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魔力

 冒険者ギルドにジールが入って行くと中にいた冒険者達がざわめいた。そのざわめきがジールによるものだと気がついた受付が声を掛ける。

「ジールさんマスターなら上に居ますよ」

「おう、ありがとな」

 案内される事なくジールはその部屋へと向かった。

「じゃまするぞー」

「もうしてるだろうが」

 掛け声と共にドアを開けて入って来たジールに対して中にいたカヤックがあきれ顔で出迎えた。

 長椅子に座ったジールの向かいにカヤックが座る。

「また街の入口で一悶着やらかしたと役人から連絡がはいってるぞ」

「騒ぎを起こした気は無い。役人の頭が固いのが問題なんだよ。足りない分の金なら後で持ってくるって言ってんのに」

「役人の仕事に文句を言うなよ。でも、ここに来られたって事は」

「ああっ入口で護衛の依頼を受けて、前金貰って街に入った」

「お前な」

 小言が続きそうなカヤックにジールは気になっていたこと口にした。

「その護衛主なんだが、マナっていうお嬢さんでひとりでこのシバパッカに来たらしい。まあ、ひとりで歩くことはそう変な事じゃない。でもそれは街の中での話だ。この周辺でここから近い街や村でも一日はかかる。そんな外から一人でそれも何の装備もせず来たって事がそもそもどうなんだって話」

「腕の立つお嬢さんなのかもしれない」

「まあ、それならそれでいい。それとマナが魔道具屋に寄りたいと言ったんで案内したら空間魔法付きのカバンを買おうとしてた」

「腕の立つお嬢さんで尚且つお金持ちなのかもしれない?」

「・・・まあ、それならそれでいいけどな。いや、よくはないだろう」

「なにがよくないんだ?」

「マナは街に入る為の5リルや俺への護衛の前金。宿代も全てポケットからコインを出してる。不用心かつおかしい」

「ポケットに空間魔法がついてるんじゃないか」

「ならカバンなど必要ないだろ」

「それは、個人の自由」

 グッとジールは言葉を詰まらせた。

「そんなに心配ならさっさとその子の元に戻ればいい。護衛なんだから」

 カヤックの言葉を聞くや否やジールは席を立ち、ドアへと向かう。

「おーい! 俺の頼んだもんは?」

「あっそうだった」

 ジールは懐から取り出した小袋をカヤックに投げた。

「ありがとな」

「大事に食えよ」

 そう言い残してジールは部屋を出て行った。

 カヤックは小袋の紐を緩め、鼻を近づけると息を思い切り吸い込みその顔を破顔させた。

 

 テーブルの上には7枚のコイン。

「これって1回出したら消えないのかな」

 ほらっよく昔話とかでキツネやタヌキが葉っぱとか石とか、泥ダンゴをお金に変えて、あとでそれが元に戻る的な事。元がわからないから何かに戻る事はないとは思うけど、後々コインが消えてしまうと問題になる。

「やってみますか」

 今は使わない7枚のコインを前にそれらが消えるイメージをする。

「・・・なくなった」

 テーブルの上にあったはずのコインは全て消えていた。

「これってどういう時に使えばいいの? まあ、消すことが出来るって事がわかったからいいか」

 深く考えてもどうしようもないのでスルーした。

 気がつけば日が傾き部屋の中が薄暗くなってきた。見回した部屋の中にランプを見つけて手に取る。

「中に綺麗な石が入ってるけど、スイッチらしきものがない・・・という事はあれかな」

 その『あれ』が私にあるかわからないけど試しにやってみる事にした。

 ランプに手をかざす。

「おっ、点いた」

 地球で生活していた時と同じくらいの明るさが部屋を照らした。

「魔力持ってたね」

 まあ、千里眼やお金も出せるしこれで魔力がないとしたら正直おかしいな。

 そんなことを考えていたらドアがノックされた。

「食事の用意が出来たのでよろしかったらどうぞ」

 さっきの受付の時の女性の声がした。

 私がドアを開けると女性は声を掛けて回っているらしくその後ろ姿が廊下にあった。女性はドアが開いたことに気づき振り返り私を見ると戻ってきた。

「ジールさんのお連れの方。ジールさんを待・・・」

 急に言葉が切れて女性は瞼を瞬かせた。

「・・・さすがジールさんの知り合い」

 何のことかわからず私は部屋を振り返る。これと言って変わっったことはないような?

「ああっごめんなさいね。あんまりにも部屋が明るいから驚いちゃって」

 あれっ? これが普通ではないのか。

「魔力が濃い人だとこうなるのね」

 女性になぜかしみじみと呟かれてしまった。しかも魔力が強いとか多いとかならなんとなく理解できるけど、濃度の事を言われるとは思わなかった。

 えっと、魔力が濃いって良いことなんだよね。心なしか女性が私と距離をとっているような気がする。えっ、ダメなの? 

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