
「やっぱり駄目だ。なんでログインできないんだろう……問い合わせてみよ」
なぜ、SNSにログインできないのか。
実は全SNS利用者が知らない…………裏の理由があった――――。
*
「さて、今日も仕事をしますか」
俺はとあるSNSサイトの管理人をやっている者だ。トラブルが起きたり、不具合が起きたりした場合は早急に対処するのが仕事だ。
「ん? 今日は問い合わせメールがやけに多いな……どうしたっていうんだ」
問い合わせメールボックスを開くと、メールの件名がほとんど同じ。書かれている内容もほぼ同じだった。
『SNSにログインできません』
「えぇ!? ログインできない!? どういうことだ!?」
いや、昨日まで普通にログインできたはずだ。慌ててSNSのサーバーを確認する。サイトの中枢である本サーバーを見てみると、サーバーが『家に居ます』という表示になっていた。
「あれ? おかしいな?」
俺は違和感を覚える。いつもと違う。
サーバーの家のアイコンをクリックして、ボイスをオンにしてみる。
「さーちゃん、SNSに入れなくて困っている人達がいるよ。出ておいで」
試しに話しかけてみるが、向こうの返答はなし。やっぱりなにかおかしいな。もしかすると。
俺は改めてSNSの状況を確認した。
「うん、やっぱりログインできないな……。ってことは――――」
さーちゃん、引きこもっているな。
あぁ、みんなには言っていなかったな。俺らの使っているSNS、実は秘密があってな。
全てのSNSサーバーに自我がある。
つまり、意思を持つサーバーなんだ。もし、サーバーが怪我したり傷ついた時は、サーバーが持っている家に戻してメンテナンスをしたりする。そうやってSNSを安心して使ってもらえるように動くのが俺ら管理人の仕事なんだ。
自我があるからね。時に他のサーバーと喧嘩したり、情報を抜き取られたりと厄介なこともあるんだけどな。
「さーちゃん、どうしたんだよ。引きこもったりして。何があったんだ」
あ、ちなみに、さーちゃんというのは俺が管理しているSNSのサーバーの愛称。
数分経過した時、さーちゃんから応答があった。しかし。
「いじめられて、自分に自信を無くしました……」
ええぇぇ!? なんだって!?
ていうか、めちゃくちゃ声のトーンが低くないか!?
「いじめられた!? 誰に!?」
けど、さーちゃんは何も答えてくれない。誰にいじめられたかは言いたくないらしい。
「さーちゃん! さーちゃんがいないとSNSが使えなくて困っている人が大勢いるんだよ!」
「もう誰も、信じたくありません……」
さーちゃんは一歩も外に出ようとしない。完全に心を閉ざしている。
――なんてこった。
SNSのサーバーは君しかいないというのに……ええい!
こうなったら、さーちゃんに自信を取り戻してもらうしかない!!
「さーちゃんしかいないんだ! 君が必要なんだ!!」
「どうせ、私には必要としてくれる人なんていませんよ……」
完全にネガティブ思考に入っているぞ、これ。
どうすれば自信を取り戻してくれるんだ………。
「私がいなくても平気なんですよ……」
俺はあることを思いつく。
――そうだ! 問い合わせメールボックスに届いたメールをさーちゃんに見せれば……!
「さーちゃん! これを見てくれ!」
さーちゃんの家に、俺はいくつかのメールデータを送り込む。
「これは……なんですか……?」
「さーちゃんを必要としてくれている人たちの声だよ。まだこれはほんの一部だ。大勢の人達がさーちゃんが出てくるのを待っているんだよ」
「……自分は本当に必要なのですか?」
「必要だから言っているんだ! だから戻ってこい、さーちゃん!」
数分経った時、さーちゃんの家の扉が開いた。そして、中から……。
「さーちゃん!!」
「私が必要としてくれている人がいるなら……もう一度頑張ってみます」
そう言って出てきてくれた。さーちゃんが出てきたことで、SNSサイトが復旧しログインできるようになった。
「ふぃ〜、良かった」
俺は一気に力が抜ける感覚が走った。やれやれ、今までで一番疲れた一日だったな。
*
後日、真夜中のとある居酒屋にて。
「……という訳なんだよ」
俺は、別SNSサーバーの管理者で親友の男に先日の出来事を説明した。
「あぁ、なるほどな。それは大変だったな」
「そうなんだよ。その日一日で一週間分の疲れが出たって感じだよ」
親友は苦笑しながらビールを一口含んで飲み込んだ。
「それ、もしかすると俺が管理しているサーバーのせいかもな」
「ん? どういうことだよ」
俺の質問に、言いづらそうな表情で俺を見る。
「お前んとこのサーバーがいじめられたっていうの、多分、俺んとこのサーバーだわ」
「えっ、お前が管理しているサーバーだったのか!?」
あぁ……だからさーちゃん言いたくなかったのか。俺に迷惑をかけたくなくて……言いたくない理由がまさかここで判明するなんてな。
「多分な。迷惑かけちまったな……すまんな」
「いや気にしていないから別にいいんだけど……どうやってわかったんだよ」
「それがな、気に入らないやつがいるからいじめてきたとか言って帰ってきたものだから『謝ってこい』って言ったんだが拒否られてな。その後周りの仲の良いサーバーからさんざん叩かれまくってな」
「あちゃー、お前んとこも大変だったんだな……それでどうなんたんだよ」
親友はため息ついて一言。
「叩かれたのがショックだったのか、今度は俺のサーバーが引きこもっちまった」
おしまい
リハビリの為にしばらくショートショート三昧になるかもです。頑張ります。