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服と浄化とジールさん

『空間魔法付きカバン・1500リル』

『オーダーメイドの服3着・1000リル』

『馬車代(片道)・50リル』

 お金は湯水のように出ていく・・・説明させて頂きましょう。カバンですがこちらは予定どうりですので問題はありません。次にオーダーメイドの服になりますが昨夜お風呂から上がった後、私は気がづきました。宿のお姉さんが用意してくれたのは下着と部屋着。では次の日に着る服は? 異世界では毎日服は取り替えない・・・異世界もののマンガでもみんな同じ服そのままであると。まあ、それが学生服や作業・仕事着であると考えれば同じ服を着ていてもいいのだと思う。制服なんて衣替えの時やよっぽど汚れもしなければクリーニングに出さないぐらいずっと着ているぐらいだしね。がしかし、そうであっても数着は持っていないと着回しが出来ない。でも既製品はそうそう売っていないし自分でなんて作れないので急遽ジールさんに仕立て屋さんへ連れて行ってもらいました。旅用と街散策用、部屋着です。急ぎの作りとなりお店の方のには申し訳なかったなと思います。そして馬車代とはバキアへの向かうための運賃です。服が出来上がり次第ここシバパッカの街を立つ予定となりました。

 そんな仕立て屋からの帰り道私は何気に聞いてみた。

「ジールさんは服はそれだけ? 洗濯、洗ったりしてる?」

「ホームに服はあるが依頼で外に出る時は持ち歩かないぞ荷物になるし、浄化魔法も使えるからな。ただ家の者は普通に洗ってるんじゃないか」

 この話で気になる事が2点ありました。

「浄化魔法と家の者」

「うん?」

「えーと言いたくないのならお話していただく必要はないのですが聞きます。まず、家の者とは」

「家の事を任している使用人?」

 そこで疑問符がつくことがわからないが、このジールさん人を雇えるほどの冒険者だったらしいです。Ąランクの冒険者とはそう言う事なのでしょう。

「では、浄化魔法とは」

「そのままだけど」

 それがどうしたという表情を浮かべて頂きました。確かにそのままでしょうけども!

「それは私にも使える魔法ですか」

「どうかな・・・ちょっと試してるか?」

 私は思いっきり頷いた。

 宿の戻って人気のない食堂の一角をお借りし、私とジールさんは向かい合って座る。

「まあ、普通に綺麗にしたい場所に掛ければいいことなんだが『浄化』」

 テーブルに手の平を向けて言葉を唱えるとそこそこきれいに見えた板の部分が若干コーティングされたように輝いた。

「こんな感じ」

 どんな感じ? 私は首を傾げた。

「マナは魔法を使ったことはあるんだよな」

「今の所ないですね」

「魔力を感じたことも?」

「ええ」

 だって今まで魔法がないと言われていた世界にいましたしね。気とか気功とかはあったけど。

「じゃ手を出して」

 素直に手を出す。ジールさんが私の出した手の甲に自分の中指の先をちょんとつけた。

「流すぞ」

 その言葉から少しして手の甲から何かがさらさらと流れ込んできた。気分的にはお蚕様が肌の上を歩いてる感じ。それが自分の中にあることを異質と捉えた時、そう捉えたモノが私の魔力なのだと分かった。

「これが魔力・・・」

 解ったら使いたくなるのが性と言うものでしょう。

「おい待て!」

「浄化」

 それを使う対象を定めていなかった私の『浄化』は魔力の濃さも相まって途方もない範囲を網羅した。

「キラッキラッですね・・・」

「マナ、加減って知ってるか」

 私とジールさんも小奇麗になり、食堂全体は浄化され見違えるように変わってしまった。

「結果オーライで良しとしません?」

「俺に聞くなよ」

 私達は宿の方に気づかれる前にそっとその場を後にした。

 その日の夕食時、食事の量がこれでもかと言うくらい大盛になって出された所を見るとしっかりばれていたらしい。勝手にすいません。

 2日後、急ぎで仕立ててもらった服を受け取りジールさんと私はシバパッカの街を出る事になった。

 街の入口で5リルを返してもらい、馬車の中から遠くなる街の外壁を見届ける。乗り合い馬車には私とジールさんに後数人乗っている。道に轍がついているせいか余りガタガタしない。

「バキアにはどの位で着く予定ですか」

「なにもなく進めば3日位か」

「そうだジールさん。バキアに着いたら私、宿ではなく部屋を借りたいんのでどこかいい物件があったら教えてください」

「俺に聞くなよ。そう言うのは・・・ってバキアに定住するのか?」

「まだはっきりと決めてはいませんが折角知り合いになったジールさんも住んでるとこだし、宿に泊まり続けるよりも経済的かと思いまして」

「なら、俺の家に泊まればいい。部屋はあるし人もいる」

 爽やかにおいしい提案をしていただきましたが、タダより怖いモノはない。私の視線に気づいたジールさんがそのまま爽やかに言葉を繋げる。

「うちの料理人のご飯も美味しいんだ」

 私は口角が自然と上がっていくのがわかった。この人本当にいい人なのかもしれない。

「では、料理を食べてから決めてもいいですか?」

「もちろん。そうしてくれて構わない」

 その後、ジールさんの家の料理人の話をこれでもかと聞かされることになる。その話を右耳から左耳へと流しながら、この先の街の景色に思いを寄せた。

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