表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/53

スライム、消える

 その日はなぜか、マルが会社についてこなかった。いつもなら勝手に水筒に入ってくるのに、今日は分裂せずにテレビを見ていてついてくる気配がなかったの。


「それじゃ、いってきまーす。」


 そういう日もあるよね。マルだって一人になりたいときくらいある。だから気に止めることなく仕事に向かった。


 マルを会社につれていってから様々な変化があった。まず、ガミガミ上司の嫌みがなくなったこと。


 これは不思議なことに、上司が私を怒りにきた日は必ず派手に転ぶようになったのが原因だ。毎回派手に転ぶから上司は私のせいだと、変に近づかなくなったのだ。


 そのお陰で今まで無駄に過ぎていた時間を有意義に過ごすことができた。仕事もはかどって、最近には定時で帰られるようにもなったし、本当に生活は一変した。


 今日はマルがいないから、早く帰ろう。

 そう思い今までの残業分早く帰らせてもらえるよう進言すると、人事部から許可が降りて今日は13時に上がることができた。


 ふふーん! これで帰ったらマルと思いっきり遊べるぞ~。


 なんて意気揚々と帰宅したときだった。


「ただいまー! ……あれ?」


 部屋には、マルがいなかった。

 どこを探してもいない。いる気配がない。キャットタワーも、お風呂も、トイレにも。どこにもいない。


「マル……?」


 そして気がついた。部屋の窓が空いていることを。


 嘘でしょ、閉め忘れたの……まさか、外に……?


 私は慌てて外に出る。アパートの裏に回り、自分の部屋を確認する。


 部屋の近くの木が、不自然に枝がおれていた。

 きっとマルがあそこから降りたんだ!!


 そう思うと途端にパニックになる。あわてふためきながら、私は辺りを探しまくった。


 遊べないよといった公園、コロッケを買ったお肉屋さん。少年と目があって大変だった雑貨屋さんに、いつもお世話になってる八百屋さん。


 カラオケボックスの近くにもいったが、マルの姿は見つけられない。


 うそ、うそ……どこなの、マル!!


 マルといったことのある場所は片っ端から探したけど、マルの影すら見つけられなかった。


 一旦家に帰ってみたけど、戻ってきた気配もない。


 どうしよう……マルがいなくなっちゃった。


「マル……」


 途端に不安になっていく。車にひかれたりとか、誰かにさらわれたりしてたらどうしよう。


 不安になりすぎて泣きそうになる。


 もし誰かに見つかったら、きっと見世物にされちゃう。SNSで面白おかしく投稿される可能性も……


 ……ん? 見つかったら……?


 そうだ! もし誰かに見つかってたら!

 ネットに情報が乗ってるかもしれない!


 藁をもつかむ思いでSNSを開く。


 スライム、で検索をかけると……


『なんかコスプレイヤーの撮影? に遭遇www スライム追いかけてるみたいだけど、スライムがチョーリアル』


 そんな投稿がバズってた。写真には赤い鎧をきた青年の背中が写っている。その青年の視線の先に……


 いた、マルだ!!


 目立たないように色を変えてるのかよーく拡大しないと見えない。写真が荒いから余計に分かりにくいのかもしれない。


 私だからわかったのかもしれない。SNSのリプライ欄にも、スライムがわからないってコメントが多い。


 この写真の場所……ここからだと歩いて30分くらいの場所だ。通勤の電車で一瞬見えた光景によくにてる。


 マルの手がかりをつかんだ私は、また部屋を飛び出す。


 走って走って走りまくって


 酸欠で苦しくなっても走って


 ようやく写真の場所にたどり着いた。


 たぶんあの写真のコスプレイヤー、マルを追いかけてるようにみえた。何で追いかけてるのかはわからないけど、ただのコスプレイヤーには見えない。


 あんな目立つやつなんだ、マルよりあいつを探した方が早い!


 そうして近くを走り回っていたときだった


 いた!!


 公園に、写真と同じ格好をした青年だ。ちょうど公園の端の方で見えにくい場所に、その青年は……剣らしきものを構えていた。


 その視線の先には……


「マル!!」


 公園のはしに追いやられていたのは、マルだった。マルは私の存在に気づくと、ピョンピョン跳ねていた。たぶん、近づくなっていってるんだと思う。


 でも、そんなの言ってられない。

 だって向こうは、危ない武器を持ってるんだよ!


「だめだ君、近づいたら危ない!」


 青年が振り返ると、わたしとマルを交互に見て制止の声をかける。


 いや危ないのはあんたの方だからね!


「うるさい! 何やってるのよ!!」


 私のかわいいマルに刃を向ける青年を睨み付けると、マルと青年の間に立ちはだかる。


 ひぃ、勢いよく出てきたのはいいけど、青年の持ってる剣……これ、本物……?


 こんな大きな刃は銃刀法違反になるんじゃないの?


 ってことは、こいつは犯罪者ってこと。

 そんな危ないやつの前に何も持たずに身一つで出てきちゃった。


 不用心というか、無計画にほどにある。


 けど仕方ない。


 マルが危ないんだもん。

 飼い主として、ほっておけないでしょ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ