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護衛を頼む

『年金』

『健康保険』

『市・県民税』

『家賃』

『光熱費』

『交通費』

 その支払いだけで39歳の寿命を全うしました。本当に疲れました。漸くそんな事から解放され魂となった私はただただ眠りにつくだけだと思っていたのです。しかしそう甘くはなかったようで・・・。


 広い草原のど真ん中で私はひとり立っていた。私の名前はまな。漢字だと愛と菜でまな。ついさっきあるお方にこの場所に放置されました。そのあるお方とは運命の○様。そのお方の言う事には私あと一回人として生きなければ魂生活は送れないそうです。ですが私は拒みました。もうお金に追われるような暮らしはしたくないと。

「でも、お金に困らない暮らしが出来るのなら考えてみてもいいし、出来れば異世界転移で」

 とても上からの態度ですが、そこは譲れない所でした。

 あるお方は少し考えこう仰った。

(ノルマ達成には仕方ないでしょう)

「その立場でもそういうのあるんですね」

(貴女にはお金を生み出せる力を)

「あっ、あと容姿を変えて年齢は25くらいの健康な体と視力も良く」

(そんなに・・・)

「私の生前の人生ご存知ですよね?」

 命を絶つことを考えた事は何回かある。それを繋ぎとめたのはお金をやりくりして読んだマンガや小説。その楽しさが私に生きる選択をさせてくれた。

(いいでしょう。魂最後の人としての生を今度も全うしてください)

「それはそこで生きたいと思える何かがあれば可能ではないかと」

(約束はできないと)

「そこはフリーダムで」

 運命の○様は何も言わなかったが、仕方がないなという雰囲気は感じ取れた。

 で、その結果私は今、ここにいる訳です。

 草原を見渡し、ため息。

「ここでお金を生み出せても意味がなくない? せめて街とか」

 そう思った瞬間私の目には街が見えてた。

「これって千里眼・・・いや、これって視力良くの問題じゃないよね? まあありがたいけど」

 視界には街までの距離と時間が表示されている。便利なのか・・・。

「3キロか、歩けないこともない」

 徒歩移動は一向にかまわないが、怖い生き物が出てこない保証はない。回避スキルも付けてもらうんだった。

「とりあえず日があるうちに歩きましょう」

 ザ・異世界のちょっと良いとこの娘さん的な感じの服装をした私。これってちょっと散歩してますけどで通じるのかな。

 体感30分くらい何かに遭遇する事もなく歩いて街の入口らしいとこに到着した。それなりの大きさの街なのか中に入る為に身分証を見せる必要があるぽい。

 さてどうしましょう。私の旅人の服装はしていない。そっちで話を持っていけば怪しまれるだろうな。ていうか言葉大丈夫か。まあなるようにしかならないと私は審査の列に並んでみる事にした。

 私の番になりカウンターの役人ぽい人の前に立つ。

「えっと、お嬢さんは家に帰るのかな。街の人専用の出入口は別だけど」

 あっ言葉わかる。

「街の人間ではありません。身分証もないのですが」

「そう。身分証は仮で作れるけど、街に入るのにお金がちょっと必要になるよ」

 こっちの話も通じた。良かった。

「5リルだよ。街から出る時お金は戻るからね」

 では早速運命の○様から頂いた能力を使うとしましょう。私はポケットからお金を出す仕草をしながら念じる。5リルをこの手に。

「はい」

 一枚のコインを私はカウンターに置いた。心臓がドキドキしている。

「あー、これは」

 えっ! ダメだったの?

「珍しい。つい最近出始めた新しい5リルコインだ。返す時は必ずしも新しいコインではないけどいい?」

 私は秒速で頷いた。心臓に悪い。

 仮身分証を受け取り、その場を離れようとした私の元にある声が届いた。

「だーかーらー2リル負けてくれって頼んでるの。あとで待ってくるから」

「それは出来ませんって」

「ケチ」

 ここでもケチって言うんだ。ザッ冒険して来ましたと思われる格好をした男性が自分の荷物を漁っている。多分どこか無いかなと思って探しているのだろう。

「ジールさん。毎度毎度学習してくださいよ」

「俺は必要最低限の金しか持たない主義なの」

 どうやら常習者らしい。じっと見ていた訳ではないがその男性と目が合ってしまった。

「そこのお嬢さん。護衛は必要ないか」

 私は役人の方を見た。

「この方こう見えてAランクの冒険者ですし、人はいいですよ」

「どう見えてるんだよ」

 まあ、確かに知らない場所でのひとり歩きは危ないかもしれない。

「では、お願いできますか」

「交渉成立。で、先に2リル前金んで貰っていいかな」

「いいですよ」

 2リル出てこい。ポケットから取り出すふりをしてコインを彼に渡した。

「ありがとな。ほい、これで5リルだ。これで中には入れる」

「本当にしょうがないですね。ちゃんと護衛の仕事してくださいよ」

「当然」

 役人の言葉にジールさんは私に向かってウインクした。なんか普通にかっこよくてイラッとした。

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