地底防衛都市スクド(58)
重い地鳴り、激しい振動──。
防御魔法陣が破れ、風景が歪む。
舞い上がる土煙が光を飲み込んでいく。
熱波が襲ってくると思い、本能的に身構えた。
だが、予想した熱さを感じない!
というより──。
凍えるような冷気に、みんな身を縮め肩を抱いている。
一歩踏み出すと、足が何かにぶつかり体がよろけた。
「寒いぞ! マジア! どういうことだ? これは!?」
俺の言葉に土煙の中、マジアが杖で地面を照らし出した。
「エイジさん! 兵士たちが倒れてます!!!」とルーチェの声がした。
「焼かれてないようだな……。特に傷もないし……、何があったんだ?」
「酸欠で窒息したんじゃないでしょうか?」とルーチェが身をかがめ兵士の顔をのぞき込んだ。
マジアも座って、同じ兵士の顔を見ている。
その兵士の顔は悪魔でも見たかのように目を剥き、腕を胸の前にかざして硬直している。
「息をしてません……。やはり酸欠か毒ガスでしょうね」とルーチェが低い声でつぶやいた。
「毒ガスって! エイジ、早く逃げないとまずいのだ!!!」
リコが慌てて手で口を覆い、俺の服を何度も引っぱる。
「息苦しくないし……、本当に毒ガスなのかな?」
「エイジ! いずれにしても長居は無用だし!」
俺たちがそんな話をしている間も、地鳴りが続いている。
「地震で洞窟が崩れるかもしれない! いずれにしてもここから脱出すべきだ!」と土煙の中、ブラスカの声がした。
「そのとおりだし! 早くここから逃げるのだ!」
リコが急かすようにオレッチオが担ぐ荷袋を叩いた。
オレッチオはガルルンを抱いて、立ち込める土煙の中、早足で歩き始めた。
その時、どこからか澄み渡った声が広がっていき──、
土煙が四方八方に散り、視界が晴れていった。
マジアが杖をかざすと、広間の全貌が見えてきた。
地竜がいた辺りには大穴が開き、地鳴りがそこから湧き上がってくる。
穴の周りには大勢の兵士が倒れ、誰一人動く者がいない。
見上げると、白いローブの男が二人を抱え、飛び去っていく。
「あれはお兄様なのだ!!!」とリコが叫んだ。
「クレティーノさんは無事だったんだ!」とマジアは嬉しそうな顔で、飛び去っていく彼を見送った。
「クレティーノが抱えていたのは、ソノラとフィアマのようだな。私たちもあいつの後を追おう!」
ブラスカがトーチを掲げ走りだしたので、みんながそれに続いた。
俺もリコの手を握り、彼女を追った。